ホラを吹くちから

先日、現代ゲーム全史からの流れで考察を書いた中で、セカイカメラについて触れました。

タイミングよく、というか、偶然ですが、このセカイカメラを作った人である井口尊仁氏に関しての、最近のいくつかのニュースを目にしました。

セカイカメラ、Telepathyの井口氏が帰ってきた―5秒の声サービス「Baby」を米国でローンチ

ここで、大きく取り上げられていますが、新サービスを配信したようです。

『Babyはスマホに向かって5秒間の声を吹き込み、見ず知らずの人と繋がり、会話が楽しめるアプリだ。吹き込んだ声は、画面上で愛嬌のある風船型のキャラとなり、これが「パレード」と名付けたパブリックなタイムラインにプカプカと漂うようになる』

いまいちどういう使い方をするのかが私には見えてきませんが、資金の出し手がいる、ということは、なんらかの役に立つ方法が見込める、ということなのでしょう。

一方でこの記事中にはこのようにも書かれています。

『セカイカメラはARブームを先取りしたようなコンセプトをぶち上げたプロダクトだったが、2008年というのはスマホも非力だったし、ARは早すぎた。これを「時代を先取りしていた」ということもできるし、「実現不可能であることを実現可能であるかのように吹聴した」と見ることもできるだろう。(中略)

Telepathy Oneについても同様だ。(中略)

Telepathy JumpはB向けで市場はあるだろうが、どうみても聴診器。井口氏が見せてくれたスリークで未来っぽいグラス型ウェアラブルとは似ても似つかないものだった。』

私は井口氏のことはよく知りませんが、本人は本気で世の中に普及するサービスだと信じており、ただいろいろな要因で結果としてうまくいかなかった、ということなのでしょうか。

そして、井口氏に関してこのような文章もあります。

シリアルアントレプレナー、井口尊仁はなぜ三度失敗したのか

この中でも以下のように記載されています。

『井口のホラはいつもデカイ。

だからついつい金を出すやつがいる。チャーミングだからね。人間として。

けれども起業家としては決して見習ってはいけない人であることも間違いない。

単に井口尊仁というキャラが面白いというだけだからね。』

この文章からすると、新しいアイデアを思いつき、そのアイデアをある程度の形にすることはできるが、事業として軌道に乗せることができない、という印象を受けます。

事業として成立させられない、というのは、起業家としては確かに致命的な欠点とは思います。

しかし、サービス立ち上げに必要な資金を得てサービスを形にすることを何度もできる、という点はなかなか余人には真似できないのではないでしょうか。

確かに、現実的な話ばかりしていると面白味のないことはよくある話です。お金の出し手が、なぜお金を出すのか、という観点から考えてみると、もちろん、もっとお金を増やしたい、というのも当然あるとは思いますが、誰かの夢にのっかる、というのもあるかと思います。

自分が出したお金で、夢のような技術・サービスが現実化される、という達成感を得たい、という点もあるのではないかと思います。

そういった意味で、夢のようなホラを語れる人、しかもそれが聞き手に心地よい夢と思わせる人は稀有な存在であり、世界全体にとってはある意味必要なのかもしれません。

それが井口氏のこんな言葉に表れているのかもしれません。


『日本の起業家はもっとホラを吹かないとダメですよ。』

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