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僕がデザイナーとしてLP制作で心がけている「ビジネス思考」20項目

はじめまして。ナノカラーの川端(@nanocolorkwbt)です。ナノカラーという会社は広告クリエイティブ(特にセールス中心)を制作する会社です。

※今回の記事は「デザイナーはこうあるべき」という話ではなく、単なる僕の美学というか僕のデザイナーとしての在りたい理想の話です。しかし他のデザイナーにとっても参考になれば幸いです。
※勢いだけで書いている為、誤字乱文もお許しください。

僕はクリエイティブ制作において、依頼主のビジネスとエンドユーザーを理解し、2つが正しく繋がれるコミュニケーションを確立するクリエイティブ。それが僕の理想とするクリエイティブです。

もちろん僕がひとりで全て出来る訳ではなく、完結できるわけではありません。ただ「わからない」「知る必要もない」「制作さえできればいい」という思考でデザイン制作をしたいくないという、仕事に対する姿勢です。この姿勢は僕の考えるデザイナーの「ビジネス思考」の源泉であり、僕なりの美学かもしれません。

弊社の制作業務にLP制作がございます。ただ、LPを作るだけというスタンスでは依頼主への貢献できる範囲は限られています。だから、依頼主のウェブ戦略を理解する。戦略が不明瞭であれば提案する。その提案の根拠にエンドユーザーを調べる。広げた上でLPという制作物に落とし込む。

しかし依頼主のビジネス課題の全てをLPの力だけで解決する事はできません。だからLPを「作り方」ではなく「考え方」「扱い方」という視点で向き合い、依頼主に提案します。

デザイナーが練習としてバナーやLPを作る事もあるでしょう。「女性らしいデザインで良いですね」と先輩デザイナーに褒めてもらったとします。これが記事のOGPであれば良いのですが、依頼主が多額の予算を投下して出稿した広告バナーであればどうでしょう。ユーザーのクリックを誘発し遷移先ページで意図した目的を果たしていなければ、バナー制作費用だけではなく広告費も無駄になってしまいます。その時果たして「女性らしいデザイン」というものにどれほど価値があるのでしょうか?

はじめに

デザイナーが作ったものを作品と呼ぶのが好きではない
お客様から対価を頂いて作った制作物を「作品」と呼ぶことが好きではありません。※個人的な好き嫌いであって、作品と呼んでいる方には本当に申し訳ございません!(パクチーが苦手みたいな感じです)

なぜ「作品」と呼ぶ行為が苦手なのかを考えてみました。

作品とは
「作品」には芸術的な活動による制作物、という意味が多く含まれています。依頼主が制作者の“芸術的な特性“に期待され依頼している事もあるでしょう。しかし僕が携わるWEB戦略における制作は芸術活動ではございません。依頼主の企業戦略に基づきリターンを得るために保有資源を配分し投下したビジネスツールの一つがWEBサイトやLPやバナーです。

前職の影響
前職やナノカラーを創業した初期、今のWEB制作事業とは違ってEC事業が軸でした。商品開発や仕入れ、ページ作成、広告出稿、売上管理、メルマガ作成、クレーム対応、発送業務などWEB通販の一連の流れが経験できました。その頃に手探りながらも痛感した事が「かっこいいデザインを作るだけでは売れません。」今の僕の考えに色濃く影響しています。

僕の美的評価軸は売上に何の影響もない
僕が良いと思った商品を開発しても、イケてると思ったページを作っても、それが必ず売れる訳ではありません。僕の心が動いたからといって会社に何か生まれる訳ではない。動かすべきはエンドユーザーの感情であり、感情が動く事で売上という数値が動き、得た利益で会社が動きます。自分だけの感情が動いている場合ではなかったのです。

依頼主にとって都合の良いターゲットや商品のセールスポイントを決めてしまうことはあまり良くありません。しかし制作者も自分が作りたいデザインを主観都合で制作し、それを「作品」と称する事も同じく良くない事だと感じています。

ロジックだけも良くないが、ロジックのない思いつきにお金は払えない
デザイナーにマーケティングの視点や顧客リサーチが必要なのか?

