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【インドネシア】宗教の変遷に翻弄されたプランバナン寺院群

インドネシアに訪れたら必ず行きたい観光スポット「プランバナン寺院群」。世界最大仏教遺跡のボロブドゥール寺院遺跡群と並んで、ジャワ建築の最高傑作とされています。プランバナン寺院群とは周囲に点在する遺跡の総称です。

実は、プランバナン寺院群はジャワ島内の宗教の変遷の歴史を見る事ができます。その理由を探りたいと思います。

プランバナン寺院群とは

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ジャワ建築・ヒンドゥー教の象徴であり、インドネシアのジャワ島中部にある遺跡群で、世界遺産に登録されています。仏教遺跡のボロブドゥール寺院遺跡群と共にジャワ建築の最高傑作とされています。

中心寺院であるロロ・ジョングラン寺院はヒンドゥー教の寺院となり、ヒンドゥー教美術文化を象徴する美しさと芸術性の高さが特徴的です。

実はプランバナンという名前の寺院はありません。中心寺院のロロ・ジョングラン寺院があるプランバナン史跡公園にある寺院と、およそ5km四方に点在している遺跡を総称したものを「プランバナン寺院群」と呼びます。

ロロ・ジョングラン寺院

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ロロ・ジョングラン寺院は古マタラム王国により、856年に建立されたとされています。ヒンドゥー教三大神(ブラフマー神、シヴァ神、ヴィシュヌ神)が祀られています。

その聖堂の形が特徴的で、炎が空高く燃えるような形をしています。中央にそびえる主堂のシヴァ聖堂は高さ47mもあり、圧倒的な存在感です。

プラットフォームの上は聖なる土地。特に巨大な3つのお堂は、南側からブラフマー堂、シヴァ堂、ヴィシュヌ堂と呼ばれています。

ヒンドゥー教においてブラフマーは創造神、ヴィシュヌは維持神、シヴァは破壊神を示し、この3最高神によって宇宙の理を示しているそうで、このロロ・ジョングラン寺院自体が創造→維持→破壊の輪廻の中にあるという場所になります。

ロロ・ジョングラン寺院の建造は856年、サンジャヤ朝・古マタラム王国のピカタン王によってはじまり、907年にバリトゥン王が完成しました。

仏教からヒンドゥー教へ

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8世紀から9世紀の間、インドネシアのジャワ島には仏教国のシャイレンドラ王朝と、ヒンドゥー教の古マタラム王国が同時期に存在していました。

シャイレンドラ王朝はボロブドゥール寺院遺跡群を、古マタラム王国はプランバナン寺院群を築きました。

ボロブドゥールが建てられたのは8~9世紀、プランバナンは9~10世紀で、100年ほどの違いしかありません。位置的にも至近で、直線距離で35kmほどしか離れていません。

実は9世紀当時、プランバナンを建てたサンジャヤ朝は、ボロブドゥールを建造したシャイレンドラ朝の支配下にあったようです。

信奉する宗教は違ったが、お互い宗教的に寛容で、それで対立することはなかったようです。
宗教は違ったのですが、二つの王国は縁戚関係にありました。

そのため、ロロ・ジョングラン寺院以外は仏教的特色も混在するものや仏教寺院もあり、二つの宗教が交錯して存在しています。

プランバナン史跡公園内には4つの寺院があります。その中で最大かつ中心的な寺院は、ヒンドゥー教寺院であるロロ・ジョングラン寺院です。

サンジャヤ朝の王たちはシャイレンドラ朝の王たちにしばしば仏教寺院を建造して寄進していたそうで、他の三寺院(ルンブン、ブブラ、セウ)は仏教系寺院あるいは仏教とヒンドゥー教が融合した寺院となります。

ロロ・ジョングラン寺院はヒンドゥー寺院ですが、実は遺跡公園と周辺の寺院はそのほとんどが仏教系寺院ということになります。

ジャワ島最大の勢力だったシャイレンドラ朝ですが、ボロブドゥール完成後その力は急速に衰えて、10世紀にはジャワ島から消滅してしまいます。

一方で、サンジャヤ朝は力を増し、ピカタン王は仏教寺院をヒンドゥー寺院に改修しつつ、856年、ロロ・ジョングラン寺院の建設を開始しました。

プランバナン周辺の寺院が仏教・ヒンドゥー教両方の影響を受けているのはこのような事情によるものです。

ヒンドゥー教からイスラム教に変遷

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ロロ・ジョングラン寺院が使われた期間は半世紀もなく、10世紀前半に王国の都はジャワ島東部のクディリに移され、プランバナン寺院群は見捨てられてしまいます。

原因はムラピ山の火山とも伝染病の流行ともいわれていますが理由ははっきりしていません。

14~15世紀になるとジャワ島のイスラム教化が進み、ヒンドゥー教徒は1割を切るまでに減っていました。

1549年ジャワ島を襲った大地震によって倒壊し、寺院群は人々の記憶から消え去ってしまいました。その後、1930年代にロロ・ジョングランの復元がはじまり、再建されました。

仏教からヒンドゥー教、そして現在のイスラム教が主体のジャワ島の宗教変遷の理由を、寺院群を見ることで体験していくことも面白いですね。

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kenhappy
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