【木工屋】全てはここから始まった④ 〜掃除機用スタンド〜
製品がちゃんと供給できるようになり、製品の完成度を上げて仕様もしっかり固まると、今度は「売る努力」ということをすることになります。
これまでの販売チャンネルはヤフーオークションとメルカリの2種類でしたが、いよいよECサイト最大手のAmazonに参戦することになります。
今まではあくまで個人で作った日曜大工の木工品を個人間で売買するというものでしたが、Amazonはちがいます。
Amazonに参戦
ヤミ商売を始めて3か月ほど経った2016年の8月には月商20万円を超えて、これで確定申告しなければならないな困ったなと喜んでいたのですが、掃除機スタンドはあくまでダイソン製品の売れ行きに従属して売れる製品なので、売れる期間は限りがあると考えなければなりません。
なので、売れるうちに売り上げを極大化させなければならないと思い、より大きな販売機会を求めるようになります。
日本国内で最大のECサイトはなんといってもAmazonです。
私自身も買い物でよく利用していて、店頭で見かけないものもAmazonでは豊富にそろっていて選択の幅があることがなによりも魅力でした。
日本国内で売られているものはほぼここに揃っているともいえ、ニッチな商品であっても検索機能で簡単に見つけ出すことができる大変便利なものです。
さて私は昔からAmazonの商品はAmazon自身が仕入れて在庫を持ち販売しているものだと思っておりましたが、送られてくる荷物は一般の企業であることも多く、これは何だろうと思っていました。
調べてみると、Amazonにはマーケットプレイスというサービスがあって販売者に出品モールを提供し販売者自身が発送するということをやっているのを知りました。
それで詳しく調べてみると、個人で出品しているケースもあり、ハンドメイド製品を販売している場合も少ないながら存在するということが分かりました。
それでもっと詳しく調べてみると、さすがにAmazonは集客力がけた違いに違うということらしく、次の目標としてAmazonで売り上げを立てるということを決めました。
工房黒坂製作所の誕生
さて、Amazonのサイトを見てみると、販売業者として登録するのに特に必要な資格のようなものはなく、思ったよりも簡単にできそうです。
但し、商品登録を行う際にJANコードが必要(今では不要)ということで、JANコードの取得が必要となりました。
JANコードとは商品外装に印刷されているバーコードの番号のことです。
調べてみると商工会議所の外郭団体でこれの発行を行っているということで、さっそく申し込みをします。
すると、屋号が必要だということになりました。
屋号とは早い話が会社名やブランド名といったもので、業者としての名前です。
ここで私は大昔から温めていた「工房黒坂製作所」という名前を使うことに決めました。
もともと若いころから起業を志していたわけではないのですが、いろいろモノづくりを個人的にやってきていたことから、モノを作っているときの私は「工房黒坂製作所」を標榜しては悦に入っていたものです。
この名前を使ったのは高校を卒業するときに部活の卒業記念品として音楽室に木製の指揮者用譜面台を寄贈しようということになり、作った譜面台に寄贈者として出資者たる卒業メンバーの名前を入れ、その一段下に「製作 工房黒坂佳之製作所KK」と金文字で書き入れたのが最初でした。
その後パソコンを買い替えるたびにユーザー名として工房黒坂製作所の名前を使っていたのですが、ビジネスの舞台で名乗るのはこれが初めてです。
JANコードを申請して費用を支払い、1か月ほどすると登録完了の知らせと付与されたコードの一覧表が届きました。
書類には「工房黒坂製作所」と記載されていたのが大変うれしかったことを覚えています。
まだサラリーマンをやっていてヤミ商売の時代でした。
アメリカ式の会社はいろいろ違う
JANコードが届くと商品登録ができるようになります。
必要な情報はヤフーオークションとメルカリに記載していた商品情報をそのまま使うだけなので簡単なのですが、そもそもAmazonは管理画面がずいぶん複雑というか見慣れないもので当初は理解を進めるのが簡単ではなかったように思います。
Amazonの販売管理はセラーセントラルという専用のページで行うのですが、構造がかなり複雑な上に見慣れないカタカナ用語が多く、日本語で書いてあるのに何を言っているのかまるで分らないというようなものでした。
例えば「ケース」という言葉で連想するのは何かの入れ物ということですが、Amazonではトラブルのことを指します。
何か困ったことがあってアマゾンに問い合わせを行った記録のことは「ケース履歴」というのですが、まるで異次元の言葉です。
売上金の送金は「トランザクション」といい、販売者の健全性評価は「アカウントヘルス」というのですが、一事が万事まずよそでは聞かないような表現が当たり前のように出てくるので、まずはその雰囲気に慣れることからの出発となります。
今ではだいぶ改善されましたが、当時のセラーセントラルはいろいろ未整備な部分も多く、難解なものだったことを覚えています。
次は商品ページ掲載から売上処理、発送処理、代金の回収までの流れを押さえておく必要がありますが、これは基本的にヤフーオークションとそれほど変わるものではありません。
但し管理画面が完全に素人向けではなく、専門の業者向けの雰囲気がプンプンするもので、いかにも業務用という顔をしているのが新鮮で、ここに参入するのかと感慨深く眺めては、商品ページを作成して登録、いよいよAmazonでの販売が始まります。
チャリンチャリンと音が鳴る
Amazonのセラーセントラルはスマートフォン用のアプリも用意されていて、こちらをアクティブにしておけば売れた時にプッシュ通知がやって来ます。
その時に独特の「チャリン」というチャイムが鳴るのですが、最初にこれが鳴った時はびっくりしました。
電話機を取って画面を見ると、Amazonで売れたことが表示されています。
よし売れた!と喜んでウキウキしていると、またそのうちチャリンという音がします。
Amazonは集客がすばらしいとは聞いていましたが、このように視覚聴覚的に知らせがやってくると、なるほどという実感がわきます。
この頃には家内も中国から引き揚げてきて二人でアパート暮らしをしていたのですが、2LDKのうち1部屋を倉庫にして在庫を常時20台ほど積んでいました。
ところがこのペースで売れるとあっという間に在庫払底で販売機会を逸失してしまいます。
これはいかん、ボヤボヤしている場合ではないなというわけで急遽増産体制を取ることにし、いよいよ週末は実家の庭で終日粉だらけになり、平日会社からヘトヘトになって帰ってきたらアパートの部屋でオイルフィニッシュで油だらけになることになります。
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