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失敗しないLPOの【思考】と【実践】17選

こんにちは、マテリアルデジタルの川端(@nanocolorkwbt)です。

近年、分析ツールや生成AIの進化により、脳死で競合クリエイティブを模倣し、まるでそれを「勝ちパターン」発見アプローチとして推奨するケースが横行しています。他社のクリエイティブを参考にすることは決して間違っていませんが、思考停止で模倣するアプローチだけでは短期的な成果を生むどころか、「自主的なコモディティ化」という愚行に他なりません。ブランドの独自性を放棄し、競争の泥沼に自ら飛び込むような戦略が、本当に価値を生むのでしょうか?

ブランドの本質的な提供価値と市場のニーズを正しく結びつけるためには、デジタル広告における媒体やクリエイティブの最適化が「何を目的として」行われるべきかを明確に定義する必要があります。これを怠れば、手段が目的化し、ひいては意図しないブランド毀損を招くリスクさえあります。

LPO(ランディングページ最適化)は、非常に手法論に偏った意見が取り立たされやすい領域であるため、他社LP を真似し続ける事が目的化してしまうケースもあります。


LPOとは?

Landing Page Optimization=ランディングページ最適化

LP(ランディングページ)を最適化すること。Landing Page Optimizationの頭文字をとったのがLPOです。では最適化とはどういう状態のことを指しているのでしょう?そこから理解しなければ正しいLPOが実施できません。

最適化とは?
最適化とは、与えられた制約条件の下で、特定の目的を最大限に達成するための最良の解を見つけ出すプロセス

重要なのは「制約条件の下」という観点であり、あらゆる条件下で機能する正解などは存在しません。

LPにとっての制約条件の1つが集客経路です。媒体、ターゲティング、クリエイティブによって、ランディングページ内のユーザーの行動も、そして成果も大きく変化します。よってLPOの目的は、限られた導線上での部分最適なのか、全ての集客経路に合わせた全体最適なのかをまずは見定めなければいけません。

LPOでよくいただく質問

・どんなツールを使えばいいのか?
・どれくらいの頻度で行えばいいのか?
・ファーストビューを変えればいいのか?
・滞在時間やスクロール到達率は長い方がいいのか?
・LPは短い方がいいのか?
・受賞歴や雑誌掲載などは見せた方がいいのか?
・CTAは緑の方がいいのか?

前述の通り、LPOは非常に手法論(HOW)に偏った意見が飛び交いがちですが、制約条件や目的によって最適の定義は異なります。

そして根本的に抜け落ちているのが「誰に(WHO)」「何を(WHAT)」という文脈です。このWHOとWHATに対して最も適した表現、訪問者のテンションや期待、この様な視点で仮説を立てデータを用いて検証し、最適化を目指すのがLPOです。

必要なデータは、ユーザーの【行動痕跡】と【行動結果】です。セッション数やスクロール到達率などデータとして残された行動痕跡と、CTAのクリック率やCVR、CPAなどはその結果です。重要なのは、【行動痕跡】と【行動結果】の間に存在する、感情や状況といった【行動背景】が存在しています。最適化とは文脈に合わせたコミュニケーションを模索するという視点も非常に重要です。

とはいえ、LPOを実施されている現場の方のお話を聞くと、データの何を見ればいいのかわからない、テストをしたが何が変化したかわからない、仮説の立て方がわからない、検証ってどうすればいいのかわらかないというお声を多く頂きます。

LPOの失敗する原因50選

LPOの失敗原因は、テスト設計・戦略・テクノロジー・分析/解析・クリエイティブ・組織など、ざっと挙げるだけでも50個ほど。ゼロに何を掛け合わせてもゼロになる様に、そもそもの前提が間違っていると何を実施しても効果は生まれません。

全てに適した正解がある訳ではないと冒頭にお伝えしたが、失敗の再現性はあるので、まずは前提に抜け漏れがないかをチェックすることをお勧めします。また、闇雲にデータを見ることもお勧めしません。マーケティング施策全体を捉えた上で、LPOの状態ゴールや目標を定義し、必要に応じて領域を絞り、解像度の高い仮説を生み続けることが問題解決に相関するKPIの発見に繋がり、その積み重ねによって生まれるのが最適解です。そして、正解はずっと正解であり続ける訳ではありません。だからこそ、今この瞬間の最適解を出し続けることが重要です。

