請求書と押印③

さて前回、企業が発行する請求書の押印手続き等のところを考察しました。

では個人事業主が請求書を発行する場合、そもそもその人しか作成する人がいないのだから、その人から送付されたものである場合は、請求書が適正な手続きを経て作成されたかどうかを問題にする必要はないのではないでしょうか?

しかし、社内ルールで押印が必要な会社の場合、個人事業主であろうと、通常の企業と同様に押印を求めてくるでしょう。おそらくそれはこのような理由があるのではないでしょうか。

請求書に押印があるものとないものが混在している場合、ないものについてなくてよいのかどうか確認するのに手間がかかる、という点です。

ルールは例外規定を作れば作るほど運用に手間がかかります。個人事業主との取引が、2、3件程度であれば、「押印がなくてよいもの」として覚えておけばよいですが、規模が大きくなってくると、何十、何百と増えて行くでしょう。それらを処理の時にいちいち個人事業主本人から送られてきたものかどうか確認すると、手間が煩雑になり、業務コストが増加します。

こうした理由から、企業であろうと、個人事業主であろうと押印がある請求書が求められることになります。

個人事業主の立場にたつと、「企業側が手間を省きたいから、こっちにハンコ押す手間を押し付けているんじゃないかよ!」と不平を言いたいところでしょうが、まあ、そこは我慢するしかないですかね。あるいは、どうしても我慢できないのであれば、そういう企業との取引をやめるか、ですね。

会社、個人を問わず、それぞれのもつルールがぶつかり合う時、どちらかが譲らないと取引がうまく回らないですから、どちらも譲れない場合は、取引をやめる、という最後の手段を行使することになります。

このように、押印が求められる理由を見てきました。請求書受領側が押印を要求する理由は、法的要請というよりは、社内のガバナンス、ルールといった側面が大きいです。

ただ、請求書の押印そのものには法的根拠はないですが、何かトラブルが発生した時に、押印の有無によって取り扱いが異なる場面が発生します。

そのあたりを次回少し触れていきたいと思います。

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