優れたマーケターが参画するプロジェクトであれば不要かもしれませんが、全ての案件でその座組が実現できる訳ではございません。そしてデザイナーがその領域の視点を取り入れることで、プロジェクトに意思統一が一層深まり、戦略理解度が高いアウトプットが実現する方が絶対にいいと信じています。

そして依頼主への説得や説明には必ずロジックが必要です。サイトをリニューアルする時、コピーやコンテンツの一部でも削除/変更するなら、その理由が必要です。なぜ変える?なぜ削る?なんの根拠もなく思いつきで削除や変更してもいいのでしょうか?思いつきを対価に変えるには、相応の根拠が必要です。

ロジックなど卓越した画期的なアイデアもあるでしょう。そういうアイデアが世界を変えているのかもしれません。しかし僕の様な凡人にとっては特大ホームランを狙う奇跡的な状況です。たった1本の特大ホームランより、裏付けから導き出された仮説100本の方が、依頼主のビジネスに少なからず貢献できるのではないか。これが僕の美学です。


■デザイン制作を依頼されるまでの流れを理解

制作依頼は依頼主の多くの戦略を経てデザイナーの元にたどり着く。

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当たり前ですが、依頼主は思いつきでデザイナーに制作を依頼している訳ではありません。そこには「果たすべき目標」があります。目標の達成のために依頼主は保有している資産や資源(お金や時間や物)を配分し、その一部が制作費用やスケジュールに落とし込まれています。この資源の分配が戦略であり、マーケティングは戦略に基づき利益を作るための仕組みづくりです。

こう考えると、クリエイティブは仕組み(マーケティグ)の中にある歯車の1つです。しかしデザイナーが作るその歯車の見積もりを「作業費用」として見積もるのか、「投資費用」として見積もるのかはデザイナー次第です。

1 デザイナーにとってのビジネス思考
僕にとってのビジネス思考の1つが「依頼主の視点に立つ」思考です。

依頼主の気持ちに寄り添う事は大切です。しかし寄り添う=思考停止で言いなりになるではございません。依頼主は何が正しいのか時には迷い、色んな要望を投げかけます。だから僕たちはしっかりと依頼主の戦略を理解しようとする姿勢を見せ、伝え、制作の意図と目的を説明し、依頼主の理解を促し、納得していただき合意を得るには、依頼主以上に深く調べ、考えなければいけません。それが僕にとっての依頼主の視点です。

2 オーダー/オファー/リクエストの見極め
次世代コミュニケーションプランニング」に書かれていた内容を引用させていただきます。(※著者の意図と違っていれば申し訳ございません)

広告主のいうことには「オーダー」と「オファー」の2つ。オーダーは広告主の方で既に決まっている事なので、そのまま良い形にすること。一方でオファーは広告主でも明確に決まっておらず頭の中でモヤモヤしている事で、その整理も含めて一緒に解決してくれるかどうか。※要約しています。

デザイナーには「制作ありき」の相談が多く訪れます。ロゴを作って欲しい、コーポレートサイトを作って欲しい、LPを作って欲しい、という制作物を主語にした相談です。なので、そもそも作る必要あるんですか?は依頼主を困らせてしまうコミュニケーションです。これがオーダーです。

全ての依頼主が何を作るべきかを正しく理解している訳ではありません。自社商品の強みがどこなのかが明確になっていない事もあります。訴求したい内容が社内で割れていることもあります。だから一緒に考え導いてほしい。これがオファーです。

定型的ヒアリングシートで「参考デザイン」や「競合」を依頼主に記載してもらったとします。しかし、この質問ではオファー内容は理解できません。知っている商品を競合と選定しているだけかもしれませんし、参考デザインは担当者の好みで選んでいるだけかもしれません。オファー領域の理解には、正しく情報を引き出すコミュニケーションが必要です。

