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“食欲×芸術=飯テロエンタメ”の秋

SHElikes 6期ライターコミュニティ
お題note企画(9月)
テーマ:◯◯の秋

しょっぱなから本題とあんまり関係ないで話で申し訳ないのですが、短大時代、「J-POPの歌詞から紐解く日本の四季」というテーマで卒論を書きました。

春だったら、出会いや別れ、そこに降り注ぐ桜の花。
夏だったら、太陽に灼かれてきらめく海。
冬だったら、ちらちらとゆっくり静かに積もる雪。

でも。
秋を想起させるような歌って、本当に少ないんですよね。卒業研究するまでもなく、すぐに気づくことではあると思うんですけど。

ただ、秋うたが少ないことは確かに事実かもしれませんが、「存在感のない季節」というわけでもなくて。

むしろ、今回のテーマである「◯◯の秋」って、本当にいっぱいあるなあと思います。
逆に、「◯◯の春」「◯◯の夏」「◯◯の冬」っていう言い方、あんまりしなくないですか?

実りの秋。
食欲の秋。
芸術の秋。
読書の秋。
スポーツの秋。

この辺りが有名どころだと思います。
どれにしようかなあ、と考え始めたところで、「でも普通に書いてもなんかつまんないな」と思って。

そもそもひとつに選べない。
じゃあ組み合わせちゃえばいっか。

ということで今回は、「食欲の秋」と「芸術の秋」を組み合わせたハイブリッドバージョン「飯テロエンタメの秋」というテーマで書いてみようと思います。(なんなら「読書の秋」も入ってる。色々欲張った)


飯テロエンタメの秋①:小説


というわけで早速「読書の秋」入り込んできました。

子どもの頃から本を読むことが好きで、取り分け文芸作品(小説)が好きでした。
ただ社会人になってからは読書の時間がめっきり減ってしまい、ここ最近になってようやく読書習慣を復活させようとしているところ。

そのため、今回紹介する本はいずれもかなり前に読んだ本。
でもどちらも本当にステキ&描写が美味しそうすぎるんです。


『九つの、物語』/橋本 紡

大学生のゆきなの前に、長く会っていなかった兄がいきなり現れた。女性と料理と本を愛し、奔放に振舞う兄に惑わされつつ、ゆきなは日常として受け入れていく。いつまでもいつまでも幸せな日々が続くと思えたが…。ゆきなはやがて、兄が長く不在だった理由を思い出す。人生は痛みと喪失に満ちていた。生きるとは、なんと愚かで、なんと尊いのか。そのことを丁寧に描いた、やさしく強い物語。
出典元:amazon.co.jp

短編集みたいなタイトルですが、あくまで1つの長編物語です。
「九つ」は章の数。主人公のお兄ちゃんは大の文学好き&料理好き。そんなお兄ちゃんが愛する本と、手作りの絶品料理が各章で1つずつ、計9つ登場します。

この、お兄ちゃんが作る料理がとにかく美味しそうで……!!

妹のゆきなとの会話の中に散りばめられている、お兄ちゃんお手製料理の作り方のポイントやコツの数々。物語の展開の中で、あくまで自然にレシピを解説している感じがたまらなく絶妙…!

この作品に限らずですが、著者の橋本さんが書く料理(食事)の描写が私は大好きなんです。
文体があまりにもやさしくてあたたかいものだから、当初、てっきり橋本さんは女性なんだとばかり思っていました。良い意味で男性的じゃないというか。

難しい言葉は使わずに、あくまでシンプルな表現で、目の前の風景をひとつひとつ丁寧に切り取っていく感じがとっても和やか。ほっとする。

『九つの、物語』は、そんな料理上手で自由人なお兄ちゃんと妹のほのぼのストーリー……というわけでもなくて

何があっても、何かを失っても、命ある限り人は生きていかなければいけない。生きることのしんどさも、喜びも、平等に照らしていく。
そんなお話です。

ちなみに巻末には、作中で登場した「禎文式トマトスパゲッティ」のレシピがイラスト付きでがっつり掲載されています。なんて粋なの…!とひとり興奮してしまった私なのでした。


