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フィリピン独立記念日 国旗と製旗工房

6月12日はフィリピンの独立記念日。
毎年クリスマスシーズンと独立記念日前は、僕がオンラインショップとAmazonで取り扱いしているフィリピンの国旗の注文が入る。
数量的には独立記念日前の方が圧倒的だ。

今回は独立記念日前なので、フィリピンの国旗と製旗工房について、ちょっと書いてみようと思う。

フィリピンの国旗

フィリピンの国旗について

フィリピンの国旗が現在の形(デザイン)になったのは19世紀末、1897年だ。
赤、青、白の3色に黄色の太陽と星。
シンプルなデザイン。
青と赤の色合いが時代によって若干変化するがデザイン自体は変わらない。
青は平和、赤は勇気、白は平等を意味する。

旗の左側、三角形の白の中には、太陽とそこから伸びる光線3つの星が描かれている。
太陽から伸びる8本の光線は、1898年にスペインからの独立革命の際に立ち上がった8つの州を、
3つの星はルソン、ビサヤ、ミンダナオを指す。

掲揚する時に特徴的なのは、平時は青が上に来るのが、戦時・有事の際には赤が上に来るのだ。
それを間違えると大変なことになる(汗

もう一つの掲揚の特徴は、縦に吊り下げた場合。
青が上になっている状態で旗を縦にするとこうなるが。。。

フィリピン国旗
縦置きの図

実はこれは正しい「平時」の吊り下げ方ではない。
例えばフィリピンの国会で掲げられている国旗は下のような感じだ。

フィリピンの国会

この旗をそのまま90度横に倒すと赤が上に来てしまい、戦争でもおっぱじめようというのか?と思うが、実はこれが平時の正しい吊り下げ方法。

製旗工房で聞いてみると、旗の向こう側、つまり壁側の方から議事堂全体を見渡す目線で掲げられているのでこのようになるということだった。
逆に上記の画像のように青が右にくるのが有事(戦時)の吊り下げ方らしい。
ややこしい(汗
つい最近も選挙で話題となった某有名政治家が自身のSNSにアップした画像で自分の背景に「戦時」用の吊り下げ画像を掲載してしまい、失笑を買ったくらいだ。

国旗を取り扱う

僕が運営しているオンラインショップは主にフィリピンの音楽(CD)や映画DVDをあつかう店舗としてスタートさせたのだけれど、要望に答えられる範囲でフィリピンで手に入るものを仕入れしていくうち、国旗をリクエストされることも多くなった。
特に5月中旬から6月初旬にかけては、独立記念日を祝うイベントのため、大小さまざまの国旗を希望される。
それで、ラインナップとして加えるようになった。

フィリピンで最も歴史の古い老舗製旗工房を見つけた

国旗はお土産物店や市場などでも手に入るが、できればサイズや素材が豊富に選べ、常時在庫があるような工房から仕入れする方がこちらとしても都合が良い。
フィリピンで国旗を作っている工房を調べてみた。
日本でもそうだけれど、問屋街・工房街というのがあって、その中でも繊維系の問屋・工房が集まっているところ、機械系の問屋・工房が集まっているところなどわりと住み分けのようなものが出来上がっている。市場を歩きながら作っているところを聞き歩いてみると、マニラ首都圏の北西に位置する、キアポ教会で有名なチャイナタウンの近くに製旗工房は集まっているらしい。キアポからリサールアヴェニューに出て、高架沿いに少し歩くと辿り着いた。
どの工房も各国の国旗や学校・各種団体の旗、ステッカーにバッジのような小物などを扱っていた。その中で見つけたのがフィリピンで最も歴史が古く、20世紀初頭にフィリピン国旗が今のデザインになった頃から製作している老舗工房「Atlas Super Flags」だ。
この工房は華僑系のオーナーにより設立された。
フィリピンの歴史や国旗が話題となるような新聞記事には時々「オリジナル工房」として登場する。それほど大きくない間口、入り口を入ると大小さまざまなフィリピンの国旗が山のように積んである。その奥を覗いてみると古い工業用ミシンが並ぶ工房スペースになっている。現在まで一貫して手縫いで製作しているらしい(小さいサイズにはプリントものもある)。
日本人が買いに来るのは珍しいらしく、当主のスーザンさんが出てきれくれて、いろいろな話を聞かせてくれた。

フィリピン国旗の誕生

現在のフィリピンの国旗は、1897年、スペインからの独立革命の折りにフィリピン側のエミリオ・アギナルド将軍が、裁縫師だったマルセラ・アゴンチーリオさんに縫製をお願いしたのが起源。
政治家の夫と共に香港に亡命していたマルセラさんのもとへ同じく香港に亡命中のアギナルド将軍が直接製作を依頼したのだそう。

マルセラ・アゴンチーリオ


最初のフィリピンの国旗が縫われている様子

マリセルさんが最初のフィリピン国旗を縫う際に使った「指ぬき」は現在マラカニアン宮殿の博物館に所蔵されている。

マリセルさんの指ぬき

こうしで出来上がったフィリピン国旗は香港からフィリピンへ持ち込まれ、1898年5月28日にマニラ首都圏(メトロマニラ)に南接するカビテで掲げられた。フィリピンでは、5月28日はNational Flag Dayとなっている。

フィリピン製旗工房の草分け的存在 Atlas Super Flags

店舗兼工房入り口

Atlas Super Flags創業者のアレハンドロ・タン(Alejandro Tan)氏は1903年、中国からフィリピンへ渡る。マニラで工房を設立したアレハンドロ氏は主にアメリカへの輸出用の布製品を製作、1910年代後半にはアメリカとフィリピンの国旗製造の正式許可を得た。1921年、アレハンドロ氏の息子のパブロ氏は社名をAtlas Super Flags社と改称、Atlas Super Flangs社はフィリピンで初の国旗専門工房となった。
現在フィリピンの官公庁、教育機関、空港や幹線道路などの公共スペースで掲げられているフィリピン国旗はほとんどがAtlas Super Flags社性のものだ。

幹線道路の中央分離帯に吊り下げられたフィリピン国旗
ニノイアキノ国際空港にたなびくフィリピン国旗
4代目のルニンギン・タン(Luningning Tan)さん
2014年の写真。当時85歳のルニンギンさんは現役で旗を縫製していた

フィリピン国旗のデザインは、他の多くの国のものと同様、パブリックドメインとなっているので、日本でもたくさん作られているが、日本製だからといって、それがニセモノであるというようなことはない。
けれども、どうせなら、フィリピンで作られた、それもフィリピン国内においてもオリジナルとして一目置かれている工房のものを取り扱いしたいと思ったので、僕はあえてAtlas Super Flags社の物を仕入れした次第。
5月は一番の繁忙期で、追加オーダーができないので、今の在庫が売り切れになると次回は6月下旬以降の再入荷となるが、現在amazonでも販売しているので、もし興味を持たれたなら、手にしていただけたら幸いだ。
サイズは45cm x 90cmから150cm x 300cmの特大まで5サイズ
素材は軽いナイロン素材と発色の良いコットン素材の2種類をラインナップしている。



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