判断力と足元の技術の重要性を照らし出す16分間 GKの喜怒哀楽⑨~2018年J2第42節、松本対徳島~
ビルドアップに参画するGKに求められる、判断力と足元の技術の重要性を照らし出す時間だった。J2第42節、松本対徳島。徳島のGK梶川裕嗣は開始から約16分間に3度、ビルドアップで判断と技術のミスを犯し、ボールを失った。
まずは前半5分だ。徳島はゴールキックを前線に送り込まず、GKからDFに繋ぐ意志を示す。しかし、松本も予想しており、それを防ごうと高崎や前田、セルジーニョが動く。
それでも梶川は左にパスを出したため、前田の圧力を受け、懸命に掻い潜って1つ前に繋いだものの、そこで3人にコースを切られてボールを下げざるを得ず、追い込まれて大きく蹴り出すしなく、最終的にボールを失った。
同6分は、より強引だった。
岩上に監視された前川にパスを試みると、案の定、岩上に突っつかれてボールがこぼれる。
幸い、味方である石井の元に流れて事なきを得たが、決定機を献上してもおかしくなかった。
同16分も失態だ。
ゴールキックを同5分と同様に左へ繋ぐが、前田のプレッシャーに屈してボールを戻され、梶川は出し所を迷う。選択したルートは中央の小西。ただ、精度が足りない。球足は長く、猛烈な勢いで走り込んだ藤田に先に触られそうになると、慌てた小西はスライディング。接触で倒れた藤田を見て、主審は松本のFKを指示した。
そこから生まれた高崎の〝ヘッダー〟は威力に乏しく、梶川は正面でキャッチしたが、ビルドアップの方法を誤らなければ存在しなかったシュートだ。
今や、FWやMFを高い位置から連動させてボールを奪おうとするチームは珍しくない。それを交わし、攻撃の組み立てを安定させる上で、GKの関与は不可欠だ。
そして、GKは正しい判断と精確な技術を培わなければならない。特に判断力だ。チームとして低い位置から短いパスを繋ぐスタイルを志向しても、フットボールには相手がいる。この日の松本のように、明らかに対策を講じてきたと察知すれば、自身や味方の体勢、位置、相手との距離を冷静に見極め、必要に応じて大きく蹴るべきだ。「繋ぐ」に拘泥(こうでい)すれば、味方を危機にさらす。
幸い、徳島は松本の決定力の低さに助けられ、無失点で凌いだが、極めて危険な16分間だった。
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