そしてオーダーとオファーに満遍なく紛れているのが「リクエスト」です。担当者や依頼企業の好みや主観が紛れていることが多くあります。

本来の目的とリクエストが混在していそうな依頼
・獲得目的のLPにブランディング要素を入れたい
・ターゲットが女性なのでピンクなど可愛いデザインに
・SEOも考慮した設計でお願いしたい


こういったリクエストに対して「了解です!」ではなく、正しく情報を摂取する質問力と判断軸が必要です。
・貴社にとってブランディングとは何か?そもそも貴社のブランドとは?
・何に悩み何を求めている女性がターゲットなのか?
・可愛いデザインが購買要因なのか?可愛いの定義は?
・上位表示させて何を見せたいのか?
・どのキーワードで上位表示させるべきなのか?
・そもそも上位表示が可能なのか?

リクエストを「オーダー」としてお受けするのではなく、しっかりとオファー領域を対話や提案によって紐解き、実施可否を判断しなくてはいけません。

3 オファー領域が依頼主満足度のカギ

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先日Twitterでアンケートを実施しました。上記はリプや引用RTで回答頂いた内容です。

質問内容は
・制作会社(デザイナー)に依頼して失敗したと感じたポイントは?
・なぜその失敗した会社を選んだのか?
の2点です。

読んでいただければお気づきかと思いますが、全ての依頼者はLPやHPというデザイン制作物をオーダーしたはずです。しかし失敗と感じたポイントに「デザインへの不満」があまり見受けられません。納品物の機能や目的に準じているかどうかや、進行のスムーズさやフローが不満の中心です。依頼側の声だけですので、すべての不満原因が制作側に責任があったのかの真実は分かりません。しかし、この事実をどう受け止めるべきかは制作側としてとても大切なことではないでしょうか?

4 主観/要望/事実/希望/根拠/結論を聞き分ける
3に連動する話ですが、依頼主とのチャットや口頭での会話では主観/要望/希望/根拠/結論を聞き分けることが重要です。

今のLPの成果が悪くCVRが低いです。今は0.6%ほどです。以前制作してもらった制作会社があまり提案してくれなくてずっとこっちから指示をしていたので困りました。デザインもダサいし。だからリニューアルしたい。もっとブランドの世界観を打ち出すと改善できると思ってます。A社の様なお洒落なデザインが理想です。

・CVRが低い(主観)
何と比較してどれくらい低いかが不明。高い低いは正しい比較対象によって判断できる。

・0.6%(事実)
媒体や期間、絶対数(率ではなく獲得件数)などが不明であるが事実の1つ。正しく扱うにはこの数値の背景を知る必要がある。

・提案してくれなくて(主観)
提案することが契約上に含まれていたのかが不明。また実際は提案があったが、依頼主が提案と受け取っていなかったケースも考えられる。

・デザインもダサい(主観)(根拠)
ダサい/かっこいいという個人的美的評価軸がCVRの高低との因果関係があるかどうかが不明だが、主観をリニューアルの根拠として扱っている。

・リニューアルしたい (要望)(結論)
仮にCVRが下がっていたとして、その要因がLPにあるかどうかが不明だが、リニューアルを施策として要望している。

・ブランドの世界観を打ち出す(要望)(根拠)
依頼主ブランドの世界観がユーザーの購入要因となるかどうかが不明。あれば採用する。しかし、目標CVRに達成できる可能性を軸にして優先順位を決め判断すべき。

・A社の様なお洒落なデザイン (主観)(希望)
デザインもダサいと同様。

この様に依頼内容を振り分けていくと、誰の解釈でどう評価されているかが分かり、根拠と結論の因果関係の強弱も分かりやすくなります。因果関係が弱ければ、その仮説が正しいのか判断できる情報を入手しなければいけない。でなければ、要望通りに作ったとしても目標CVRに到達しなければ、再び依頼主はリニューアルを検討し、「デザインは良かったんだけど成果が伴わなくて…」と、他制作会社に相談するかもしれないからです。