今回の記事では、LPOで実施する際の考え方などの【思考編】と、業務に取り入れやすい【実践編】をまとめていますので、ぜひ現場で役立てていただけるとうれしいです。

【思考編】

1.必ず仮説をたててからデータを見る

仮説を探す探索型
多くのLPOで失敗してしまう方々はこのケースです。もちろん思いもよらない想定外の事実の発見や新しい切り口が見つかることもあります。ただし膨大なデータを解析し、高度な解析手段が求められてしまいます。結局なんだかわからないという結末を迎えてしまう原因は、何か見つかればいいなあという気持ちで「仮説を探してしまう」からです。

仮説を確かめる検証型
慣れていない方は主観でも構いません。「きっとこの情報が読まれているだろう」「ここにタップが集中しているだろう」という仮説をもってデータを見てみましょう。ここを読んでもらえればCVしてもらえるはずだと仮説立てして、実際にCVしたユーザーはどんな行動したのかみてみましょう。仮説に対して事実を収集すると、二つの乖離が発見されます。そして「もしかすると?」という新たな仮説が生まれます。この様に仮説視点は「確かめる」という検証視点となり、どこを見ればいいんだろう、といった悩みも闇雲なデータ収集もせずに済みます。

とはいえ感覚的な手法論だけの仮説はNG

いまだにCTAの色はどれがよいのか?という議論が生じることがあります。視認性を高めるという意味では該当する色もあるが、これだけ世の中にLPやWEBサイト、ECサイトが存在している中でCTAの色はどうしていまだにバラバラなのでしょうか?それは各サイト毎に最適な色や形状があるからであり、どのサイトも現状が最適解だということです。仮に正解があるのであれば、楽天市場もAmazonも同じ色になっているはずです。この様に感覚的な模倣を仮説とするのではなく、重要なのは自社にとっての解を定め、検証し最適解を探し続けることです。

2.「点」から「線」の分析

点の事実を線で結び再現性を高める
たとえばファーストビューの離脱率が高いとします。では単純に離脱率を軽減すればよいのでしょうか?重要なのはCVRの相関関係です。相関関係のない点の改善を繰り返しても不毛な時間が繰り返されてしまいます。ファーストビューのA/Bテストをして、Aの方が離脱率が高かったとします。ではAは負けなのか?しかし、離脱率もCVRもAが高いということは実際にあり得ます。生じた事実に対して無仮説で反応してしまうと永遠と点の作業を繰り返す沼にハマってしまいます。

よって顧客導線上での変数となる、【媒体】×【ターゲティング】×【出面】×【クリエイティブ】×【LP】という領域ごとに最適化するのではなく、全体を踏まえた上でランディングページの最適化すべきレバーと領域を定めなければならず、LPだけを見ていても最適化は起こり得ません。つまりLPOとは、顧客導線の最適化と考えなければなりません。

3.誰に対しての最適化なのかを明確化

施策の目的がどの状態の顧客層に対して実施するのか?が不明瞭なまま設計されてしまうと、「これ、何のためにやってるんだっけ」となるケースが現場ではよく起こってしまいます。これは前提となる「狙っている顧客層」が定義されていないことが原因です。一般的なターゲットは「〇〇で困っている人」という漠然としたものか、誰やねんこれとなる様なペルソナに陥りがちです。自社にとって戦略的に優先すべきターゲット状態を自社の視点で分けてみるとわかりやすくなります。

①CPAが合っており獲得できている層
②獲得できたがCPAが合っていない層
③反応はあったが獲得できていない層
④リーチしたが反応がない層
⑤リーチできていない層

どの層に向けた施策を実施すべきなのかを明らかにしすることで、ターゲットと施策が連動し、且つ課題解決と紐づく設計が可能になります。①獲得できていてCPAが合っている層に対しては、CV要因を構造化し更なる獲得数の拡大に向けて施策を実施すべきであり、②の獲得できているがCPAが合っていない層に対しては、①層との差異を導き出し、成約率やF2転換率などから適切な上限CPAの設定や、コミュニケーションにおける不足要素を洗い出します。

