謹賀
半端な考えから、過ちに堕ちていくのは、むしろ自然だと北風は息を乱して転がり回っている。
涙が右も左も分からずに黙り込む。失うことが寂しいのか、与えられたものに満足していないのか、それは誰もが知らない機密事項である。
一年前に空けたピアスホールが問いかける。
「満足ですか?」
「そうね」
固定された定型文で愛想もなく、葵は答えた。
刺激に飢えた民衆は、都庁にごった返していた。新しい声明を、奇抜な発表をと密に蜜を舐め回し、染色体は染まっていく。新しい明日に向けて、使い古しの昨日は匙を投げた。
「僅かながら、私も一口噛ませて頂きました」
と
まだ熟した果実が自慢気に話しかけるので
「そうね」
と
葵は軽く首を回しながら答えた。
年明けに産まれた、かけがえのない最高の営みが、今世界を変えようとしている。
「興味ある方いませんか?今なら特別報酬も出ますよ!」
葵は客観的に耳だけで判断して
「またね」
と言って場を去った。
どうしようもない意識が、どうしょもない行動を産む。気がつけば蔓延している。
吐き出した息を切り刻むのは、誰の仕事なのか?
「良き一年になりますように」
刻みネギがホロホロ泣きながら口にした。