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12歳差の兄弟を育てています

上が高2、下が年中さんの男子2人なのだが、次男が保育園入る前なんかは公園で知らないお母さんと一緒になることもあった。そこで上の子は12歳上なんだと言うと
「じゃあ、ずいぶん若い時に上のお子さん産んだんですね」
などと返してくださる方が結構いて、私は感心した。
なるほど、人付き合いのうまい人というのはこういう風にさらっとお世辞を言えるのか。私なら「えっ、12歳も離れてるんですか?なんか……大変そうっすね」とアホ丸出しの返事しか出来ないことだろう。いい大人として如才ない会話をしたいものだ。
もちろん若い時に産んだわけではなく、単に次男を高齢出産しただけのことである。なぜ12年も空いたかというと、理由はあるようなないような感じなので、またいつか書くことにする。

2人目を授かったと分かった時、私は嬉しさより動揺の方が大きかった。トイレで検査薬の陽性判定を眺めながらどうしようと思っていた。
12年も前のことなんか何も覚えてないわあ、と思ってたのに『離乳食つくるのめんどくさかったな』とか『旦那のいない時に乳腺炎で高熱出して、しんどかった』とか『乱暴で嫌われてた子が家の長男を気に入ってくれたせいで、他のママ友さん達に距離を置かれてつらかった』とか、子育ての負の記憶ばかりがよみがえり、あれをもう1回やれと言うのか、40にもなって、いや産まれる頃には41になるのか、体力も20代から落ちてるはず、それなのに……と不安になった。旦那に報告する際も、嬉しいお知らせというより「ちょっと、落ち着いて聞いてほしいんやけど」と不穏な切り出し方をしてしまった。

産婦人科に行って、妊娠を確認してもらった際に、
「あら40歳、自然妊娠でしょ?おめでとう」
と言われたので不思議に思っていたが、後で知ったことだが40代の自然妊娠は5%の確率らしい。そうかい、あんた、5%の狭き門をくぐり抜けて私の子宮に着床したのかい。そう思うとこの子の為に私も根性見せるぜと力が湧いてくる気がした。

しかし、高齢出産はやはり不安が大きかった。最大の不安をもたらしたのはちびまる子ちゃんである。
ちびまる子ちゃんで、まる子がクラスメイトと一緒に花輪くんの家に招かれる話があるのだが、そこで現れた花輪くんのお母さんは
「若い!キレイ!女優さんみたい!」
と言われる綺麗な人で、花輪くんは
「ママは僕を20歳で産んだから、ママはまだ20代なんだ」
と教えてくれるのだ。それにまる子が
「えっ20代?うちの母なんか36だよ」と言わんでもいい母の歳をバラしてしまう(手元に本が無いので、まる子の母の歳はうろ覚え)
そして家に帰った子供たちは皆家族に花輪家がいかに豪華で立派だったか語り、うちも花輪家みたいにしたいと言って家族にあしらわれるのだが、問題は丸尾くんの家だ。
丸尾くんはぐすぐすと泣いているのだ。そこへ丸尾くんの母がどうしたざますと現れるのだが、丸尾くんの一言が痛烈なのだ。
「花輪くんのお母さんはまだ20代、さくらさんの母でも36歳、しかし私は母様が40歳の時の子だから母様はもう49歳!スエオ恥かきっ子寸前でしょう!」
丸尾くんの母は「あ〜れ〜、年老いた母を許してェ〜」と涙を流す。
……40の時の子で恥かきっ子寸前なら、41の時の子になるうちの子は恥かきっ子確定かい?私も年老いた母を許してェ〜と言う日が来るのかい?保育園や学校で肩身の狭い思いをするのかい?
まだ見ぬ我が子が「お前の母ちゃんババア〜」と笑いものになる姿を想像し、旦那に結構真剣なトーンで相談したほどだ。

不安をよそに次男は無事産まれ、私はもう二度と『身体の中にもう1人いる』という不思議で神秘的な経験をすることはないのだなとぼんやり考えていた。12年ぶりの妊娠は、不安だらけだったけど、楽しかった。
長男に妊娠を告げた時に「えっ、やった〜!」と言われ、ああ兄弟が欲しかったんやな、長い間待たせてごめんなと思ったこと。「今赤ちゃんお腹のなかでしゃっくりしとるわ、手当ててみ」とお腹を触らせるとひくっ、ひくっと震えるのをすげぇ…と不思議そうにしていたこと。長男が少しずつお兄ちゃんの自覚を持っていく様子がうれしかった。


さて、話はすっかり変わるが先日妹に「姉ちゃんはえらいな」と言われた。どこがえらいと言うのか。
妹は図書館で借りた本からレシピをとりいれたり、野菜や肉はちゃんと切り分けてから冷凍保存したり、牛乳パックで子供用の椅子をつくったり、主婦力の高い人である。私も同じようにすればいいのだが、筋金入りのズボラなので冷蔵庫で野菜を萎びさせたりするダメ主婦である。家事も全般苦手だし、えらい要素が何も無いと思うのだが。
聞いてみると「姉ちゃん、実家から遠いから、どんなに子供にイライラしても親に預けて気分転換とか出来んかったやろ?ずっと自分で見とったんはすごいわ」とのことだった。
妹は2歳差の男の子2人を育てている。すぐケンカするから怒ってばかりで、イライラするから毎週末実家に顔を出しては母に愚痴ったりしているそうだ。
私は気軽に帰省できる距離ではなかったので、親を頼ることは出来なかった。唯一の味方である旦那も、長男の小さい頃は出張続きで、ほぼ母子家庭のような状態だった。
でもえらいことはない。長男にイライラをぶつけてしまったこともある。いっぱいいっぱいだったのだ。
私が思うに、神様が「夢野のところにもうひとりくらい授けてやろう。……あいつすぐキャパオーバーしてブチ切れるからな、上の子がある程度大きくなってからにしておこう」と気を回してくださったのではないだろうか。おかげで長男は第3の親のように私の手が離せない時に抱っこをしてくれたり、トイレに連れてってくれたり非常に助かっている。うちは12歳差がベストだったのかもしれない。
あとは次男に「年老いた母を許してェ」と言わずに済む程度に老いを隠していくだけである。

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