「狙う顧客」は、人によって解釈や目的が微妙に差異が生じやすいので、事前に目線を合わせるために狙っている顧客層とその目的を定義づけることがオススメです。

4.ニーズの数類ごとに文脈整理

顕在層、潜在層という言葉も非常に曖昧な解釈を生んでしまい、関係者同士で施策目的やターゲット解釈がずれてしまう事が頻繁に起こります。そもそも何が顕在化して何が顕在化していないのかの定義も定めず、顕在層や潜在層と会話している時点で、顧客解像度は低い状態です。

自身の課題解決や欲求充足の手段(HAVEニーズ)として自社プロダクトカテゴリーが顕在化しているのか?顕在化していないのか?もしくは他カテゴリーが手段として選択しているのか?など、どのニーズの種類が顕在or潜在なのかを明確化することが、脱・曖昧な定義に不可欠です。

5.行動痕跡から実施すべき施策策定

流入前
流入前には、競合商品の使用経験の有無や使用願望の有無、そして緊急性や情報摂取量、リテラシーなどを含めた「行動理由」となるその人それぞれの背景があります。 

流入後
流入後の行動から訪問者の行動事実と行動理由を仮説立てします。大きく分けて下記の5点があります。

1.訪問前からCVしようと決めていた層
2.LPを読み進めるにつれてCVしようと決めた層
3.検討したがCVできなかった層
4.検討したがCVしなかった層
5.検討すらしないと決めた層

広告データではCVした層としなかった層の絶対値と相対値が分かります。しかし、スクロール推移やCTAのクリック箇所などから細かく計測すると5つに分類されることがわかります。LPOで改善する目的は、CVした層を増やす為か、CVしなかった層を減らすためかを明確にすることで、改善箇所も検証ポイントも明確になります。

6.行動結果の背景にある行動痕跡の解像度を高める

LPOではヒートマップを使用する頻度が高いのですが、これは広告運用データだけでは、行動起点(どこの媒体で何を見て?)と、行動結果(何人がCVして何円で獲得できたのか?)という、最初と最後を数値で計測できるだけであり、手前にある「背景」がすっぽりと抜け落ちてしまいます。これはある種のデジタルの進化に伴い蔓延してしまった「ダッシュボード症候群」という、数値を見るだけで全てを理解した気になってしまうという、マーケティングにおける片手落ち状態が生まれてしまったのです。

デジタルマーケティングは非常に広域な領域を網羅し、全体観を捉えた上で企業成長に紐づく領域を見定め意思決定を下さなければなりません。顧客理解が大事だと分かっているが、日常的に発生するタスクをこなしながら、自社の「伸び代」と「欠損」の要因を理解することは非常に難しく、分かり易いダッシュボードを重視する方が、社内の合意も得やすくタスクが増えません。しかし、顧客の行動結果の背景に必ず存在している感情を理解するには、「なぜ?」を繰り返すしかありません。

7.顧客心理分類に基づいた検証

そもそも、ランディングページで提供しているプロダクト(モノ/サービス)に対して、消費者がどれほどの関与(こだわりの大きさ)しているか?と、市場においてブランド間の知覚差異が大きいのか?という、カテゴリー特性を前提に考えなければなりません。これは、アサエルの購買行動類型という考え方があり、それぞれの特性に合わせて、そもそもLPを最適化することが自社の課題解決として正しい施策なのかを判断しなければなりません。例えば、住宅・結婚式・カップ麺・ミネラルウォーターはそれぞれ、消費者のこだわりの度合いも違うし、ブランド間の知覚差異も異なります。

上記の様に、自社サービスがどのカテゴリーに分類されるのかを前提に、次は消費者心理の分類に基づいて実施すべき施策を定めます。

参考:PTengine

自社のカテゴリー特性によって、流入する顧客心理の特性は上記のように分類され、それぞれの行動特性に合わせて、検証すべきページ、検証方法なども分類することができます。

参考:PTengine

ファースビューのデザインを変える、コピーを変える、といった闇雲なLPO施策もコンバージョンと相関関係のない施策である可能性もあるため、一度自社の商品特性と訪問する顧客心理を見直してみることをお勧めします。

