「質問力」マニアがデザイナーの本を読んだらいろいろ繋がった話②
nendo代表の佐藤オオキさんが書かれた「問題解決ラボ」を読んで、過去に読んだ、good design company 代表水野学著「「売る」から「売れる」へ。水野学のブランディングデザイン講義」、山口周「世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?」も加えた3冊の共通点をまとめたメモの続き。
前回はこちら
今回のポイント
✔︎ 「優れた意思決定」にもデザイナーの思考は役立つ
✔︎ デザイナーの仕事とは?
✔︎ デザイナーの考え方を身につけるには?
1、「優れた意思決定」にもデザイナーの思考が役立つ
前回、山口さんが「経営」と「デザイン」とは「選択と捨象」という点で本質的に共通性があると述べていることを紹介しました。
山口さんはさらに一歩進んで、この「選択と捨象」が「優れた意思決定」につながるとしています。
多くの人は「優れた意思決定」というのは「優れた案を選択すること」だと考えています。しかし、実際にはむしろ逆です。つまり、「優れた意思決定」の本質というのは、「選択すること」にあるのではなく、「捨てること」、すなわち「一見すればどれも優れているように見えるたくさんの案を、まとめて思い切って捨てる」ことにこそあるのです。この「思い切って捨てる」点はまた、デザインやクリエイティブにおいても、本質的な重要性を持っています。
として、スティーブ・ジョブズの発言を引用しています。
なにをしないのかを決めるのは、なにをするのかを決めるのと同じくらい大事だ。会社についてもそうだし、製品についてもそうだ。
この「優れた意思決定」のために「捨てること」が重要であることは、佐藤さんも以下のような形で仰っています。
決断するためには、選択肢の中から「絞り込む」スキルがとても重要です。正解を見つけるのは難しいけど、不正解は比較的、簡単に見つかるからです。
(中略)
必ず正解を出す決断力を身につけることはできませんが、選択肢を2つに絞り込むことは、スキルであり、鍛えることができます。2を1にする絶対的な方法がないからこそ、勝負どころリスクをきちんと取るために2つに絞り込む、というのが大事なのです。
「捨てる」という言葉はありませんが、決断するために「絞り込む」ことが重要ということで、2つになるまで選択肢を捨てていくわけです。その上で決断する。山口さんの仰っていることのより具体的な手法の一つ、という感じでしょうか。
まとめ
☑️ 「優れた意思決定」のためには選択肢を思い切って「捨てる」「絞り込む」ことを行った上で「決断」する
2、現代の経営に求められる「デザイン」を身につけられるのか?
山口さんの本での定義は、まず経営における「真・善・美」の3つの判断について、
これまで
「真」=「論理」、「善」=「法律」、「美」=「市場調査」といった「客観的な外部のモノサシ」
これから
「真」=「直感」、「善」=「倫理・道徳」、「美」=「審美感性」という「主観的な内部のモノサシ」への比重の転換が図られる
それら「直感」、「倫理・道徳」、「審美感性」を身につけるためには、絵画を見る、哲学に親しむ、文学を読む、詩を読む、を挙げていて、それぞれについてどのような観点で学ぶかを書かれています。
ご興味があればぜひ本を読んでいただくとして、ここでは、書面の都合もありますので省かせていただきます。
やはり「美意識」を身につけるのは大変だなぁ、と思われたかもしれません。
が、デザイナーでいらっしゃる佐藤さん、大野さんは謙遜も含めてかもしれませんが、デザイナーでなくとも、すぐできることも含まれているよ、というありがたいお話をしてくれています。
佐藤さんの本では、まず、デザイナーに求められる価値を定義しています。
1つ目は、ものごとを整理すること。言い換えると、シンプルにすることです。これだけでも会社や商品開発にとっては大きい価値を生み出します。
2つ目は、人に伝える、伝わるコミュニケーション。同じものであっても、しゃべり方によってわかりやすくなったり、つまらなくなったりします。(中略)
3つ目が、ブレークスルー、ひらめきです。ひらめきとは飛躍させること。ものごとを何段跳びにも飛躍させてしまうような要素になります。
その上で、1つ目の「整理」と2つ目の「伝達」に関してはデザイナーじゃなくても身につく、として、
デザインが持つ3つの役割を意識して課題に取り組むだけで今までとは違う解決策が見えてくるはずです。
と応援(ではないかもしれませんが)してくれています。
水野さんの本では、まず、「センス」について定義しています。
「センスとは、集積した知識をもとに最適化する能力である」
その上で、センスを向上させる3つの方法「王道、定番を知る」「流行を見つける」「共通点を見つける」をかなり紙面を割いて、具体例も添えて説明してくれています。
そして、
どうですか?ひらめきとか、才能とかで、勝負していないでしょう?
ときどき、「説明できないけど、これはいいデザインなんです」なんていうデザイナーがいますが、ぼくにいわせればそれはウソです。
センスが知識の集積をもとにしている以上、説明できないデザインはありません。きちんと課題を解決できるクリエイティブなら、どんなものでも説明できるはずです。
だからみなさんも、センスがないとか、デザインがわからないとか妙なコンプレックスを抱く必要はないんですよ。
と応援(これも違うかもしれませんが)してくれています。
まとめ
☑️ 美意識を鍛えるには、やはり近道はない。
☑️ デザイナーに求める価値は、「整理」「伝達」「ひらめき」。「ひらめき」以外は身に付けられるし、それを意識するだけでも効果がある
☑️ センスは「集積した知識をもとに最適化する能力」なので、向上させることができる。
3、まとめ
いかがでしたでしょうか?
前回ご紹介したように、経営の世界でもデザインは重要度を増しています。
しかも、前回ご紹介した通り、「経営」と「デザイン」は「エッセンスをすくいとって後は後は切り捨てる」という本質的な共通性は
☑️ 選択肢を思い切って「捨てる」「絞り込む」ことを行った上で「決断」する
という、「優れた意思決定」の手法にも通じるものである。
そうした能力の背景となる「美意識」を身につけるには、
☑️ 美意識を鍛えるには、やはり近道はない。
その一方、
☑️ デザイナーに求める価値は、「整理」「伝達」「ひらめき」。
「ひらめき」以外は身に付けられるし、それを意識するだけでも効果がある。
☑️ センスは「集積した知識をもとに最適化する能力」なので、向上させることができる。
のであり、すぐにでも取り入れることが可能な部分もある。
ということでした。
「質問力」マニアからずれた内容も含まれましたが、非常に勉強になりました。
よく、右脳、左脳をうまく使って、というような話がありますが、まさにその通りですね。
今後しっかり意識して、加えて少しずつ「美意識」身につけるための勉強もしていきたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
お役に立つことがあれば嬉しいです。
なお、「質問力」マニア、ということで以下のような投稿もありますのでよろしければぜひ。