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シャニマス「LME」と「パト2」が重なって見える、という妄言

2025年1月11日、12日に開催されたアイドルマスターシャイニーカラーズ「283 Production LIVE Performance[liminal;marginal;eternal]」(以下「LME」)4公演。
XRライブ、すなわち事前収録された映像と音声をベースとした「ライブ」であるにも関わらず途中から(演出のため)演者がひとり欠けるという演出が大きな話題となった。

自分としては「その手があったか!」と膝を叩くようで、全公演通じて大いに楽しませてもらった(初日2公演は配信をリアタイし、2日目は2公演とも現地で観覧した)。
セトリ的には「Monochromatic」を現地の音響で浴びられなかったことは残念だったが、その分「泥濘鳴鳴」を浴びたのでよしとしたい。

さて、以下はそんな「LME」がいわゆる「パト2」と思ったよりも重なる気がしてならないという妄言だ。


LME odd;2

全4公演からなる「LME」のうち、もっとも強いインパクトを残したのは第2公演「odd;2」だろう。

この「odd;2」ではデュオであるシーズの緋田美琴が公演中に体調不良となり、本来は2人で披露するはずだったシーズのパフォーマンスを七草にちかが一人で披露する、という演出が行われた。
その作り込みは明らかに(褒め言葉として)変態的といえるものだった。

会場内への(開演前と同じ方による)公演一時中断のアナウンス。
明らかに「odd;2」公演のためだけに新録したと思われる、切迫感が前面に出た(ミスも多分に含んだ)にちかのボーカル。
笑顔感のないにちかの表情。
「リハ」と異なる状況に対応しきれていない配信のカメラワーク。
映像は変更できていないがピンスポは対応できている、といった演出変更の「できること」「できないこと」の取捨選択の細かさ。
さらには配信の運営コメントやX、ゲーム内での告知など、場外乱闘的な演出も行われた。
開催にあたっての諸注意にて、他のXRライブと異なり、演者の予告のない変更が示唆されていたことも一連の作りこみに含めるべきだろう。

「シャニマスらしい」技法が惜しげもなく投入された、「XR」という言葉の限界に挑戦するような何かだったと思う。

「状況ってなんだ⁉」

「odd;2」公演で示された「演出」。別の言い方をすれば「想定」あるいは「状況」としての出演見送り。(*1)

こういうものをどこかで見たことがあるな、としばらく考えたところで思い当たったのが「パト2」こと「機動警察パトレイバー2 the Movie」(以下「パト2」)だった。

「パト2」は1993年に公開されたパトレイバーシリーズでは2作目となる劇場アニメだ。
この映画の中盤以降で描かれるのが首都圏の通信網や橋梁に対する物理的な攻撃ならびにジャミングによるまるでクーデターのような(しかし、全くクーデターではない)「状況」だ。(以下、詳細に語ると冗長になるため「パト2」についてある程度把握している前提の書き方になるのはご容赦いただきたい)

「パト2」劇中、まさに首都圏の通信網と橋梁に対する攻撃がはじまろうとするシーンに下記のようなやりとりがある。

決起部隊の攻撃ヘリクルー1「ゴング0より各機。時間だ。状況を開始せよ」
決起部隊の攻撃ヘリクルー2「了解。状況を開始する」
治安出動部隊のヘリクルー「おい!今のは何だ? 状況ってなんだ⁉」

「機動警察パトレイバー2 the Movie」(1:09:55付近)より

「odd;2」公演で、にちかの「美琴さん⁉」から始まる一連のシーンを目にした僕らが最初に味わったものは「パト2」にてこの偵察ヘリのクルーが味わったものに近いものではなかったか。

さらに「パト2」劇中で惹起された「戦争状況」について(主人公のひとりである)後藤隊長が語るセリフに次のようなものがある。

後藤「ある種の思想を実現するための確信犯の犯行だ。戦争状況を作り出すこと。いや、首都を舞台に戦争という時間を演出すること。犯人の狙いはこの一点にある。」

「機動警察パトレイバー2 the Movie」(1:21:40付近)より

シャニマス自体も過去に複数回苦しめられてきた、演者さんの体調不良による公演直前でのライブ欠場(*2)。
これを意図的に演出に取り込んだ「LME」4公演はマージナル(ギリギリ、崖っぷち)な「状況」を作り出すことそのものを目的としていたようにも感じられた。

それによって実現しようとしたものについては分からない。
ただ、enza版で描かれれている一連のシーズのコミュの続きをやろうとしたらこうなってしまったというのであれば、分からないでもない。

今から後一家に5人あらば

ところで、パトレイバーの劇場版では第一作もそうだったが、聖書の言葉が印象的に用いられている。
パト2で用いられたのは、次のような文言だ。

我地に平和を与えんために来たと思うなかれ。我汝等に告ぐ、然らずむしろ争いなり。今から後一家に5人あらば3人は2人に、2人は3人に分かれて争わん。

「機動警察パトレイバー2 the Movie」(1:46:40付近)より

2人ユニットのシーズと、3人ユニットのコメティック、都合5名が出演した「LME」と、この聖書の言葉を勝手に重ねるのはオタクの悪い病気といってしまえばそれまでだ。
ただ、この言葉のそもそもの出典が「ルカによる福音書(12章50節、51節)」というのは本当に出来すぎた符号だろうか。

もう一つ「LME」とパトレイバーシリーズを勝手に重ねるとするならば「パト2」の「オリジナル」ともいうべきパトレイバー旧OVAシリーズ(アーリーデイズ)のエピソードのサブタイトルが「二課の一番長い日」だ、ということも思い出しておきたいところだ。
実はLMEが「にちかの一番長い日」と開発中に仮称されていたりは、さすがにしないものと思いたいが、あるいは。

NEXT XRライブ

「LME」のトリとなった「even;4」公演のラストにて、一連の公演唯一の告知として5月に大阪にてシャニマスの次のXRライブが開催されることが発表された。

今回の「LME」でもたいがいな飛び道具が使われたわけだが、まだ隠し玉があるとしたらどんなものなのか、個人的には非常に期待するところが大きい。

筆者註

*1 「想定」「状況」

自衛隊において演習や訓練などで用いられることば。「これを別のXXだと思って扱う」「こういう事象が発生したというつもり」のような意味合い。『想定・重要施設』(実際はただの倉庫だが演習の間だけは重要施設のつもりで扱う)、『状況、ガス!』(毒ガスが用いられたというつもり(で、防護マスクをつけるなどしなさい))というような用い方をする。

*2 演者の体調不良による欠場

今回の演出と最も近い事例としてはTIF2022にシーズが出演を予定していたが美琴役の山根さんがコロナ陽性となったため(LMEと同様に)にちか役の紫月さんが単独で出演した(ただしシーズのユニット曲は披露せず)という事例がまず想起される。他にもアニサマ2021でのシャニマス全体としての出演辞退等も思い出されるところだ。

参考:上記文中で取り上げているパトレイバーの映像作品(Amazonへのリンク)

「二課の一番長い日」はアーリーデイズの5話と6話。このエピソードにおいてはより明確な「クーデター」に対峙する特車二課の姿が描かれる。

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