5 目的は手段になり、手段は目的になる
手段が目的化してはいけない。という言葉があります。デザイン制作現場では作る事が目的化してしまう状況が起こりがちです。たしかに良くない状況かもしれません。

依頼主の戦略から要件・構造などから紐解くと「制作は手段」の一つに過ぎません。しかしデザインの役割をさらに細分化すると、目的にもなります。

6 そもそも作る技術がなければいけない
依頼主の商材やサービス内容によって、いわゆる王道のデザインがあります。いわゆる「the」です。ポップ/ど真ん中とも言い換えられる、〇〇といえば?で想起される最大公約数です。

雑誌デザインの王道とは?

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雑誌表紙のデザインを依頼されたとします。では雑誌表紙のデザインの王道とはどんなものでしょう。Googleで検索するとほとんどが「ファッション誌」の様です。この時点で雑誌デザインの「the」はファッション誌です。

次に、雑誌にはどんな種類があるのでしょうか?
・ファション
・インテリア
・芸能誌
・ガジェット
・スポーツ
・ゲーム
・漫画
などがありますよね。

2021年 30代女性雑誌の発行部数no1は「very」だそうですので、最も流通しているであろうVERYの表紙を見ていきましょう。

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・ロゴ位置
・メインコピー位置
・フォント最小級数/最大級数
・使用フォント
・色数
・装飾の数や種類
これらを抽出していくと、veryの表紙デザインを再現する際に押さえておくべきポイントが具体的に理解できます。

では次に他の女性雑誌と比較してみましょう。季節要因も合わせる為に2021年10月の同じ時期に発売された雑誌の比較です。

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先ほどVERYで抽出したデザイン要素と、他誌と比較した際に「同じ要素」と「違う要素」が見つける事ができます。この同じ要素が集まる事で、雑誌の王道デザイン要素が見つかり、違う要素が各誌の特徴となります。※雑誌の発行部数や広告媒体料金なども調べてみると、デザインとは関係があまりありませんが、広告に対しての各誌の考え方も垣間見えます。

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次に、ファッション誌以外と比較してみましょう。ロゴ位置や使用フォント、色数や構図まで様々です。この様にカテゴリーによって特性があり、その要素を形作る要素を分解し、共通項目が王道であり、差分が「あえて作っている特性」です。差分は王道を知らなければ作ることができず、デザイナーが作った「なんだか違う…」は、王道要素を押さえられておらず、意図していない差分が発生している事が原因かもしれません。

闇雲な情報摂取は自己満足で終わる
この様に雑誌表紙のデザインといっても多種多様であり、各雑誌の特性やブランドもありますし、季節要因や企画も違います。王道デザインの習得にはかなりの研究工数や時間を有するかと思います。しかし初学者デザイナーがジャンルや業態を問わず闇雲に自分が感覚的に気に入ったデザインだけをトレースしていては、この王道を見つけることはさらに困難になります。

さらに、Photoshop/Illustrator/HTML/CSS/JavaScriptの全てを習得しなければいけないという思考がありがちですが、先程の雑誌デザインと同様、満遍なく薄く広くしたところで、いつ使うか分からない技術よりも、今現場で必要な技術を深める事をお勧めします。その上で、自身がデザインによって何を解決したいのか?何に貢献したいのか?まずはどの領域(お客様の業態やビジネスモデル)に特化したいのか?その領域にニーズはあるのか?こういうプロセスを踏みながらジェネラリストを目指したり、より深さを追求したスペシャリストを目指すのかを判断した方が良いと思っています。闇雲な情報摂取はやった気にさせてくれる作業が増えているだけであり、それは自己満足でしかありません。

