段階的に解像度を高める、デザインリサーチの試行
モビリティサービスの検討は、とても複雑でおもしろい
街中をビュンビュン走っている車。最近では電動キックボードやさまざまな種類の電動自転車など、街なかで見る機会も増えてきましたよね。目的地への移動をサポートする道具とも考えられるし、よりその人らしい移動の仕方を叶えるものとも言えます。
こんにちは、川勝(@Kawakatzu)です。
普段はトヨタコネクティッドのデザインリサーチグループに所属しています。チームメンバーはリサーチや主に体験デザインを担当し、モビリティや移動を対象とした新規サービス検討のリサーチから、実装に向けたユーザビリティテストまで広範囲に関わっています。
この領域、なんてったって難しくて面白い。特に面白いと感じるところは「フィジカルとデジタル」のかけあわせで検討を進める必要があること。
例えばナビなどの車載器はユーザーが触る面はデジタルですが、運転中や前後という利用状況を考慮して、プロダクトとしての安全性や法規制を踏まえながらハードの触り心地、物理ボタン等々、フィジカルな部分まで検討領域が及びます。
さらに最近では冒頭に書いたような新しいモビリティも出てきている中で、ユーザーを取り巻く周辺環境も変化。「どんな体験を提供する?」という選択肢は、デジタル上だけでなく自ずと対象が大きく広がります。
今回は、わたしたちが普段行っている新規サービス検討で、試行をスタートしている「段階的なデザインリサーチ」について、ちょっと考えをまとめてみたいと思います。
段階的に解像度を高める取り組みとしてのプロトタイプ
たとえばまだ世の中に存在しない、新しい移動体験を考えるとしましょう。
取っ掛かりがほしいとして、そのヒントになり得るインサイトがユーザーから得られそうでしょうか? 個人的には「否」だと思っています。
この段階ではユーザーに答えを求めることは難しく、さまざまな情報から提供したいものを提供する側が考え、体験として提示することが求められます。
まだ体験をしたことがないサービスを作り上げていく際に、デザインリサーチャーに求められるのは、関係者が同じものを見ながら目線を合わせること。完璧な完成品を作るというよりも、あれやこれや言いながら、こうすると良くなるのではと対話を生み、共通認識を作っていくためのプロトタイプを行うことが求められます。
個々人の想像の中で存在していたものが、目に見える形でさわれたり、体験できたりできるようになると、一気に現実感を持つことができ「そこからどうしたい」「自分だとこう使う」など対話が生まれます。
デザインリサーチのプロセス
その上で、サービス開発プロセスの中で、ユーザー視点に立脚し、どのような価値や体験を提供していくか検討を進めます。仮説の立案と検証を繰り返しながら、チームの認識と開発物の精度の両面を高めていきます。
事業ロードマップをもとに段階的に提供範囲を広げる、現状提供ができていないユーザーにまずアプローチするなど、サービスを最も届けたいのは誰なのか条件を整理していきます。
その上でそのユーザーはどのような行動・思考を持っているのかフローを可視化。モビリティサービスにはヒト・モノ・コト、複数の接点が存在し、関係性が複雑です。そのため複数の関係者を交えながら、段階的に整理を進める必要があります。
これらの前提を整理した上で、ありたい姿を描いていきます。どのような価値を提供したいか、そしてどのような体験として提供をしたいか、これらを検討するときにプロトタイプが登場します。
完成品よりも作り直しやすいプロトタイプ
プロトタイプ作成時は「作り直しやすさ」がポイントになります。
一発で完成品を作り出すことが目的ではありません。
机上で描いているときはそれぞれの想像で描いた内容が、目に見える・体験できる形に具体化されることでイメージが共通化することができます。
完成品よりも作成途中の未完成の方が「こうしてみたら?」という意見を出すハードルが下がります。自分が当事者として意見が出ししやすくなり、チームで一体感を持って議論を活性化することができます。
そして、意見をもとにその場で作り替えができる柔軟さを持たせることで、合意形成をスピードアップすることができます。
「想像したものを目に見える、体験できる形にすること」がデザインだと考えています。どんどん作って、「あれやこれや」と対話を重ね、勇気を持って壊してまた考える。プロトタイピングを通して、目線を合わせながら段階的に登っていくことがリサーチャーに求められる姿勢ではと考えています。
終わりに
まだまだチャレンジ途中で、具体的なことがかけないのが歯がゆいですが、プロトタイピングを通じた解像度を高めていく取組みは、今後も継続的に行っていきたいと思います。
また、体験デザインの観点だと上記になりますが、「社会インフラに関わる事業を検討する際の理想と現実のバランス」や「あらゆるターゲットに価値を届けるための“ユーザー”の検討の仕方」など、考える必要があることは山程。それはおいおい書いていきたいと思います。
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昨日23日目は、Research Conferenceの頼れるリーダー熊谷さんの「【RESEARCH Conference 2023】体験設計の裏側」でした。そうかこれも今年の前半だったか…と記憶が呼び覚まされるボリューミィな内容でした。いつも本当にありがとうございます!
明日25日目の 最終回を受けてくださったKenji Kato(@kenjikatooo)です。記事とても楽しみです👏
そして Special thanks to @tomokokawada
おかげで最後まで記事を書ききれました🙇🙇🙇 実務的にも精神的にも、いつも頼りにさせてもらっています & いつも楽しくお仕事ができています。これからもよろしくお願いいたします!