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Interview by KUVIZM #6 HIGH-TONE(DJ)

ビートメイカーのKUVIZMが、アーティスト、ビートメイカー、エンジニア、ライター、MV監督、カメラマン、デザイナー、レーベル関係者にインタビューをする"Interview by KUVIZM"。

第6回は、DJとして数多くのイベントで活躍するとともに、GOKOU KUYT、MC ニガリ a.k.a 赤い稲妻をはじめとした多くのアーティストのバックDJとしても活動するHIGH-TONEさんにお話をうかがいました。

HIGH-TONE
Twitter: https://twitter.com/dj_high_tone
Instagram: https://www.instagram.com/enot_hgih_wen/

-DJ活動をはじめるまで

KUVIZM:
ご出身はどちらですか?

HIGH-TONE:
東京都練馬区出身です。

KUVIZM:
DJとして活動を開始する前、どのようにしてHIP HOPと出会ったのですか?

HIGH-TONE:
リップスライムからHIP HOPに興味を持って。
高校くらいまでHIP HOPをうっすら聴いてたら、高校のときに高ラ(『BAZOOKA!!! 高校生RAP選手権』)が流行って。
RepYourSelf(以前インタビューをおこなったMESSさんも所属するクルー)のひとりが高校のクラスメイトだったときがあって、「あのバトル面白かったよね」とか2人で話したりしていました。

KUVIZM:
DJに興味をもったのはどのようなきっかけだったのですか?

HIGH-TONE:
高校生時代に大学受験が終わった後の時期に、ビクビクしながら今はなき池袋BEDに行ってたんですけど。そのころに本当に何の前触れもなく、タンテ(ターンテーブル)を買ってみたり、DJのコントローラーを買ってみて、ノリでやりだしました。

KUVIZM:
DJデビューはいつからですか?

HIGH-TONE:
大学生のときですね。19歳とか。

KUVIZM:
てっきり高校からかと思っていました。

HIGH-TONE:
(自分が高校生のときは)今みたいに地元でサイファーをやるみたいな文化はなかったし、周りにHIP HOPを好きな人がいなかったんですよね。
日本でHIP HOPがマイナーな音楽の部類に入ってる時期だったので。邦ロックが全盛期でみんなそっちにいってましたね。
DJやるよりもギターをやる人が多くて。
マジで、”やることなかったんで始めた”くらいの勢いでした。

KUVIZM:
始めようと思ったのはラップとかビートメイクではなかったんですね。

HIGH-TONE:
絶望的に音痴で、歌うことに自信がなかったっていうのと。
あと、表に立って目立つのは得意じゃないんで。今も昔もですけど。
ただ、「音楽をしたいなぁ。」くらいのニュアンスだったので、知識っていう部分でも、ある意味DJが一番とっつきやすいので、DJを選んだ感じですね。

-DJ、バックDJとしての活動

KUVIZM:
DJとバックDJ、どちらを先に始めたのですか?

HIGH-TONE:
すっごいややこしくて。
DJを始めて2ヶ月ぐらいに某バトルイベント遊びに行ったら、(高ラなどで)画面の中にいたMCニガリがいて。
その時にしゃべりかけたら、(MCニガリが)「東京に上京してきたタイミングで、友達がいなくてバックDJいないんだけどやってくんね。」という話になり、今に至るまでMCニガリの専属のバックDJをやって、7年くらいになります。
なので、DJとバックDJとプレイだと、やっている期間はあまり変わらないです。

あと、18歳くらいのときに、地元から近い場所でサイファーがやってて。
そこに遊び行ったときに、今でもバックDJをしてるkaine dot coと知り合って。
GAWN-LAND、anatomia、J平、who28、$MOKE OGとかの高ラ直下世代は、歳が近くてめっちゃ仲いいですね。渋谷のクラブとかで一緒にたむろしてしました。

KUVIZM:
今バックDJを担当しているアーティストはどのような人がいますか?