■クリエイティブが戦術として正しく機能するため必要な「依頼主視点」

7 依頼主の戦術背景にある戦略の理解に向けた視点。

依頼された「目的の理解」には、依頼主の戦略理解が必要であり、戦略理解には最低限の知識が必要です。マーケティングに興味がある、というデザイナーを見たことがありますが、自身の制作物を戦術として落とし込み正しく機能させるには、興味だけではなく知っておかなくてはいけません。

デザイン制作時にヒアリングする「スケジュールや予算」も、これは依頼主の保有している資源の配分によって決定されています。単に思いつきで提示している訳ではございません。費用感が合わない場合は依頼主が悪いのではなく、制作物以外に予算を投下することが「成し遂げたい目的の達成」に必要だという戦略です。

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8 依頼主のビジネスモデルの理解

「ウェディングドレス」と「スキンケア」「美容室」は、ビジネスモデルが違います。比較検討期間も違います。同期間内の購入頻度も違いますし、商圏も違います。つまりターゲットとのタッチポイントで果たすべきコミュニケーションは全く異なります。しかし下手すればデザイナーは「女性らしいデザイン」という括りで制作しかねません。必要なコミュニケーションに応じて制作するには、依頼主の戦略に基づくべきであり、デザイナーが作りたいデザインが答えではありません。

9  売れる/刺さる/勝てる/伝わる,という曖昧な表現の定義
「売れるデザイン」「刺さるコピー」などは状況や発する人、受け取る人によって定義が大きく変わる言葉です。定義の変わる表現を軸にしたコミュニケーションは基本的に使用しないと心がけています。依頼主が「この方が刺さるよね」と仰れば刺さるってどういう事かを定義し、伝え、合意を得なければいけません。

デザインとは、特定の相手に対し正しく情報を伝達し理解を促し意図した感情や行動を喚起させる役割と考えています。それを作るデザイナーがこの様な曖昧な表現だけを用いて依頼主と会話することは、ゴールの食い違いを生む元凶にもなり得ますので注意が必要です。依頼主の目的理解には、「つまり?」を重ねて深掘りし、構造化し、加えて定量的に説明できる状況を目指すべきだと考えています。

逆に具体的な要求も度々あります。「目立たせたい」「大きくしたい」などがそれにあたります。この要望には「なぜ?」を重ねて抽象化し、そもそもの目的と役割を振り返りましょう。

デザインには理由や根拠が説明できることと、できない領域があります。しかし、多くの場面で制作物の意図を説明しなければいけません。そんな時に抽象化と具体化を行き来する事により、スムーズな提案が可能になります。

※注意 「なぜ?」を繰り返し抽象化した結果「売れるデザイン」という曖昧な定義の抽象化はお勧めしません。CTAクリック率を向上させる、ページ遷移率を向上させる、などの具体性を持たせると共通認識を得やすいです。

10 造形と機能のトレードオフ
「LPはダサいデザインの方が成果が上がる時がある」と、ある方の投稿を見ました。デザイナーが自分の世界観を優先してしまい、目的に沿わない制作をしてしまった背景があったのではないかと想像しています。

ではダサいとはなんでしょうか?ダサいとは個人の美的評価軸により、オシャレと感じるモノと比較して劣っている状態のデザインを指しています。たしかにダサいと感じるものは僕個人的にも存在しています。しかしそれは趣向や好みの判断軸です。では、僕の好みによる評価軸と成果の因果関係はあるのでしょうか?その方の美的評価軸と成果の因果関係があるのでしょうか?実際にそのLPで購入したユーザーは「LPがダサいから購入した」のでしょうか?

