予備試験合格後から司法試験までに使用した教材(刑事系)

(以下は民事系と同じ)
予備試験合格後に、司法試験の過去問に取り組もうとした当初は、司法試験の問題が予備試験と比べて問題文が長く、処理すべき量が多いこと、論点もひねられていて難しいことに驚いて途方もない気持ちになった。そして、それまでは論証集の内容を暗記してなんとか試験を乗り越えてきただけで、判例知識をしっかり習得してこなかったことにも気づいた。それを踏まえて、司法試験に向け、3月~7月までの短期間で、以下の教材に取り組んだ。時間が限られていたので、そこまで教材は多くない(多くできなかった)。

〇刑法
・論証集(アガルート)
・過去問
・基本刑法
・刑法事例演習教材
逆に、使用しなかった教材
・択一六法
・刑法総論の悩みどころ、刑法各論の悩みどころ
最近の刑法は、罪責を検討する普通の問題と、学説の理解を問う問題の2つが出題される。学説問題は慣れないと嫌に感じるが、基本刑法をやりこめばだんだんできるようになってくる。
 基本刑法は、予備試験口述試験のために内容をほぼ完璧に暗記し、そこで力がかなり付いたので、それを覚え直すという作業を行った。判例通説と、それに対立する学説の両方をしっかり覚えるようにした。これができていれば、論証集暗記にかける時間が少なかったとしても意外と論証は書けるようになっている。
 刑法事例演習教材は、(学部4年時の)予備試験短答式試験の前の暇な時期に自主ゼミで取り組んでいた。逆にそれ以降は取り組む時間がなく放置していた。司法試験直前になってきて不安になり、事例部分と解説部分に軽く目を通したというくらいである。この目的は、事例のパターンを学ぶというものであったため、この程度でよい(例えば、他人名義のクレジットカードを使って買い物をし、支払伝票に他人の名義で署名をした場合、詐欺罪と有印私文書偽造罪が問題になるという思考のパターンを押さえるというイメージ)。このくらい軽い気持ちで取り組むのが逆によい(起案したり答案構成したりすると時間がかかって挫折しがち)。
 短答対策も、基本刑法を参照しつつ短答過去問(アガルート。短パフェで代替可能と思われる)に取り組んだ。択一六法も良い教材なので使って良かったが、自分は基本刑法を信頼していたのでこれに一元化してしまおうと考えたわけである。短答過去問で間違えた部分について、基本刑法に書き込みをしていった。
 刑法総論の悩みどころ、刑法各論の悩みどころは、上記の学部4年の自主ゼミのときに用いていた。良い本なのだが(いずれ他の記事で書く。)、司法試験対策としては基本刑法の方が間違いなく良い。この本は論点解説本で、面白いし刑法の理解が深まるが、予備試験の刑法でEを取ってしまった(一番悪かった)ことから、やはりより受験界で王道とされる勉強法にした方が良いと思い直した(しかし、この本が悪いわけではなく、本番で自分が意味不明なことを書いただけであるが)。この本に限らず、刑法は教材が充実しているが、もっとも外せない王道が基本刑法であるという点で私は基本刑法が良いという結論に至った。

〇刑訴法
・論証集(アガルート)
・過去問
・基本刑事訴訟法Ⅱ
・百選スピード攻略講座(アガルート)
 刑訴法は、論証集だけを使っていては点数がそこまで伸びない。その理由は、「論点」ではないが重要な検討事項であるもの(例えば「逮捕の理由」や「逮捕の必要性」など)に対する意識が薄れがちになること、「論点」ではよく比較衡量が出てくるが、何を考慮要素にすればよいかの理解が弱いままになりがちなこと、が考えられる(私はそうだった)。そこで、基本刑訴Ⅱを通読しつつ、論証集にも書き込みをしていった。
 刑訴法は、過去問で出題された範囲で既に「論点」がかなり網羅されている科目であり、出題形式も毎年かなり似ているので、過去問学習をしていれば7法の中では1番書くのに慣れやすい科目である(たとえば、甲には覚醒剤自己使用の嫌疑があり、警察官が職務質問をしたら怪しい反応をしたり逃げようとしたり…という展開はありがちなもの)。過去問学習の重要性が特に高い科目といえる。
 判例知識も重要であり、私は百選スピード攻略講座を用いたが、基本刑訴Ⅱでも判例知識を学べるので(刑法・刑訴法・行政法(憲法もあるが読んだことはない)の基本シリーズは判例学習を重視して設問を作っている)、百選講座が必須とまではいえない。もっとも、講座は役に立った。
 ロースクールではケースブック刑事訴訟法を用いており、そこでも判例を学習できる。ケースブックのquestionにいちいち取り組んでいる時間はないが、授業で扱った判例・裁判例は意外と頭に残っているもので、本番で役に立つ可能性がある。もっとも、上記の通りケースブック以外でも判例学習は可能であるので司法試験に必須とまではいえない(そもそも先輩ノートがないと使えない)。


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