HIGH-TONE:
MCニガリ、カイト(GOKOU KUYT)、kaine dot coは、確実にバックDJとして地方までついていきますね。

あと、LSBOYSとか、そのメンバーのMeta Flower、そして、who28、DENYEN都市、Sandyは、スケジュールがNGでなければ、バックDJをやっています。
かっこいい人は誰かと言われたら、普通にそいつらの名前をあげちゃいます。

KUVIZM:
個人的には、HIGH-TONEさんといえば、GOKOU KUYTさんのバックDJをやられている印象がとても強いですね。

HIGH-TONE:
カイトとは、普段そんなクソ真面目な話もしないんですけど。ちょっと気持ち悪いけど、”こいつ音楽止めるまで一緒にいるんだろうな”とは思います。音楽関係者で1番会ってるのおそらく俺なんですよ。一昨日も焼肉行ったり。

一番たぶん、脳みその中身が近いというか。趣味とかが被ってるとかじゃなくて、"ちゃんとするところ"、"休むところ"とかが似てます。
一緒にいて気を遣わないし、歳も1個違いなんですけど、出会って1年も経ったら敬語も抜けましたし。

向こうがどう思ってるかはさておき、一蓮托生じゃないですけど。言葉にするのが難しいけど、カイトが普通に1番かっこいいと思います。

KUVIZM:
何年くらいの付き合いですか?

HIGH-TONE:
言うてあんまり長くなくて、4、5年ぐらいですかね。

-バックDJとして大切にしていること

KUVIZM:
バックDJで意識していることや、大切にしていることは何ですか?

HIGH-TONE:
“ちょっとおせっかいになること”ですかね。
あくまで対等というか。
例えば、割とセトリ(セットリスト、ライブでプレイする曲目)に口を挟むんですよね。

“この曲のキーはこのキーだから、このあとの曲はこういうほうがいいんじゃないか”とか、”ライブで2回連続で同じセトリにしないようにしよう”とか。他のDJよりも確実に口を挟んでます。

KUVIZM:
バックDJの際に、気を付けていることはありますか?

HIGH-TONE:
“間”ですかね。例えば、15分ライブやるとして、曲の間などにMCをやるなりして)15分まるまる曲をやらないじゃないですか。
“Next Shit”って言って、曲をやるのがめっちゃ好きじゃなくて。観ててあんまり気持ち良くなくて。自分のエゴですけど、「次の曲これです。」ってラッパーに言わせたくないんです。

アウトロなり、フェードアウトして(徐々に音量を下げて)、前の曲が終わったら1拍おいて流すとか、「この曲は声から入るからからアカペラやってみ。」とか、音から入るか、しゃべって入るかとか、曲以外のあいだの音、”間”は大事にしてます。めちゃめちゃ気にしてます。

KUVIZM:
例えば、曲にまつわる決め台詞を言ったら曲が始まるみたいなのは大丈夫ですか?

HIGH-TONE:
全然大丈夫ですけど、ライブは一発限りだから多用はしてほしくないです。

ライブって生モノなんで、同じお客さんが次見に来てくれるとは限らないからこそ、色んなことやるべきなのかなと思ってるんで。

例えば、「このタイプビート誰かに打ち直してもらわね?」とか。最近のTrapのラッパーにはあまりいないけど、昔からいるラッパーってライブで音源と違うビートを使ったりするじゃないですか。あとは音を抜いたり。

自分の場合は、最近のHIP HOPと昔からのHIP HOPの両方の環境で育ってる人間なんで、オートチューンを使うのにも抵抗なければ、音抜くのにも抵抗ないんです。

で、ある意味、理想のライブができてるのはカイトなのかもしれないです。

2人の中で”型”が何個かあって。人に言ってもわかってもらえないっていうか。「こことここは、こうだから、この方法でいくから、1拍あけてからこういって、その次これ。」くらいの感覚でふたりで組み立ててるので。カイトのライブが1番、自分の理想に近いライブできるのかなぁと思いますね。常に何か新しいこともしてるんで。ほんとに地味に新しいことをいっぱいしてるんで。

KUVIZM:
差し支えのない範囲で、その話を詳しく教えていただけませんか?

