【視察報告】大阪府八尾市の重層的支援体制整備について
説明者
八尾市 健康福祉部次長 岡本由美子氏
つなげる支援室 吉川尚子氏
八尾市は人口約26万人。中小企業が集まるものづくりの町で、河内音頭など昔ながらの地域性を大切にしている。
重層的支援体制整備が始まったのは令和2年度の「10万円給付金」がきっかけ。申請がなかった全ての世帯(3000件ほど)を訪問し、申請支援を行った。(→国費をうまく活用!)
高齢者ばかりかと思っていたところ、40代や50代の人も多く、「今回申請しない人はこれからも申請できないままになってしまう」と危機感を抱き、地域の困窮者へのサポート体制の見直しを始める。
そこからのスピードが凄い。同年9月に相談支援体制検討プロジェクトチームを設置。次年度の令和3年4月には担当課を「地域共生推進課」に名称変更。支援体制の中核を担う「つながる支援室」を設け、生活困窮担当を編入。ここから本格的に重層的支援体制の整備が始まった。
当時、市長が導入を検討していた「ワンストップ相談窓口」は職員の強い助言で中止(→久世も同様の質問を行ったことがある)。各機関の既存相談窓口を連携させる仕組みとした。
住民からの相談は「断らない」のが大原則。そこで対応できない問題は「つなげる窓口」で支援。そこも「断らない」というルールを設けている。これを要綱にも明記。「つながる」ではなく「つなげる」という名所にしているところから強い主体性を感じる。
「つなげる窓口」の職員体制は4名。令和5年度の相談件数は1000件を超えている。各相談窓口が「どうすれば支援すべき人を取りこぼすことがなくなるか」を徹底して話し合い、窓口の負担を軽減するため、分野ごとの「エリアディレクター」を置いている。計42の機関が関与し、「顔の見える関係」を築いている。
八尾市の取り組みで特徴的なのは「ボトムアップ型」であること。職員が発案し、各部の部長級に必要性を説いて、次の年度には部分的な機構改革まで行っている。重層的支援体制の一翼を担う社会福祉協議会についても、岡本氏主導で組織改革を行ったとのことだった。このような事例は全国的にも極めて稀だと思う。
「なぜこのようなことができるのか」と質問したが、岡本、吉川両氏のパワフルかつエネルギッシュなキャラクターに加え、「課を横断して話し合う文化がある」とのことだった。
これはぜひ犬山市でも取り入れたい。岡本氏、もしくは吉川氏(できれば両氏)を犬山市にお招き、職員向けに講演会を開いていただきたいと思う。