仮に成果が上がったのであれば、目的に沿って正しく機能した要素があり、その要素はその方の個人的美的評価とは、直接的な関与はありません。総じて、その方の好み軸としてダサかっただけです。

僕のツイートに反応していただいた方のツイートを引用します。

https://twitter.com/kmiyasaka_os/status/1453573112973332482?s=21

直接的に売上に関与する要素(値引や訴求)を強調するデザインでは「色彩のコントラスト」や「フォントのジャンプ率」を強めることで、デザイン上の世界観とはトレードオフで薄まっていきます。しかしこれは目的に合わせて合理的に選択したデザイン上の状況であり、良い悪いの評価ではなく「合う・合わない」の判断軸が必要です。

■目的に沿って正しく届けるためのユーザー視点

商品・サービスとユーザーを結びつけるクリエイティブ制作

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11 商品・サービスの構成要素を分解
ここから調査やリサーチを実施します。ただし闇雲なリサーチはお勧めしません。今すぐわかる事実と、その事実に対しての解釈の解像度を上げるためのリサーチに振り分けます。

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商品資料などを読めばこの様にカテゴリー/役割/スペック/効果/機能など、商品を構成する要素が理解する事ができます。そして、右側の空欄をターゲットや依頼主企業の特性を踏まえつつ書き出していきます。

12 ユーザー理解

吉田さやかさん(女性)38歳
既婚
IT企業の事務
埼玉県郊外の持ち家で夫(42歳)と小学4年生の男児一人
最近はヨガにハマっていて、映画鑑賞とお菓子作りが趣味
利用するSNSはInstagram、Twitterで投稿より見る方が多い。
自己主張は弱めで、高い買い物はあまりしない慎重派。年齢と共に肌荒れが気になり始めている。自分は「敏感肌」ではないかと思い始めているが、自分に合う商品を見つけたいがまだ行動を起こすには至っていない。

依頼主からマーケティング戦略で定まった上記の様なペルソナと共に「敏感肌用の化粧水」LP制作の相談を頂いたとします。この中で活用できるのはどの領域でしょうか?

居住地や年齢、自己主張の弱さや趣味がどこまでLPに反映できるでしょうか?そもそも「敏感肌」を治したいのでしょうか?「敏感肌」よりも得たい肌メリットや悩みが他にあるのでしょうか?緊急性は?スキンケアに対してのリテラシーは?LPの役割を果たすべき情報がこのペルソナにはあまり有されておりません。

実際に敏感肌商品を購入している方々を調査し分類

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例えばLPという、今すぐ結果を出さなければいけないタッチポイントでのクリエイティブには、訪問者の抱えている悩みの種類、そしてその緊急性やターゲットのリテラシーなどを軸としたペルソナを作ります。一見具体性が高そうに見える吉田さやかさん(38歳)というペルソナ像も、状況によっては役に立たなくなります。年齢は訴求対象の状況や症状の傾向的に母数が変わることがありますが、あくまで年齢だけで判断しません。


購入者の緊急性やニーズ、状況の位置関係を可視化する

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過去があり、現在があり、だからこそ提示する未来像が予測できます。この図はターゲットの過去と現在の状況を分類して可視化し、見せるべき未来をピンクの矢で表しています。誰もが上を目指しているのではなく、現状維持や少しよくなる未来を求めている人もいます。この様に、具体的なペルソナと、そのペルソナの状況を組み合わせることで、タッチポイント毎の最適なコミュニケーションを導き出します。

インタビューやソーシャルリスニングなどにより、ユーザーの心理の一端に触れる事で自分本位では気づけなかった発見があります。しかし、これには注意が必要です。「〇〇さんが言っていたからみんなもそう思っているだろう」というバイアスです。n=1を大切にする一方で、そのn=1は市場でどれほど稀有な感情なのか?という市場の統計など大きなデータと照らし合わせる必要があります。

またアクセス解析やヒートマップだけの解析では「ユーザーの心理」は分かりません。

インタビューなどで得た情報を「行動理由」、データ解析などで事実として得られた情報を「行動事実」として区分けし、このふたつを組み合わせることで、信憑性の高いデータの解釈が可能になります。

13 タッチポイントの理解
バナーを作ってくださいと依頼されたら、まず何を聞きますか?