HIGH-TONE:
カイトの「シンデレラ」って曲があるんですけど。実あれ、ライブで5パターンくらいあって。
昨年の年末にエイジア(渋谷のクラブ、clubasia)に出演させてもらったんですけど、Future Bass系のイベントだったのでどうしようと思って。
音源として配信されてるやつじゃなくて、もうちょいTrapチックで、明るい音色のやつでやりました。ただ明るい音色でやると暗い曲が映えなくなるから、暗い曲を1曲だけにして、もう1個別の曲も新たに明るいエディットを作りました。

あとは、曲の2回目のフックの前で、アカペラになって、2回目のフックが始まるといきなりビートが変わるとか、そういう細かいのを日々考えてやっていますね。

KUVIZM:
お客さんは気づくんじゃないですか?今回のバージョンがよかったとか。

HIGH-TONE:
多分そうですね。SNSでメンションくれたりとか、お客さんもちゃんと気付いていますね。
DMで、「あの時のあのライブのバージョンをリリースしてほしい。」みたいな事を言われたりしますけど、それはやっぱライブだからいいというか。
でも気付いてくれるのはうれしいから、「またライブに来てよ。」みたいな感じですね。

KUVIZM:
HIGH-TONEさんたちがライブでやっていること、とてもこだわりが強く、ハイレベルじゃないですか?

HIGH-TONE:
でも、やっぱ上には上にたくさんいらっしゃって、実は。日々勉強ですね、マジ。

KUVIZM:
「照明をこうしたいね。」とかも一緒に話したりするのですか?

HIGH-TONE:
ワンマンとかだったら、もちろんそこもちゃんとしたいなぁと思っていますね。ただ普通のクラブの15分とか20分の枠で、自分たちのエゴだけのために、いつもそこを無理にやってもらう必要ないと思ってるんで。
あくまでその場でできることを最大限やるというか。

ただ、やっぱカイトとしゃべってると、この照明でこの演出がしたいといった話をしているんで、大きいところで(やるときに)観て貰えたらと思いますね。

あんまり公には言ってないのですが、DJとしてだけ関わっているよりは、裏方として(アーティスト活動に)携わってる部分が大きいですかね、今はもう。
TOKIO SHAMAN(イベント)をやってるときもバックDJを自分がやっていないときは、裏導線走り回ってタイムキープしたりとか、箱(イベント会場)とのやりとりをしたりとか、演者さんとののやり取りとかも、鈴木健さん(現TOKIO SHAMAN A&R)と一緒にやっていましたね。

KUVIZM:
ニート東京でGOKOU KUYTさんが、「ライブでHIGH-TONEさんがDJとして後ろにいると緊張がほぐれて、ありのままにライブをできる。」とおっしゃっていましたが、そうなるようにHIGH-TONEさんご自身で意識している部分はありますか?

HIGH-TONE:
普段からUSBメモリー3本、Mac1台、オーディオインターフェース、持ち歩いて何があっても対応できるようにしたり。ライブで前後の出演者の方とのコミュニケーションをとるのは自分の役目だと思ってます。

(前の出演者に)「最後の曲何やるんですか?」とか、「どうやってはけますか(ステージを後にしますか)?」といったことを聞いたり。
(次の出演者に)「最後この曲で終わるんで、ステージに入るタイミングお任せするんで。」とか、「機材これ使います。」とか、自分から言いますね。そういうのは。

でも、それも自分らのためなんで。イベントを円滑に進めようとかではなくて、やっぱDJなんでイベントで音がない時間が得意ではないので。
見せ方、見え方よろしくないというか。転換に手間取ってるのも、お客さんから見えちゃうじゃないですか。確認と報連相はしてますねいっつも。

-DJプレイについて

KUVIZM:
バックDJではないDJプレイについてお話をうかがいたいのですが、プレイする楽曲はどのようにディグる(探す)のですか?

HIGH-TONE:
色んなの聴きますね。聴き始めたらアルバムの客演のアーティストだったりプロデューサーが手掛けている作品を聴きますね。
DJとして出させてもらってるパーティは、ジャンル縛りのない、特殊な現場が多くて、Barから、小箱、大箱、野外まであるので。
BLOCK(黎 KUROI主催のイベント)とか若いラッパーが集まるイベントに出させてもらったり。
自分が(イベントに出演する・しないを)定義していない分、色んな所に呼んでもらえるんで凝りかたまった感じではないです。
HIP HOPだけディグろうとか思ってないんで、ジャンル関係なく音源をディグってます。

KUVIZM:
イベントで知った曲をDJプレイで使ったりするのですか?

HIGH-TONE:
良いなと思っても、あまり自分では流さないですね。
「かっこいいすね、何て曲すか?」って聞いて家で聴くくらい。
DJで長そうとはあまり思わないです。基本的に自分で探します。

KUVIZM:
HIP HOPではどのような曲をDJでプレイするのですか?

