無風の夜戦 GKの喜怒哀楽⑤~2018年J1第28節、C大阪対名古屋~

低迷する“桜”と“鯱”の浮上を懸けた夜戦は、共にファイナルサードでフィニッシュへ持ち込むための精度やアイディアを欠き、GKは大半の時間を“無風”で過ごした。

避けられた珍事

GKが最も目立ったのは、後半15分の珍事だ。C大阪の山口蛍が前線に長いボールを入れ、名古屋の和泉が足に当てると、ランゲラックの元へ転がる。そして、キャッチ。東城穣主審はバックパスと判断し、間接FKを指示した。競技規則によれば、バックパスのファールはハンドと同様に「故意」が成立要件。和泉のプレーは意図的でないように見えるが、ランゲラックには足でも正確にコントロールできる余裕があり、無用なリスクは避けるべきだった。

もっとも、これがランゲラックにとって唯一の失策。この試合では特にクロスの処理が安定し、苦しい体勢でも2度、パンチングを成功させてピンチを凌いだ。予測や自らの守備範囲の認識を誤り、不用意に飛び出したり、ポジショニングを変えたりして失点する悪癖も現れなかった。枠内に飛ばなかった、あるいは正面に来た決定的なシュートも、完璧にコースを遮断。〝ビッグセーブの準備〟は万全だった。

C大阪のキム・ジンヒョンも、大きなミスはなかった。後半8分の失点は、秋山の速いクロスがジョーに渡る前に触り、遠くへ弾いており、落下地点に相馬がいたのは不運に他ならない。クロスバーに当たった同20分の前田のシュートも、コースを読んで反応していた。

守護神を楽にさせたミスの連鎖

そもそも、両GKが冷や汗をかくようなシュートは試合を通じて皆無。C大阪の杉本や柿谷はシュートを打つべきタイミングを何度となく逃し、名古屋のアタッカーは要所で繊細さを欠いた。

勝ち点を積み上げられずにいるチームに典型的なミスの連鎖。両GKの出番が少ない、集中力の維持を難しくさせる試合だった。言い換えると、連鎖に巻き込まれなかった両GKの“不動心”は称賛に値する。

<採点>
キム・ジンヒョン:5.5
ビッグセーブ:0
ミスセーブ:0
失点は彼のパンチングから生まれたが、あの速さと体勢では精一杯。不運だった。ただ、前半33分のパンチングはCKにせず、スローイングに逃げたかった。

ランゲラック:6
ビッグセーブ:0
ミスセーブ:0
バックパスのファールは軽率だったが、他に隙はなかった。密集地帯や競り合いで苦しい体勢でも遠くへ飛ばせるパンチングは味方を助ける。

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