もしかするとサイズや個数を聞く方が多いのではないでしょうか。それも大切な事ですよね。しかし、依頼主のビジネス理解とタッチポイントの理解という視点からすると、バナーは制作作業ではなく、獲得などマーケティングに関わる戦術の一つです。つまりサイズや個数ではなく

■配信する媒体はどこか?
→どの顧客層(未認知層/高顕在層/顕在層/高潜在層/潜在層)に向けて配信するのかという役割の理解

■現状のバナークリエイティブのデータ
→過去と現状の獲得傾向から勝ちパターン負けパターンを把握し、まだ未実施のクリエイティブ領域を把握する

■遷移先の訴求軸や目的、CVハードルの高さ
→何を訴求しているのか、誰にとって便益と感じられる内容なのか、購入なのか、資料請求なのか、問い合わせなのか。誘導枠として正しく機能させるには、遷移先との整合性が重要です。

この様に作業としてのヒアリングではなく、目的を果たすべき機能としてバナー制作をするという視点からすると、サイズ等の情報は優先順位が低くてもよいのではないでしょうか。

14 事実情報には示唆が必要
リサーチャーの菅原さんのとある記事にも記載されていたので引用致します。

人を動かす資料には「示唆」必要です。ここで言う「示唆」とは、データを見た人が「ああ、そう言うことだよな」と自ずと納得するような、事実上方から得られる気づきのことを指します

例えばLPOでヒートマップを見て「ファーストビューで30%が離脱し、前回比較で14P悪化している」という事実があったとします。これは事実です。しかし1週間ごとに分け、期間別計測してみると、10%の離脱期間と45%の離脱期間がありました。さらに調査してみると離脱率が高い期間ではポイントサイトへの広告配信があったようです。こうみると、ポイントサイトへの出稿により「商品購入への積極性が低い」ユーザー流入があることで通常よりもファーストビュー離脱者が増えたのではないか。実際は離脱率10%に向上改善しており、期間別CVRの計測結果も改善にも寄与していた。

この様にデータは事実ですが、1つのデータ事実だけを鵜呑みにせず、流入別やセグメントや期間などの細分化した比較をすることで、「示唆」は生まれやすくなります。

■依頼主視点とユーザー視点を連動することで得られる事

ユーザー心理を動かすコミュニケーションアイデアとクリエイティブで依頼主のビジネスと連動する制作が可能に。

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15  タッチポイント毎に依頼主の「果たすべき目標」が違う
これも当然ですが、タッチポイントによって果たすべき目標が違います。オウンドメディアとWEB広告では場所も違いますし、そこにたどり着く経緯もテンションも状況も違います。

大きく分けると「認知」と「獲得」です。さらに分解していくと、認知の中でも商品やサービスの価値を「膨らませる関わり」や「膨らませる情報」。獲得の中でも、顕在層向けや潜在層向けによって役割が違います。つまりタッチポイント毎に評価軸となる指標が異なり、同じターゲットでもターゲットに接する側面が違います。

この様に商品やサービスを構成する要素とターゲットとを最適な繋がりをもたらすには、「目的」と「タッチポイント」によってターゲットの絞り込み方も築くべき関係性も違ってきます。

この理解には、依頼主の戦略の理解とタッチポイントの特性理解が必要となります。僕の場合ですと、WEB広告運用のプロではなくても各媒体毎の特性や利用者属性の理解は最低限知っておかなければいけない情報です。「マーケティングに興味がある」と言ってる場合ではありません。特性理解が共通言語を増やし相互理解を深めます。

16 差別化による優位性、差別化されない独自性
具体的なセールスターゲットに対して直接的かつ短期的な効果を目的としたコミュニケーションには競合との差別化による優位性が必要になります。