『マカン・マラン - 二十三時の夜食カフェ』/古内 一絵

元エリートサラリーマンにして、今はド派手なドラァグクイーンのシャール。そんな彼女が夜だけ開店するお店がある。そこで提供される料理には、優しさが溶け込んでいて――。
早期退職者候補になった、仕事一筋の40代キャリア女性へは「春のキャセロール」を。
手料理を食べなくなった中学生男子には「金のお米パン」。
仕事に夢を見られない、20代のライターには「世界で一番女王なサラダ」。
そして、病を抱え、倒れてしまったシャールへ、彼女に助けられた人々が素材を持ち込み、想いを煮込めた「大晦日のアドベントスープ」。
じんわりほっくり、心があたたかくなる至極の4作品を召し上がれ!
出典元:BookLive

主人公のシャールさんは超派手派手なドラァグクイーン。初見だとなかなか強烈な設定ですが、登場する料理は一転して、とことんやさしい

生きることにちょっとだけ疲れてしまった人たちが、ふらりと辿り着く場所。
夜更けにひっそりと開店する隠れ家カフェ、マカン・マラン。
私も行ってみたいなぁ…近くにこんなお店があったら素敵だなぁ……と、シリーズを通して何度思ったか分かりません。

そう、こちらの作品、シリーズものです!
「女王さまの夜食カフェ- マカン・マラン ふたたび」「きまぐれな夜食カフェ - マカン・マラン みたび」「さよならの夜食カフェ-マカン・マラン おしまい」と物語は続いていきます。

実は私はまだ「ふたたび」までしか読めていません…(小声)
早く続きを読まなくては…!!

どんなに辛く苦しい状況でも、美味しくてほっとするご飯を食べると、ほんの少し、身体から力が抜ける。冷えていた心も、じんわりとあったかくなる。
「食」は、生きていく上で、確実に根本を支えているもの。欠かせない土台。

シャールさんにとっては、お店に訪れるお客さんひとりひとりが大切なひと。
大切なひとたちへ、真心込めた料理を作るシャールさんを見習って、私も毎晩仕事でくたくたになった夫のためにご飯を作る。

もちろん、シャールさんが作る料理とはほど遠いクオリティのものだけど。
それでも、「今日もおいしいね」とにこにこ笑う夫の顔を見ているだけで、私の心も温かくほぐれる。「おいしい」の笑顔が、私にとっての1日の終わりのご褒美。

ただのノロケみたいな感じになってしまいましたが、『マカン・マラン』シリーズ、素敵な作品なのでぜひご一読を。


飯テロエンタメの秋②:ドラマ


一見すると単なる活字の羅列なのに、実は風景を鮮やかに描写している。
小説のそんなところがたまらないなぁ、ギャップ萌え(?)だなぁ、なんて思っているのですが、とはいえリアルさだけを追求していくと、やっぱり映像には勝てません。

私は小説も好きですが、同じくらいドラマも大好きです。
今回紹介する2作品はどちらもメジャーなものだとは思いますが、やっぱり定番は定番なだけあってサイコーなんですよね。間違いない。安心して観れる。

飯テロプラス、オジサン萌えな要素もある作品です。ではどうぞ。


孤独のグルメ(season1〜9)

輸入雑貨商を営む主人公・井之頭五郎(松重豊)が営業先で見つけた食事処にふらりと立ち寄り、食べたいと思ったものを自由に食す、至福の時間を描いたグルメドキュメンタリードラマ。
出典元:amazon.co.jp

もはや飯テロドラマの代名詞と言ってもいいかもしれません。season9ってホントですか…スゴすぎ…不動の地位を築いている…

「松重さんがただひたすらもぐもぐ食べるだけ」なのに、独特の魅力があるんですよね。
実況中継的な松重さんの淡々とした心の声と、その食べっぷり。
これぞ飯テロの真骨頂。そう、言葉なんて要らない。「食べるだけ」でも伝わるものは十二分に伝わる。

