横尾忠則 水のように
特集展示『横尾忠則 水のように』が東京都現代美術館(東京都江東区三好4-1-1)にて11月5日(日)まで開催中。横尾の作品は60年以上におよぶ活動のなかで「水のように」千変万化してきた。今回は作品のなかの「水」の表現に注目することによって新たな魅力を探っている。
併せて横尾とゆかりの深い作家の作品も紹介している。
横尾の作品の大半は風景画だが、特に水のある風景が多く描かれている。海、波、水平線、滝、洞窟、雨、水浸しの室内も含まれる。
担当学芸員の藤井亜紀氏による解説テキストによれば、「横尾が兵庫県西脇市の加古川のそばで育ったことや、かに座で一白水星という水に関わりの深い生まれであることとどこかで繋がっているのかもしれません」。
藤井氏はさらに、「水には「水をさす」というように、「間に入って円滑な交流(進行)のじゃまをするもの」という意味もあります。作品のなかの水は、不穏な気配を漂わせながらあたりを乱し、それゆえに人の眼を惹きつける効果をもっているのではないでしょうか」と書いた。
別の世界を映し出す鏡
水は器によってどんなかたちにもなる。横尾は風景を入れる器としていくつかの手法を用いているというー①縁取り②反復③中心軸の協調やシンメトリーの構図④印刷物の重ね刷りから生まれた手法「ヤレ」。イメージを組み合わせた数々のコラージュはヤレの展開とみることができる。
また、水面に姿が映ることから水鏡というように、水は今いるところとは別の世界を映し出す鏡にもなる。横尾はこうした鏡に力で、見たことがあるようで見たことのない世界を開いている。
横尾は語っていた。「ぼく自体、生きるということに形を持っていないということが必要だと思うんです」。
横尾作品の展示は3階だが、1階では「被膜虚実(ひまくきょじつ)」と題して、このほど新規収蔵した三上晴子の作品を起点に、石原友明、平川典俊、ホンマタカシ、開発好明、加藤美佳、名和晃平、百瀬文、藩逸舟、トーマス・デマンド、方力鈞ほかによる多種多彩な作品を辿りながら、そこに見られる身体観の移ろいと生への眼差しに着目する。
2015年に急逝した三上は、現存する作品が極めて少ない。その三上の1990年代初めの貴重な作品群を一挙に公開している。
1988年にヴェニス・ビエンナーレ(アペルト部門)に出品された石原友明の大作インスタレーション《約束》は、幅20メートルを超える青い画面が拡がる空間に、作者の身体イメージが、被膜に覆われた種子あるいは小舟のように配される、体感的な展示だ。
また、2023年に生誕100年を迎えたサム・フランシスの大きな絵画のシリーズも広々とした空間のなかで楽しめる。
休館は月曜日(ただし9月18日と10月9日は開館)と9月19日(火)、10月10日(火)。開館時間は午前10時から午後6時まで(展示室入場は閉館30分前まで)。
なお、8月25日までの毎週金曜日はサマーナイトミュージアム実施日につき午後9時まで開館、午後5時以降観覧料の割引がある。
観覧料は一般500円、大学生400円、高校生および65歳以上250円、中学生以下無料。企画展のチケットでも鑑賞出来る。