HIGH-TONE:
日本のヒップホップだけではなく、USも普通に聴きますけど、ヨーロッパとか、カイトが好きだからというのもあるけど、K-HIP HOPも好きですね。そういうのを混ぜつつやってますね、HIP HOPだったら。

KUVIZM:
日本と海外のHIP HOPの曲を混ぜるのは大変だったりしませんか?

HIGH-TONE:
どうなんですかね。割合は気にしてます。
BPM(曲のテンポ)を合わせるくらいだったら誰でもできるので。
最近やったのはタイプビートの作者縛りとか。

KUVIZM:
Laptopboyboy縛りとかですか?

HIGH-TONE:
はい、あれで縛るとなんでも行き来できるんで。

あと、日本人のラップはめっちゃうまい人だと、USと混ぜても遜色しないんであまり気にならないです。
最近は”ここ絶対、盛り上げる”というところでしか、日本語のラップは使わないです。プレイする曲の割合としては海外が多いですね。

KUVIZM:
それはDJを始めた当初からですか?

HIGH-TONE:
最初は日本語ラップしか流せなかったんです。
当時は先輩含め、そういう人がまわりに3、4人しかいなくて、目立ちまくってたんですけど。
最近は、日本語しか流さない、流せない人がめっちゃ多くて。そういうのも好きなんですけど、俺がやる必要はないかなと。
日本語のラップでクラブが盛り上がるのはめっちゃわかるんですけど、”一撃必殺技”じゃないですけど、ここぞというときに3、4曲をぶち込むだけですね。

-今後について

KUVIZM:
これからやりたいことはありますか?

HIGH-TONE:
個人のDJとしても、バックDJとしても、日々やりたいことはずっとあって、積み重なっていっているんですけど、夏フェスはしたいですね、野外で。

10代から主催のイベント(FAMILIA)をやってて。
underbar、BEDで、昨年にHARLEM(いずれも都内のクラブ)でやらせてもらって。
“次どうするか”ってなったときに、”HARLEMより大きな箱でやる”っていうのじゃないのにしたいなって。みんなで話してたら、”野外フェスやりてえな"ってなって。来年とかの話ではなく30歳ぐらいではやりたいなって思ってますね。

10代の時から、「大きい箱でやりたいね。」、「HARLEMでやりたいね。」って言ってたら実現できたんで、やれるというか、やりますね、そのための積み重ねですね。

KUVIZM:
他にもやりたいことはありますか?

HIGH-TONE:
ひと組のアーティストに、制作でプロデューサーのような立ち回りを1回してみたいです。
ひとつの作品を作りたい。

“自分が何ができるか”というより、”誰かひと組、HIGH-TONEのわがままに付き合ってくれ”という感じで、若い子とそういう動きをしたいです。

こちらが求めるものがたくさんあるこそ、相手にもたくさん求めるものを言ってほしいです。

アルバムかEPか、制作たずわりつつ、リリースやらリリースパーティとか手掛けたいです。今年中にひと組やりたいですね。

KUVIZM:
具体的にはどのようなプロデューシングをしますか?

HIGH-TONE:
曲を作って、行き詰まったら、「これこうしたらいい」とか助言したり。

自分でDAWも触れますし、レコーディングに何回も立ち会ったこともあるので。

アーティストで仲がいい人を客演に呼ぶ人が多いと思うのですが、そういうのを一旦取り除いて、こういうアーティストとやったら?と提案したりとか。
「スタイル変えろ。」、「フロウ変えろ。」と言うのではなく、「明るい音色のドリルやってみれば?」とか細かいところに口挟む感じですね。そういうのを言い合える人を探してますね。

KUVIZM:
「是非自分を。」という連絡がきそうですね。

HIGH-TONE:
基本は、自分の足で見つけますね。いろんなパーティ遊び行ってライブを見て。ただ、興味がある人いたら、連絡欲しいですね。

TuneCoreという便利なサービスがあることで、”リリースまで自分でひとりでできる”と思ってしまえるんですけど、それはいいところでもあるし、逆に言うと(ひとりの)限界もあるっていうところの限界を、自分が関わることでとっぱらっていきたいです。

KUVIZM:
ありがとうございます。本日のインタビューは以上です。

HIGH-TONE:
ありがとうございました。

Interview by KUVIZM バックナンバー
https://note.com/kuvizm/m/mb5dcc2fd6d61

記事チェック協力:與語歩

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