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西へ

シャーシャー。
ガタゴト。
チリン!

ガチャ。
キー!
コキ。

ガラガラ。
カチャン。

2015年11月12日 午後3時半。太陽が西へと堕ちる間際。射し込む光は鋭角に葵の視線をさえぎり、睨むように視覚を奪っていった。ただ、無言に。

ゆっくりと瞬きする信号機は、3秒間という、長いような短いような、時計が止まるような、不思議な空間を産み出していた。そして、再び世に動きを与えるのであった。

シャーシャー。眩しい西陽は容赦なく、油絵の世界を独自に構成し、弾けるように、走り出す。ラストスパートを駆けるように。ふとミラーごしに見ると滑稽な仕様だが、それが世の理だとすれば、それはそれで仕方のないことではないか?と、葵は思った。

2015年11月12日午後3時40分。山を焼いてしまうのではないかという熱量を持った太陽に、ロウソクの火を消すかのように追い風が吹いた。背中を押されるように加速していく葵は、効果音を付けながら目的地へ向かう。ただ、無言に。

シャー。
キキィー。
ガガガ。
ガチャン!

目的地へ着いた葵はこう言った。

「ただ自転車で走っとるだけなのに、いちいち表現が大げさだな」

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