~再会
以前と変わらない笑顔で彼女は言った。
「あなたの明るい声が聞けて良かった。」
◇◇◇◇◇
自分の親と同じくらいの年齢に見受けられる彼女は、会うといつもよく通る声で明るく挨拶をしてくれる。その対応は誰に対しても変わらないのだろう。他の住人と談笑している姿もよく見かけた。
しかし、このコロナ禍で自粛、ソーシャルディスタンスが叫ばれるようになってからというもの、私は彼女の姿を見かけても、以前のようにあえて近くまで行きこちらから声をかけるのをためらうようになった。私が彼女と最後に声を交わしたのは、いつだろう。 今日、本当に久しぶりにばったりと会った。
彼女は少し驚いたような顔を一瞬見せたが 「元気だった?」から始まり
「お顔見ないから、気になっていて」と近況報告
そして、最後に
「あなたの明るい声が聞けて良かった」と満面の笑みで言ってくれた。
挨拶を交わすだけの間柄だったのに、気にかけてくれていたこと。心がじんわりあったかくなる。そして、いつも自分が彼女から元気をもらっていたことを思い出す。
「まだまだお互い気をつけましょうね」
「いってらっしゃい」
どこか人との関わりが遮断されていたようにも感じていたけれど、それはコロナを理由に私が選んでいたのかもしれない。
ちゃんと、つながっている。
次また会えたら、とびっきりの笑顔で明るく挨拶しよう。私の心を明るく照らしてくれた彼女のように。
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