【実践編】

8.平均値だけを見ない

LPOを実施するのであれば、ヒートマップツールを使うことが多いと思うが、最も陥りやすい失敗原因が「平均値」だけを扱うことです。
指名検索/SNS広告、訴求A/訴求Bなど、明らかに流入者のテンションや目的が異なるのに平均値のデータを見て一喜一憂しているのではないでしょうか?全体感を把握するためであれば問題ないですが、図のように同じLPであったとしても基本的に流入経路ごとに訪問者の行動痕跡は大きく異なります。この点を理解していなければ最適化(Optimization)にはなりません。

9.比較による差異によって発見が生まれる

前述の通り、指名検索訪問者とSNS広告訪問者では、テンションも目的も同じである訳がありません。しかし、流入経路別でデータを見ないとそれらの平均的な行動痕跡データでしかありません。全体を捉えた上で、流入経路別、訪問回数別、CV/非CV別、クリエイティブ別で比較した際にどの様な差異があるのかという観点から比較することで、課題が明らかに存在している導線に対して、クリティカルに最適化を図る事が可能になります。

① 特異点を探る
ヒートマップの設定においてセグメントを設定しないプレーンなデータを収集します。気になる数値や状態が見受けられた際は、その箇所を隈なくチェックしていきます。事前に仮説をたてている事が非常に重要ですが、主観的な「ファーストビュー離脱率70%は多いな…」というレベルでも構いません。

②差分を探る
ピックアップした特異点を様々な角度から比較し、果たして本当に特異であったのかをチェックします。先程のファーストビュー離脱率70%を例に見ていきましょう。

例:期間別
前月は50%だったのに70%に上がっている。では20%も離脱率が上がった理由は?離脱率の向上に伴い、他の箇所でも変動はあったのか?CVRの変化と離脱率との因果関係はあったのか?訪問者の特性が変わったのか?配信面で何か変化があったか?新しいバナークリエイティブで配信していたか?

例:流入別
流入の割合が多い2つの媒体別離脱率をみるとグーグル検索広告だと48%、YDNだと83%だった。これは流入前の情報摂取への積極性の違いなのか?クリックした広告分やコピーによって、LPへの期待値が違っていたのか?離脱率が高いYDNは流入前にどんな期待値で訪問していたのか?ファーストビューとの乖離はあったのか?YDNの離脱率軽減はCVRに影響を与えるのか?

この様に①と②を繰り返し、仮説との差分によって新たな仮説が生まれ調査領域が明確になり闇雲な情報収集をせず、目的を持った分析が可能になります。ただし、LPという限定的な領域だけに囚われてしまうと、どうしても視野が狭くなってしまいますので、市場環境やトレンド、顧客データ、コンセプトなどLPだけではない領域に視野を広げながら進めることが、手段が目的化しない為にも有効なアプローチとなります。

③裏付け
この領域はヒートマップだけでは計測できません。しかしファーストビュー離脱率が70%は高いのか低いのかは、比較対象によってという評価軸が異なることが①と②によってお分かりいただけたかと思います。その高い低いという評価は、絶対評価ではなく相対評価が基本です。仮に離脱率が高まったとしても目的であるCVに影響がないなら、その離脱率の改善優先順位は低くてかまいません。なぜその事実が生まれたのかを正しく判断するために必要なのが③のフローです。

10.定点観測でCVRとの相関関係のあるKPIを見つける

LP内には要所でCTA(Call To Action)と呼ばれる、目的(購入・申し込み・予約など)の意思がある方がクリックするボタンがあります。このボタンを押すと申し込みフォームなどに遷移する構造が多いことから、LPの機能としての役割はこのCTAのクリックが非常に重要な指標となります。

当然ながらCTAの位置まで訪問者をスクロールさせなければいけないことから、CTAまでの残存率は自ずとCTAクリック数と率に大きな影響を与えます。表の様にCTAまでの残存率、そして各CTAのクリック率、滞在時間、CVRを定点観測することで、どの指標がCVRに影響を与えているかが可視化されます。

上記の様に継続的に定点観測していくと、CVRに影響を与えやすい箇所と影響度の低い箇所が明確になります。各月のデータを比較すると、CTA2エリアの残存率がCVRとの相関関係があるとわかり、改善すべき領域はCTA2までの区間であると明確になります。

