Pさんの目がテン! Vol.10 ヴァージニア・ウルフ「E.M.フォースターの小説」について 2(Pさん)

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 パスポートを作ったことがある人は、わかると思う。信じられないくらいの長さである。窓口が、五つもあり、一つ一つの「引換書」受渡しまで数分しかかからないにもかかわらず、三十分以上も待たされるのである。
 ひとつの多目的ホールと同じくらいのスペースに、四十人くらいがひたすらパスポート引換書を待ちのぞんでいるのである。
 この、現実的なものと理想的なもの、地上的なものと超越的なもの、これが本当にハッキリ切り換わるものだから、まるで「前者をAとし後者をBとした場合に、Aがノリノリで写実をしている時に、急にBがAの肩を叩いているかのようである」みたいな書き方をしているのが、面白かった。
 たぶん後ほど触れることになるかもしれない埴谷雄高の「死霊」にしろ何にしろ、トルストイの「戦争と平和」、「アンナ・カレーニナ」みたいな小説の影響というのは、思いの外遠くまでひびいたものだと思った。
 それから、少し言い換えて、現実的なものと、超現実的なものが混在している小説の最高峰は、ムージルの「愛の完成」だと思う。
 あの冒頭、限界を感じつつある夫婦が、言葉少なに会話するのだが、二人の間にスジカイでもあるかのごとく身動きが取れず、トパーズ色の紅茶が水流のネジレを全く動かさずに注がれ、……といった描写のひとつひとつが、現実的なものを指し示しつつ、常に超常的な力を感じさせる。
 読み返しもせず、先走りすぎた。等々というエッセイを読んだので、今度はそのE.M.フォースターという作家の小説を読んでみようという気になったというだけのことだ。そして、この年代までの分析はウルフがしているけれども、その後どうなったかというところまで、自分の目でわかれたらいいと思っている。あくまで、絶望的な予定ではあるが。

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