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回想

若かったころ、私は根拠のない自信に溢れていた。傲慢で自信過剰で人生を舐めていたようにも思う。それが日本を離れて「何者でもない自分」になり、社会と断絶し子育てに必死になった。唯一頼れるはずの夫は人生のパートナーではなく「一人の天才」だった。彼にとって私はパートナーではなくただの愛玩の対象であり、自分を称賛してくれる理解者であり、住み込みの家政婦だった。本物の天才の隣にいる私はそれを誇らしく思いながらも日に日に萎れて陰の中にいるただの飾りになっていった。

数年が経ち、何か間違っている気はした。けれどそう思ったときには既に私は自分の価値をすっかり下げてしまっていて、平凡で価値のない私が何を主張できることがあろうかと、よりよい飾りであろうとしたし、自分の選択が間違っていたと思いたくなくて「夫の価値が私の価値」と思おうとしていた。今思えば彼にいくら才能があろうが家族としてはただただクズだったのでいつ捨ててもよかったのに、決断できなかった。なぜなら私は平凡で才能のない、無価値な人間だから。夫と離れたところで私には何もないから。

それにどうせ帰る場所もないのだ。

そんな日々の中で、料理だけは日常の中で繰り返して生み出すことができる創作だったので、それをするときだけは活き活きと感じられていたんだろうと思う。

今日はここまで。


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