11.ヒートマップツールは各社仕様によって評価定義が異なる

アテンションヒートマップとは、よく閲覧された箇所が赤くなり黄色→緑→青という順で色が変わることによって、訪問者がどこを注視したのかが可視化される便利なツールです。この一見同じに見えるアテンションヒートマップですが、ツールによって計測基準が異なります。

・相対的な計測
ページ内で最も読まれた箇所を基準の赤と設定し、相対的に黄色や緑など色が変わる仕様

・絶対的な計測
5秒以上読まれた箇所を赤、4秒で黄色、3秒で緑など絶対的な指標で色が変わる仕様

という、同じ色でもツールによっては同じ状況とは限りません。図のように、滞在時間が1分以上のLPと20秒ほどのLPでは同じ赤でも絶対/相対によって大きく意味は変わりますので注意が必要です。ぜひご利用中のツールの仕様を把握して分析してください。

12.無料版ツールは使わない

ちなみにヒートマップツールはたくさんあるので、自社の目的に合ったツール選びが重要です。が、機能の豊富さで選ぶというより、自社商材や実施しているマーケティング施策に合わせて最適なツールを選定した方が良いです。無料版の多くは計測できるPV数が少なかったり、流入経路別などの比較ができなかったりします。無料版はUIを試す程度に留めておき、大丈夫であればさっさと有料版で使用することをお勧めします。

Ptengine

ユーザーインサイト

SiTest

ミエルカヒートマップ

Squad beyond


13.ユーザーの動きから流入前と流入後の心理を仮説立てる

コンバージョンした人としなかった人にも様々な購入要因・離脱要因が背景に存在します。必ずしも上記の図の様な心理ではないにしろ、LPがユーザーにとってどう機能しているかを把握する1つの視点として捉えてみてください。

・スクロール到達率が低いが、序盤のCTAをクリックするユーザーはCVする意思が訪問前に形成されている。
・スクロール到達率も低く、訪問後すぐに離脱しているユーザーは、期待値と違ったのか検討すらもしていない。
・中盤〜後半までスクロールしてページ後半部でのCTAをクリックするユーザーはLPにある情報を得ることで検討し、CVを決めた。
・中盤〜後半までスクロールしてページ後半で離脱したユーザーは、検討したがCVしようとしなかった。
・CTAをクリックしたがCVしなかったユーザーは、状況や決済方法、価格など様々な理由でCVできなかった。

定点観測したデータをこの様なユーザー心理の仮説に落とし込むことで、LPが機能していたかが把握できます。全てのLPで滞在時間やスクロール到達率の向上がCVに寄与するわけではございませんので、どの層のユーザーに向けた改善施策が良いかを判断するための材料として活用してください。

14.各要所のスクロール到達率目安とLP構成の役割

やはりデータをみてもよくわからない…という方には、LP構成が誰に対しての要素なのか、そしてそこまでのスクロール到達率の目安を目印にしてみましょう。LPの構成に決まりや正解はありません。ただ、構成には大凡の流れがあります。それは下記3タイプのユーザーに向けています。

①今すぐCVしたい/する可能性がある人
②もう少し検討して判断したい人
③慎重に判断したい人

3つのタイプに向けた各所には目安となるスクロール到達率があります。当然ですが、流入経路によってこれらの数値は変わりますのであくまで目安として活用してください。ファーストビューの離脱率を軽減するのは大切ですが、そもそも流入経路や媒体、ターゲティング、クリエイティブによって異なりますので、どのコミュニケーション導線に対して最適化するのかを理解しておかなければなりません。

15.最適化させる優先度を決める

・セカンドビュー残存率
・CTAクリック率
・CTA以降残存率
・滞在時間
・アテンションヒートマップ

これらを同期間でデータを比較してみると、CVされやすい行動をとっている動線が広告①〜④のうち、どれかが一目瞭然です。

広告④は残存率もCTAクリック率も非常に高い水準です。現時点では優先度は下げて良いかもしれません。一方で広告②は広告④と同様にアテンションが高い水準でありながら、セカンドビュー残存率、CTAクリック率が劣っています。よって、LPの内容に関心はあるが購入に踏み込めない層が一定数存在している可能性があるため、改善インパクトが高く見込め流ので、優先度を高くしなければなりません。