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日常生活でよく利用する商品であれば、消費者は利用経験も豊富で自ら商品選定するための判断材料を保有しています。リテラシーが高い顧客です。しかし興味関心があっても自ら判断できない商品も多く存在します。「良さそうだけど、本当に自分にとって良い商品なのか?」。こういった購入前の不安点や不明点の解消には競合商品との優位性や第三者評価が判断材料として使えます。

楽天1位や@コスメのランキング受賞歴がLPで使用されるのは、自ら購入判断できない方にとっての購入の後押しになっています。人気があるなら間違いないだろうという判断軸です。しかし第三者評価による購入者は「失敗したくない」心理が強く、価格に対しての費用対効果に対し評価がかなりシビアな傾向にあります。(容量に対しての価格などが見られる)

しかしブランドターゲットには、他社との差別化による優位性ではなく、ブランドの独自性を価値として形成する情報や関わりを提供するコミュニケーションが必要です。それはセールスとは異なる文脈や情報です。

17 コミュニケーションコンセプト
僕自身がどんな人間なのか?これは属する社会、そして接する相手によって見られ方は変わります。自分の表現方法も変わります。しかし僕自身は変わりません。僕にとってはいつでも僕です。

お客様には依頼先会社の代表として、社内では雇用主として、デザイン制作事はデザイナーとして、家に帰れば夫や父として様々な側面があります。この側面毎に同じ僕でも話す内容も話すテンションも佇まいも違います。例えば家庭内で少し横柄な態度をとったとしても多少は許してもらえるでしょう。しかしお客様には絶対に見せてはいけない側面です。

場所と相手と関係性によって、関わり方の方向性を定める事がコミュニケーションコンセプトです。

18  最適化されたクリエイティブ
商品とエンドユーザーを相互に行き来してたどり着いた「ニーズ」や「インサイト」。そしてタッチポイント毎に存在する、依頼主の「ブランド戦略」や「マーケティング戦略」。双方の視点から導き出されたコミュニケーションコンセプトによって作られるのが、最適化されたクリエイティブです。

ここまでのフローを辿る事で、制作する時点で作るデザインは「こうあるべき!」と定まり「これは違う!」と誰もが理解できる軸や指標が生まれます。

依頼主はデザイナーではありません。デザイナーの大変さも理解できない事もあるでしょう。しかしデザイナーの苦労=価値なのかと考えてみれば僕は違うと思います。

成果を上げることは当たり前の目標ではありますが、必ずしも実現できるかはだれも分かりません。故に「必ず成果をあげます!」という心意気はあれど、約束はできない。だからこそ、依頼主と同じ目線に立つ為に共通言語を有し、相互理解を深める事が、僕に確実にできる貢献ではないかと考えました。

19 依頼主を否定しない
依頼主が全ての回答を持っているわけではありませんし、持っていなくても当然です。抽象的な戦略を具体に落とし込むフローを制作側に対価を払って依頼しています。この記事で伝えていることは、依頼主が答えを持っていない状況を否定する為に使う為でもなければ、判断の誤りを指摘するためでもありません。

プロジェクト内関係者の意思統一のため、それがデザイナーにとっての「ビジネス思考」であり、「顧客貢献」につながると信じています。

■最後に

20 「デザイナーがそこまでやる必要ある?」

組織化することで役割分担が生まれ、デザイナーは制作だけに専念すれば良いという環境がダメとは思っていません。ただ僕は作りたいからデザイナーになった訳ではありません。冒頭に話した通り自社商品を売る為にデザインを作り始めたのが僕のデザイナーキャリアのスタートです。

デザインがデザイナーの作品ではなく、依頼主のマーケティングツールとして、エンドユーザーへのコミュニケーションツールとして機能する事が、僕のデザインを作る基準点となっています。

デザイナーの方にとって、これからのキャリアの少しでも参考にしてもらえれば幸いです。(そして、いいねをつけてもらえるとめちゃくちゃ励みになります。)

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