日記(Pさん)

 朝起きて、朝食を食べるまでに二時間掛った。今までパン屋で買っていた、食パンに目玉焼きが乗ったものを、家でも作れるというごく簡単なレシピを見つけて、やってみようと思って、食パンを買ってきた。普段トーストを焼くのと同じ時間、トースターに掛けたら、卵がぜんぜん生焼けだった。料理をよくする人は想像すればわかるのかもしれないが、オーブンにして、時間と温度を工夫しなければうまいこといかないらしい。それだからというのもあるけど、起きてからグズグズしていた。何でもコロナのせいにするのもお門違いなのかもしれないが、今まで半分習慣にしていたスポーツクラブ通いが出来なくなり、かなり身体が鈍っているので、寝起きのあとに素早く行動できなかったり、ある程度行動を起こすだけですぐに疲れるようになってしまった。部屋で運動していると、それこそ精神が液状化してしまったみたいに、何となく張り合いがなくなる、強度を維持することが出来なくなる。言い訳もあるかもしれないけど、とにかく現状、運動不足が続いている。
 唯一、家にこもりがちでいいことがあった。ウクレレの腕が、ワンランク上達した。しばらく、メロディ弾きに特化して練習し続けていた。今までは、どこかしらメロディに詰まりつつやるしかなかったのが、数回通すと大体聞けるくらいのメロディを弾くことができるようになった。何というか、反復練習に精神的に支えられる。最近、坂口恭平が、雪国などでこもりがち、というかほとんど家の外に出ることが出来ない冬季が続いている際に、発狂でもしそうなときに、編み物を滾々と続けるということが行われていて、その単調ではあるけれども、ある意味で指先で刺激的に何かをし続けるというのが、精神衛生に役に立つのだといって、自分もセーターなどを編んでいる、見てこれカワイイ、というようなことを言っていた。坂口恭平らしい発想だと思う。それと、楽器演奏を単調に、しかし指先を器用に動かし続けるということを繰り返しやることと、どこか共通しているように感じる。
 今日は、スピッツの曲や、踊る大捜査線のテーマ、ドラクエのテーマソングなど、思いつくさま練習した。
 それから、外に出て食料の買い物などをした。家に帰って、古畑任三郎を見返した。三谷幸喜というのは、役者と脚本を結び付けるというのが異様にうまい。この役者から、こういう犯人役をやりたい、あるいは脚本家が、この人はこういうことをしているのが様になる、などという配慮が至る所に見られる。子供の頃、家庭でかなりハマって見ていたので、懐かしい所が多かった。笑えるシーンなど、何回も見直したので、ところどころ幻想的に誇張されて記憶されているところもあった。一方で、犯人がどういう生活をしていて、人間関係がどうあって、何が伏線になっているといったことが、割と抜けていて、今見直すと、実はこういうことになっていたのか、という発見も多かった。
 束の間、過酷な現実を忘れることが出来た休日だった。休日を一回経る毎に、現実が変容していくので、恐ろしいやら、なんだか他人事になってしまうやら。

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