また、この広告①〜④が媒体別なのか、同媒体だが訴求別なのかによっても優先度は変わります。CV数を優先するのであれば送客数が多い導線を優先しなければなりません。

16.CVユーザーから購買要因を探る

LPOで最もクイックに実施できるのが【CV層】と【非CV層】の差異です。CV層が流入後に何にアテンションを生み出し、CVに寄与したコンテンツの把握をします。アテンションが付かなかったコンテンツが不要なのではなく、CV層を増やすためのLP最適化と考えると、CV寄与コンテンツを抽出し、その要素をファーストビューの表現にも組み込むなどすると、CV層の拡大に繋がります。また、CV層がページ下層部で閲覧しているコンテンツがあれば、その要素を上部に移動させるなども有効な手段となります。

17.LPの構成を色分けして分析

LPを構成する要素を上記の様に「情緒的判断材料」と「合理的判断材料」に色分けしてみてください。LPによっては非常に偏りがあることが発見できますので、競合LPを分析する際もぜひ実施してみることをお勧めします。

例えばこんな感じで、同カテゴリー、同価格帯の競合商品のLPを分解してみると、合理的判断材料として機能の説明領域が全体の50%を占めているブランドもあれば、20%以下の商品もあり、各ブランドがどの様なコミュニケーションを軸にLPを構成しているのかが把握できます。どちらが良いという話ではなく、各社のマーケティング戦略によっても異なりますのであくまで参考に。

例として、とあるLPの構成を色分けして分類してみました。

序盤は合理的判断材料が集中しており、購入するに値するかの判断能力がある高リテラシーユーザーを狙っている傾向があります。そのため後半に情緒的判断材料が集中しています。では、非CV(購入しなかった層)の平均スクロール到達率を見てみましょう。

この様に、非CV層はLP下層部までスクロールせず序盤の合理的判断材料の箇所で離脱していることがわかりますので、現時点での訪問者に対しては情緒的判断材料を優先的に提示した方がスクロールを誘発する可能性があるかもしれません。LPの構成を色分けすることでLPの特性を視覚的に把握しやすくなります。これを活用して媒体別や流入前のクリエイティブ別にデータ比較してみると、それぞれに適したコミュニケーションの傾向が掴めるかもしれません。

【まとめ】

「どれくらいの期間、回数のLPOをやるべきですか?」という「正解」を求める方を時々見受けますが、非常にナンセンスな質問だと思います。

そんな正解がある訳はなく、数も質も追いながら地道に繰り返し続けなければなりません。その様な環境において事実数を多く担保することで関係者全員が、主観ではなく事実をベースに議論することが可能になり、事実と目標との乖離が課題として浮かび上がってきます。LPOはファーストビューの離脱を防ぐことだけが目的ではないはずです。

冒頭にも書いた通り、LPOに正解はありません。あるのは制約条件下での最適解があるだけであり、絶えず最適解を求め続けることが必要だと考えています。ただ制作現場では、あまりにも主観的な見解や好みによる仮説ともいえない主張によって実施されていることも少なくはありません。

もちろん、離脱を防ぐことは有効ですし、アテンションが高いことも良いことです。他社よりも滞在時間が長いと知れば安心材料にもなるでしょう。しかし重要なのは、その指標がCVとの相関関係のある指標なのかどうかです。その重要な指標を見つけるためには、やはり訪問した1PVが感情のある人であることを認識しなければいけません。

一方で、人間の感情を数値化することはできません。目の前の人がどれほど喜んでいるのか、怒っているのかという感情は誰もが分からないのです。しかし、ツールを使えば必ず行動した事実が把握できます。そして事実には必ず背景となる理由があります。

LPOにおいても同様です。CVした人もCVしなかった人も、検索広告やSNS広告から流入した人も、初回訪問者も再訪問者もひっくるめた平均データを見るだけでは、新たな発見は生まれません。比較対象がある事で気づきと仮説が生まれます。売り手の理想とする訴求だけではユーザーが反応してもらえない時代だからこそ、LPというセールスコミュニケーションツールを介して、今一度改めて顧客に向き合っていく機会にしていただけると幸いです。

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