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ソフトウェア区分⑥

さて、前回は、現在のオンラインサービスの場合の研究開発費と資産計上の関係性などを解説してみました。

市場販売目的のソフトウェアの場合、サービス開発の現状に照らすと、資産計上のタイミングがないようなケースもあるのではないか、という点を説明しました。

では具体的にそういった処理をしている会社はあるのでしょうか。

ネクソン

ネクソンはオンラインゲームを主力事業としており、スマートフォンゲームも手がけております。

そして、有価証券報告書の研究開発費の項目にはこのような記載があります。

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『オンラインゲームコンテンツの企画承認時から商用化日までの費用』を研究開発費として捉えているとしています。商用化日とは販売(配信)開始のタイミングのことと想定しますので、研究開発終了時点=販売開始、という状況ではないでしょうか。

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イメージ的にはこのような感じではないかと想定します。

前回も述べたように、オンラインのみのサービスなどは、データを物理的なメディアに保存するような「生産活動」が必要ないため、資産計上するタイミングがないことがありえます。

BSのソフトウェアがどのようになっているか見てみましょう。

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まず、個別財務諸表では、ソフトウェアの残高がないこととなっています。(ゲームの開発・制作のメインは韓国子会社でやっているようなので、日本ではそもそも資産計上するような状況ではないのかもしれませんが)では連結はどうでしょうか。

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ネクソンは、連結ではIFRSを適用しているので、BSには単に「無形資産」とだけあり、注記に内訳が載っています。注記の内容からは、明確に「ソフトウェア」との記載がないのですが、もしかすると「その他」に含まれている可能性もあるかもしれません。

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一応、注記の説明では、ソフトウェアもあるような書き方の感じなのですが、ただ、実際の残高として「ソフトウェア」を明記していないところを見ると、残高がないのかな、という気もします。(開示資料からはこれ以上のことは把握しづらいです)

研究開発の項目の説明からすると、やはり自社のゲーム制作に関しては、資産計上していないのかなという感じです。


もう一つ、前々回に取り上げたグリーについてです。

昨年度に会計処理を変更して、ゲームアプリに関しては「市場販売目的」としたということでした。

一方で、注記の記載からすると、「市場販売目的」について書かれていないため、市場販売目的のソフトウェア残高が存在しないのではないか、と推測されます。

そして、そこからさらに推測すると、配信までの制作費用は全て研究開発費として処理しているため、資産計上のタイミングがなく、資産計上していないのではないか、という考えることもできます。とすると、上の方で例示した図のような処理に近いのではないかな、という気もします。


色々と推測が混ざっているため、確実な事柄ではないですが、このように現状の物理的なメディアを必要としない市場販売目的のソフトウェアの場合には、資産計上がないケースもあるのではないでしょうか。

次回は、今回のケースとの比較をしながら、自社利用目的のソフトウェアについてみていきたいと思います。

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