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収益認識 Suica未使用残高の失効益 その3 参考書籍その他

前回前々回とSuicaなどのJRのICカードについて、最近のトピックなどを踏まえて書いてきました。そしてそれらのICカードの処理について、商品券の処理を参考にしていました。

関連するものとして、そもそも会計基準等に文言のある「商品券」を発行している業界が気になります。
前々回もいくつかの参照書籍を取り上げて説明しましたが、今回はこちらの書籍から参照箇所を見てみます。

参考書籍

『業種別・収益認識基準の適用実務』 中央経済社

本書の「第Ⅱ部 第1章 8 商品券」の項目で、商品券の処理について述べています。P215-217にかけて以下の記載があります。

『業種別 収益認識基準の適用実務』 P215-217より

赤枠の箇所、分かりやすいように、テキストでも記載します。

実務上は商品券の発行時に前受金に計上し、商品券を顧客が商品と交換した時に売上に計上、また、法人税法を参考に、顧客の所有する非行使商品券は、発行事業年度の翌事業年度から3年を経過した時点で収益に計上している会社が多いと思われる。なお、百貨店の現行実務では、発行後10年間で発行額の1%程度を残して、発行後11年目に1%の商品券の残りを一括で収益に計上していることが多い。

『業種別 収益認識基準の適用実務』 P217

この記載を参考にすれば、下図のようなイメージとなるでしょうか。

書籍を元にしたイメージ図

ただ、この記載からだと、「10年目までに残額1%」までを収益計上とありますが、非行使部分も収益計上していたとも受け取りますが、そのあたり詳細に書いていないくて分かりません。
つまり、例えば、10年目までに、使用された商品券が販売額の95%分だったとして、1%の残額を残すには、4%分の未使用分をどこかのタイミングで収益計上することになりますが、従来もこの部分を権利行使割合で計上していたのかが不明です。

また、10年間で残額1%というのは、過去の実績データに基づくものなのか、なんとなくのキリの良い数字で慣習的なものなのか、その辺りもどうなんでしょうね。

法人税の処理

ちなみに、この「10年」という区切りについてですが、関連する年数が出現する箇所があります。会計において収益認識基準ができた(2018年)ときに、法人税側もこれに応じた変更があり、国税庁から下記のものが公表されています。

ここで、詳細は別紙『「収益認識に関する会計基準」への対応について ~法人税関係~』で記載がありますが、商品券の処理についても述べられています。P31,32の関連する箇所を下記に掲載します

「収益認識に関する会計基準」への対応について ~法人税関係~ P31,32抜粋

上記のように、従来は原則は商品券発行時に収益計上(益金)として処理する形だったのを、会計側に合わせる形で、使用した分に応じて益金に入れる形になりました。
最後に、10年経過後は残額を一括で益金にする形です。

現行ルールへ改正した理由や詳細などは、こちらの文書に書いてあるので、興味あれば読んでみてください
【改正】(商品引換券等の発行に係る収益の帰属の時期)

【改正】(商品引換券等の発行に係る収益の帰属の時期) 解説

法人税基本通達2-1-39だと、カッコ書が多くてみづらいので、ここの解説の項目1で、条文をコンパクトに説明しているので、ここを読めば十分かもしれません

現行ルール:法人税 基本通達 2-1-39

この、「10年」という期間は、従来行われていた会計実務を踏まえて、というところから来たのかなと推測します。

会計と税務の比較

ざっくりまとめると、商品券に関しての会計と税務の違いは下記のような形でしょうか。(原則的な処理以外にも例外もありますが、原則的な方式での比較です)

グラフサンプル

・従来の方式

従来方式の会計と税務の違いのイメージ

(ちょっと色が重なって見づらいですが、、、)

・改正後

(1)顧客の権利行使の可能性が極めて低くなる期間が10年以内
この場合は、会計上も10年以内で収益計上が完了し、税務上も10年以内に益金算入する方式で合致します。

10年以内のパターンイメージ

この場合、非行使部分については、期限前に見積計上する場合には、税務においても会計の収益計上と同じタイミングで益金になります(法人税基本通達2-1-39の2)

(2)顧客の権利行使の可能性が極めて低くなる期間が10年超
10年を超える期間の場合、会計上は10年超でも収益計上を続けますが、税務は10年目で強制打ち切りで益金計上しなければならないので、そこで差異が生じることになります。

10年超のパターンのイメージ

権利行使の可能性の見積期間が10年を超える期間であれば、ずれが出る形ですね。従来に比較すれば会計と税務の差は縮まったとは言えますが、異なる点もあります。
実務処理上で煩雑な点がありますが、会計と税務では目的が異なるので、違いが出てしまう面は仕方がないとは言えます。

先述の書籍でも、税務の項目で比較に言及しています。「第Ⅱ部 第7章 1 小売業 (6)商品券」の項目です

『業種別 収益認識基準の適用実務』 P392
『業種別 収益認識基準の適用実務』 P393

このように、会計と一致する場合や一致しない場合について触れています。

開示事例

話戻りまして、書籍の収益認識の注記の記載事例の箇所で、IFRS導入企業である「Jフロントリテイリング」の例を挙げています。(Jフロントリテイリングは、大丸や松坂屋などの百貨店を運営する会社)

『業種別 収益認識基準の適用実務』 P221-222

契約資産、契約負債等の金額や説明が載っていますが、「商品券」について個別に残高等や期間の開示はなく、よくわかりません。
下線部の箇所にこの記載があります。

商品券・ポイントの収益認識時期に関しては定量的に将来の収益認識時期が特定されない場合、定性的情報(実際の利用に応じて)として記載される。

P222

商品券は特に期限なく、消費者(商品券所有者)がいつ引き換えに来るのがわからないから、記載しない、ということでしょうか。

直近の有価証券報告書(2022年2月期)の記載を見てみます。
まず、「重要な会計方針」に記載されている売上収益の箇所から関係ありそうなところを抜粋します

2022年2月期 有価証券報告書 注記 3.重要な会計方針

あまり具体的に細かくは書いていないので、個々の処理は読み取れないです。次に、「売上収益」の注記の箇所です

2022年2月期 有価証券報告書 注記 27.売上収益
2022年2月期 有価証券報告書 注記 27.売上収益

こちらの内容も、契約資産、契約負債等の大枠についての記載はあるものの、個々の商品券の会計処理や金額などは把握できません。

ということで、他に商品券と発行している他の企業などの処理を調べてみようと思います。
次回以降、商品券を発行している会社の処理方法などを見ていきたいと思います。

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