【木工屋】世界最小のメーカー
工房黒坂製作所は2016年に起業した小さな木工所です。
はたらいているのは代表の私と週に1回来てくれるアルバイトさんの二人です。
とても小さい所帯なので基本的に何から何まで一人でこなしています。
ですが、私どもは「世界でもっとも小さなメーカー」です。
それは以下の理由です。
●身の回りの「めんどう」「わずらわしい」が開発のスタート
「わずらわしいことを解決したい」「もっと便利に早く簡単にものごとをこなしたい」ということがあたらしいものを作る動機です。
例えば、洗濯物を干すのに時間がかかり、めんどくさい、いちいちかがむので腰が疲れるといったことがあるとします。
洗濯物を入れたバスケットを床に置いたらどうしてもそうなります。
ではバスケットを胸の高さまで持ち上げて吊るしたらどうでしょうか。
腰は一切曲げることなく、手を上下に動かすだけで洗濯物を干すことができます。
そうすると、それまでの半分以下の労力と時間で洗濯物を干し終えることができるようになります。
得られる効果は、単に体が楽になるだけでなく、本来10分かかっていた作業が5分で終わることで、5分の時間を作り出すことができます。
このように、日々の仕事を楽にこなすことで余剰の時間を作り出し、それまでよりも5分豊かな時間を増やすことができるのです。
これが工房黒坂製作所の製品開発の発想です。
※これを製品にしたものがバスケットハンガーです
●納得がいくまで試作/評価を繰り返す開発
幸いにして木工という手段は形のあるものを作るにはかなり手っ取り早いのがありがたいところです。
まずはイメージに沿っていきなりサンプルを作って自分で試します。
何か形になったものがあれば、次はどこをどう修正するか考えるのは容易です。
最初のユーザーは私自身、自分が使って満足できるまで気に入らないところは徹底的に直します。
こうして試作を重ねた上で使用や設計が決まったら、ようやく製品の製作です。
●最初のロットは試作の延長
さて、一点だけものを作るのと、何十点もまとめて作るのはいろいろ違います。
職人さんの一品仕事と工場の大量生産の違いはなんでしょうか?
工場は多くの人によいものを安価で安定して供給するのが仕事です。
そのため工程の手順や使用する工具・治具を適切に準備し、失敗の起きにくい加工方法を考えてまとまった数の材料を投入する必要があります。
その手順や治具(加工や組み立てに使う補助器具)を検討し、数を作るための道筋を立てるのが初回生産での重要な仕事になります。
つまり、「何を作るのか」を考えるのが開発ならば、「どうやって作るのか」を考えるのが初回生産の目的です。
一点だけならうまくできても数を作って初めてわかる難題にでくわすこともあり、そういうことを初回の生産時に十分に検討することで、安価で質のそろったものを努力や根性抜きで作り出すことができるようになるのです。
●量産することで安定した品質と低コストを実現
量産といっても実際に手を動かすのは私一人なので一度にできる数は10‐20点ほどです。
それでも、1点だけ作るのと比べるとコストはまるで異なります。
工場の時間は2種類に分けられると言います。
まず①直接生産に貢献している時間、これは実際に材料を加工したり組み立てたりしている時間のことです。
次に②間接的に生産に貢献している時間、これは次の作業に移るために機械のセッティングを変えたり資材や工具を準備するのにかかる時間です。
1点だけ作る場合①と②の時間は同じくらい、もしかすると②の時間の方が長いこともありますが、まとまった数を作る場合①の時間が数に比例して増えますが1点あたりの②の時間は数が多いほど短くなります。
このことから、1点作るのも5点作るのも同じ、どうせ作るなら20点作るのも30点作るのも大して変わらないのです。
また同じ作業を反復して行うことで、揃った品質のものが安定して製作できるのです。
●なるべく在庫を用意してすぐにお届けできること
このように、製品を作るときはある程度まとまった数で作りますので、そういうものは在庫を持つことができます。
在庫があればお客様のオーダーが来ればすぐに出荷することができます。
工房黒坂製作所は小さいながらも倉庫を持っており、よく動く製品についてはなるべく在庫を絶やさないように努めております。
ただし大型の家具類となると倉庫のスペースに限りがあり、受注後製作となってしまうこともあります。
それでもなるべく早くお出しできるよう製品によっては部品で在庫を持つようにし、短納期に努めるようがんばっています。
以上が、世界最小のメーカーを標榜している理由です。