鰯になった私
アクアブルーの源へ向かう私は、飲まされた薬と与えられる食事で、どうにかエラを動かしている。他人との違いを述べよと言うなら、文字数制限を解除して欲しいくらいだ。濡れた髪をかきあげる仕草で、私はペンを進めるだろう。
歩く魚人には愛想をつくされ、泳ぐ人魚には人格を否定された。そんな事もあるかとヒレをバタバタさせても、問題の解決にはならないと、植物性プランクトンが痒い所をついてくる。訳もなく悲しいのは、集団行動に適さないからだろうか?
諦めの悪い魚類の中で、一目散に去っていく空洞。奴は臆病者で頭も悪いのだが、ただそこに存在しているのは、そこそこ役にはたっている。己の価値さえ分からずにいるだけなんだ。
明日になれば月明かりに誘われて、水面下に現れた網に同族はことごとく捕まえられ、刺身や缶詰に姿を変えていく。それは恐ろしい事なのだろうか?と、日々疑問に襲われている。誰でもいいから、このめぐり逢いの奇跡を讃えてほしい。
まるで恋をしているようだ。
私は鰯なんだけどね。