何故多数のシリーズがある作品の中でseason8のアマゾンリンクをチョイスしたかと言うと、私が『孤独のグルメ』の魅力に気づいたのがseason8だったから。

season8がオンエアされていた頃は熱狂的なドラマウォッチャーで、地上波で放送されているテレビドラマはほぼ全部録画して視聴するという生活を送っていました。
その流れで孤独のグルメも録画して、なんとなく観てみたらその世界観にがっつりハマってしまったというわけです。

ちなみに来月10月からは、season10の放送が開始されるようです。
ついに2桁の大台に乗った孤独のグルメシリーズ……このまま突っ走って、いつの日か相棒を越してしまう日もそう遠くないのかもしれません。


きのう何食べた?

筧史朗(西島秀俊)は街の小さな法律事務所で働く雇われ弁護士。史朗の日課は、定時に事務所を出た後に近所の安売りスーパーへ向かうこと。お買い得な食材をすばやく吟味しながら、頭の中で瞬時に夕食の献立を組み立てていく。月の食費を2万5千円以内に抑えるのが史朗にとっての重要課題なのだ。

帰宅した史朗は早速夕食づくりに取りかかり、三品のおかずと炊き込みご飯、味噌汁を手早く仕上げる。そしてちょうど夕食の支度が調った頃、帰宅してくるのが同居する美容師の矢吹賢二(内野聖陽)だ。

二人“シロさん"“ケンジ"と呼び合う恋人同士。二人で食卓を挟みながら取る夕食の時間は、日々の出来事や想いを語り合う大切なひととき。
出典元:amazon.co.jp

シロさんの作るごはんがどれもこれも美味しそうすぎて……
そして全力で「美味しい〜!」を表現するケンジがまたカワイイ…

『何食べ』を観て以来、内野さんの印象がだいぶ変わりました。役者さんって本当にスゴイ……いろんな顔を見せてくれるから、観ている側はもうずっと楽しいです。いつも楽しませてくれてありがとうございます。これぞエンターテイナー!!

シロさんがてきぱきと手際よく料理を作っているシーンも、食卓を挟んでケンジと向かい合って食べるシーンも好きですが、スーパーへ買い出しに行くシーンとか、それから洒落た演出のオープニング映像もとっても好き。

連続ドラマの後は、スペシャルドラマ、劇場版と物語は続いていきます。
去年公開された映画はなかなかタイミングが合わなくて観に行けませんでした……ちょっと心残り。

シロさん&ケンジ以外の登場人物もみんな良いんですよね。『何食べ』に出てくるキャラクターは1人も悪い人がいない。そんなところも好き。

ちなみに私は、磯村勇斗くん演じる、通称「ジルベール」がハチャメチャに好きです。ベストオブ磯村勇斗だと勝手に思っています。


飯テロエンタメの秋③:動画(YouTube)


さっきもちょろっと書きましたが、一時期は気が狂ったようにドラマばかり観ていたのですが、最近はだいぶ落ち着いてきて。
テレビより、圧倒的にスマホの画面を観ていることの方が増えました。

YouTube premiumのファミリープランを契約して以降はますますYouTubeライフが快適になって、その恩恵に預かりまくっています。広告がない、バックグラウンド再生ができる、Youtube Musicも使える…控えめに言って最高。

ここでは、ほぼ映像のみのシンプル動画で食の魅力を伝えているYouTuberさんをご紹介します。


平凡な夫婦さん

おうち居酒屋」というコンセプトで、奥さんが作る料理の数々。
顔出しも声出しもしていません。手元の映像と、簡単な字幕のみなのですが、作っていく過程を的確に分かりやすく映していて、観ていてとっても気持ちがいい…無駄がないって素晴らしい。

時々旦那さんが助太刀する感じも、微笑ましくてほっこり。

それからキッチンがとても清潔で、これもまた観ていて気持ちが良いです。(※私へ。ちゃんと掃除して。)
IHコンロいいなぁ…デメリットあるとも聞くけど、やっぱり掃除のしやすさは格別なんだろうなぁと思います。(ガスコンロの掃除が死ぬほど苦手マン)


