インセプションみたから感想を書くネタバレ有

インセプションを見た。
クリストファー・ノーラン作品がどうも好みらしいみたいな話から見てみることにした。
夢の中で夢を見るという話。
夢を使った技術エクストラクトを使った犯罪が起こる世界の話。
夢というあいまいなものだが、作中の科学的な定義づけがしっかりされていて、夢のディティールがしっかりしているのが素晴らしかった。
夢の中では、何か大きな衝撃などをきっかけに目覚めることができたり、夢の中でさらに夢を見ることでステージを切り替え時間を引き延ばすことが出来たり、同じ装置でつながることで同じ夢を見ることが出来たり、と様々なギミックが盛り込まれていたがどれも夢に関連した現実世界での事象や寓話に紐づいたギミックになっている点もよかった。
夢というあいまいなものを科学という枠に収めるのが大変に上手だった。

特によかったのは夢に深く落ちることで時間が20倍に引き延ばされていく部分だ。
人の睡眠という親しみのある行為の隙間に、相対性理論でいう宇宙空間での時間のずれ込みが発生する怖さと面白さがある。
それでいて夢の中の時間軸は超時間的な質感があり、起きたときには一瞬の出来事であったかのように錯覚することもあり全ての人間に対して平等な追体験となっている点が特によかった。
3階層目のコブとモルの邂逅はコブの中にあるインセプション的なモルと別れるための儀式的な意味もあり、遥か彼方の引き延ばされた時間の中にいるモルとの邂逅のようにも思える部分が美しかった。

・雑なはしりがき

冒頭のコブ、アーサー、サイトーのやり取りはこの世界がエクストラクトによる情報戦が存在すること視聴者に刷り込むが、もう少しわかりやすくてもいいんじゃないかなとは思った。そういうとこある。ノーラン。
だが、このやり取りを見せ、中盤で新米のアリアドネに説明していくことで視聴者にこの世界のルールを教えていくのはさすがの手腕だと思った。めっちゃわかりやすい。ついでに調合師や偽装師などの追加ルールもシレっと教えるのずるい。

夢の中で起こる不確定要素はそれぞれの無意識が相互に作用しているのは何とも夢らしくて良かった。

各階層での一瞬一瞬を切り取り、キックのタイミングが近づいていることをカウントダウン的に知らせるのも素晴らしかった。僕らのウォーゲームの「あと三分」にちょっと似てて好き。

新米のアリアドネに対してアーサーがキスを迫るシーンくそずる過ぎる。

背景美術に関して、国や時間、文化に対して異様に緻密な拘りを感じた。東京の新幹線や、中東の街並み、ヨーロッパのビル街、雪山など、夢というあいまいなものを描くために、細部まで妥協せずにこだわることで視聴者に見ただけでここが何処かをわかるようにさせているのかもしれないと感じた。
ホテルの無重力のシーンはどうやって撮ったんだろう。

コブが頑なに子供の顔を見ようとしなかったのはそれがケジメである半面。長いことであっていない子供の顔を思い出せなかったからじゃないかと思った。そこには都合のいい少年少女の顔があてはめられてしまうかもしれないし、もっと残酷な描写になってしまうかもしれない。モルとの絆を汚さないための約束だったのかもしれない。

最後に子供たちと会うシーンで、コブのトーテムであるコマの結末を見ないまま終わったのが印象的だった。あのコマは果たしてどうなったのか。最後を見せないことで恐怖心をあおると同時に、視聴者がいる世界の脆さ、もの悲しさを示唆されているのかもしれない。
もし止まらずに回り続けているとすれば、それは更に上の階層の存在がある塔ことであり、モルの死が正しかったことになってしまう。

全然関係ないけど際限なく死に続けると上の改装ではどうなってしまうんだろうか。

作中に登場するトーテムというアイテム。めちゃいい。
自分だけの些細なアイテムこそが人間のアイデンティティを決定づけているかのようだ。それは思い出であり、記憶である。
象徴的なアイテムをたびたび登場させ、物語のキーとさせる構造めっちゃ好き。
攻殻機動隊で少佐やバトーが自分が生きている実感を得るために行うジンクスのようなものにかぶった。もしかしたら監督も見てるかもしれない。


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