見出し画像

海辺での気づき

私はある夏の日、北陸の小さな漁村を訪れました。そこは観光地化されていない素朴な場所で、白い砂浜と透き通った青い海が広がっていました。朝早く、まだ空が淡いピンク色に染まる時間、浜辺を歩いていると、小さなカニが砂の中から顔を出していました。その光景に、私はふと、自然が見せる些細な奇跡に心を奪われました。この村では、漁業が主な生業であり、人々の生活は海と深く結びついています。私は地元の漁師さんに話を伺う機会がありました。「海は優しい顔も見せるけど、時には厳しい表情をする。それでも私たちは海と共に生きていくんだよ。」という言葉が、深く胸に響きました。漁師さんが教えてくれたのは、魚を捕る技術だけではありませんでした。彼は、自然に対する敬意や感謝の気持ちを大切にしていました。たとえば、海が荒れている日は漁を控え、次の日の恵みを待つ。そして、取れた魚は無駄なく使う。この考え方に触れた私は、自分がどれだけ自然からの恵みに無自覚だったかを痛感しました。漁の手伝いをさせてもらった日、初めて体験する魚網の引き上げ作業は、想像以上に大変でした。でも、海から引き上げられた新鮮な魚を見た瞬間、その苦労が喜びに変わりました。その魚で作られた昼食は、言葉では言い尽くせないほどの美味しさでした。特に、塩焼きにされた魚は、シンプルながら素材の味を最大限に引き出していて、地元の人々の知恵が詰まっているようでした。旅を通じて、私は海が持つ多面性を再認識しました。美しい景色だけでなく、そこに生きる人々の知恵や文化、自然への感謝の心が交差する場所。それが海なのだと感じました。帰り際、漁師さんからもらった一言があります。「また来いよ、海は毎日違う顔を見せてくれるからな。」その言葉に心が温かくなり、また新しい海を訪れたくなる気持ちが芽生えました。自然と共に生きること、それは人間にとって大切なテーマです。私はこれからも、そんな海辺の物語を探し続けていきたいと思います。

いいなと思ったら応援しよう!