はるピコさん

平凡な夫婦さんは、自然体ではありますがかなり綺麗に映されていて。いわゆる「映え」な動画。

対してはるピコさんの動画は、YouTubeの紹介文でもご本人が書かれていますが、決して映えるものではないかもしれません。
でも、そのありのままさがクセになるんです。

はるピコさんも、顔出しなし&声出しなし。加えて字幕もありません。
基本的に、日々のお弁当を作る過程をアップしています。

ネット上に投稿するものだから綺麗に魅せよう、なんていうことは全くなくて。その着飾っていない感じがすごく良い。

でも、「ズボラ」と言い切ってしまうのもまた違うような気がして。
菜箸の先のちょっとした所作に、はるピコさんの可愛らしい人柄みたいなものが滲み出てるんです。(調味料のフタを弾き飛ばす勢いで開けるところとかもいい)

基本性格は大雑把なのかもしれないけれど、でも同時にやさしい人なんだろうなあとも思います。
気づいたら投稿主の人間性に思いを馳せているという、不思議な現象が発生してるんですね。

独特だけど妙に頭に残るBGMも相まって、なんだかはるピコさんのことがすごく愛おしくなっちゃう。
質素な動画ではあるのかもしれないけれど、なんとも言えない魅力がたっぷり溢れているYouTuberさんです。


飯テロエンタメの秋(番外編)


元々はYouTube編でおしまいにする予定だったのですが、「あっ」と思い立って急遽追加。

今年の1月から全12回の期間限定で放送されていた深夜バラエティです。
そのためもうオンエア自体は終了しているのですが、「これぞ飯テロエンタメじゃん」と思ってしまった以上、追加しないわけにはいかなくなりました。

…というのは建前なのかもしれません。


黄金の定食

テイストだけで言うと『孤独のグルメ』と似ています。
シソンヌの長谷川さんと、なにわ男子の大橋くんがただひたすらに定食屋さんのごはんをもぐもぐするだけの番組です。

大橋くんの豪快な食べっぷりと、素直すぎるリアクションがとにかく可愛い。

初共演の芸人さんとあそこまで自然に言葉のキャッチボールを交わして、相槌もめちゃめちゃ上手くて、同時に持ち前の愛嬌もしっかり振りまく大橋くん、バラエティ能力高すぎでは???と私は確信しました。
大橋くん、この先確実にバラエティ番組出演のオファー増えます。(断言)


深夜帯の放送だったので、録画して数日後にチェックするという生活を送っていたのですが、放送終了からしばらく経ったある日、夫に言われました。

「ねえ、黄金の定食の録画ってもう消しちゃったの?」

「レコーダーの容量の関係もあるから消しちゃったよ」と私は返答。

録画した黄金の定食は、基本的に夫と夜ごはんを食べながら観るのが常で、観終わったらそのまま消去していました。
(とっといておきたい気持ちもありましたが、我が家のレコーダーの保存可能容量は悲しいことに馬鹿少ないです)

「作業BGM的な感じでも観たかったのに!」と急にぷんすかし始めた夫は、何とそのままParaviを契約。(Paraviでは現在も引き続き配信中です)

確かに、夫の気持ちはわかる。
しっかり観るのも良し、ゆるく流し見するのも良し。
何より我々の推しが出ているっていうのはデカいよね。

…というわけで、夫婦揃って大橋くんが好きなのでせっかくなら布教したい、と思って『黄金の定食』を最後にぶっ込んでみたのでした。


おわりに


前回のテーマに引き続き、また長々と書いてしまいました。

「美味しいもの」「美味しそうなもの」は幸福指数をぐんと上げる。
これだけはきっと、万人に共通しているものなのではないでしょうか。

そういう意味でも、「飯テロエンタメ」はきっとまだまだたくさんあるんだろうなあとも思います。
発掘もしてみたいし、逆に布教もされてみたい。

そんなことを思った2022年のとある秋の日でした。

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