見出し画像

#487 やはり圧巻のアーティゾン美術館

先週アーティゾン美術館に行って来ました。やはり圧巻、だったので、メモ。


1、「やはり圧巻」

アーティゾン美術館は5月14日まで以下の3つ(!?)の企画展を行なっています。気になっていたのですが、例によってぎりぎりとなりました…

アーティゾン美術館 HP

どれも個人的には興味深かったのですが、何しろ盛りだくさんすぎますのでその中でも「さすがアーティゾン美術館」と私が思った展示をいくつかメモしてみます。

2、「アートを楽しむ 見る、感じる、学ぶ」

まず一つ目の「圧巻」は本企画展のために用意された「ご自由にお取りください」の資料の充実度!通常、A4カラー1枚裏表のチラシと、A3二つ折りの作品リスト、ぐらいかと思います。

ところが、「アートを楽しむ」に関しては、ホチキス留めされた8ページものフルカラーの冊子が2種類、と12ページものが1種類、の計3種類も用意されているのです。

アーティゾン美術館 3種類の冊子(無料)

これまでいろいろな美術館見てきましたが、こんなのは初めてです。他の美術館からしたら予算の関係でやりたくても絶対できないだろうな、という「圧巻」です。

展示内容ですが、大きく以下の3つのセクションに分かれておりました(そのセクションごとに先ほどの冊子が用意されています)。

セクション1   肖像画のひとコマ
セクション2   風景画への旅
セクション3   印象派の世界を体感する

セクション1では、実際のアトリエを模したスペースがあったり、セクション2では以前ご紹介したクロード・モネの作品が並んでいたり、といろいろあったのですが、ここではセクション3から、ピアノを描いた絵を集めた展示から2つ目の「圧巻」をご紹介します。

カイユボットの《ピアノを弾く若い男》やルノワールの《ピアノを弾く女》などが展示されているのですが、そこに本物のピアノが展示されていました(写真を撮り損ねまして、例の冊子からとなります)。

ギュスターヴ・カイユボット《ピアノを弾く若い男》1876年
エラール社 グランドピアノ 1877年

この絵も(ルノワールの方はシカゴ美術館のものですが)ピアノも、アーティゾン美術館の収蔵品です。ピアノですよ!写真ではなく現物!こんなものまで(失礼)収蔵しているとは…。
おそらくですが、解説を読むと、カイユボットの絵が描かれた当時のフランスにおいてエラールという言葉自体がピアノを示すこともあったほど、とのことですから、収蔵している絵の資料として収蔵したのではないでしょうか?「圧巻」です。


3、「石橋財団コレクション選」

3つ目の「圧巻」は「石橋財団コレクション選」からのご紹介です。
キュビスムを代表するピカソとブラックの静物画をしれっと並べるあたりもコレクションの厚みを象徴する展示で十分すごいです(写真が見切れてしまっていますがご容赦ください…)。

左から ジョルジュ・ブラック《梨と桃》1924年、パブロ・ピカソ《カップとスプーン》1922年、パブロ・ピカソ《茄子》1946年


ここでの「圧巻」はフランス留学経験もある大正昭和の時期に活躍した洋画家、安井曾太郎《林檎》に関連した展示です。

安井曾太郎《林檎》1942年


何かと言いますと、この絵に書かれている器も所蔵していて展示されていたのです。確かに模様が一緒です。

しかも、箱付き。中の新聞紙は当時のままで、しかも、新聞紙だけでなく古手紙(?)も入っていた、ということで併せて展示されていました。


4、まとめ(所感)

いかがでしたでしょうか?

アーティゾン美術館に伺って「圧巻」と思ったものを3つメモしてみました。

美術館には収集方針が決められているのが普通ですが、いくら作品に関係する資料だとしても収蔵庫や予算などの制約からピアノなどの大きなものはなかなか難しいのが現状でしょう。

一方で、美術館の展示以外の機能の一つとして、研究があります。そのためには収蔵品に関連する資料も集めることができれば、より深みのある、新たな発見につながるような研究成果につながるかもしれません。

ブリヂストン美術館時代からの蓄積が「圧巻」で、それが研究や展示の質に繋がっていることが今回の展示からは伺えます(個人の感想です)。

これだけの質を伴う展示を同時に3つ企画し続けるのはなかなか大変かと思いますが、今回の展示を見ていて、その質は今後も維持されると大いに期待してしまいました。

最後までお読みいただきありがとうございました。多くの美術館レビューとはちょっと違った切り口かもしれませんが、どこか参考になるところがあれば嬉しいです。

アーティゾン美術館については以前以下の投稿もしておりますのでご参考まで。


いいなと思ったら応援しよう!