2:近藤の見た雨。
雨が逃げない。鈍色の空から降り落ちる水滴たちは、ただひたすらに大地を叩き、震えながらその場に留まるようにして、どこへも行くことなく積み重なっていく。逃げ場を失った雨は、まるで何かの罰を受けているかのように、無言のまま地面に吸い込まれ、泥の中に沈殿する。その音は、遠くから聞こえる鼓動のように弱々しく、しかし確実に耳を打つ。
そして、その雨に打たれる庭の樹木たちは、まるで朽ち果てた者たちが立ち尽くすかのごとく、静寂の中に立ち続けている。滴が葉を伝い、細い枝を滑り、最終的には泥濘の上に滴り落ちる。まるで葉と枝が己の存在を確認するかのように、その動きには一種のしなやかな哀愁が漂う。
だが、そこには生命の喜びはない。濡れそぼる葉と、打ちつけられる大地との間には、ただ無機質な関係が横たわっている。人々がしばしば見失う「生」とは異なる、この一時的な仮死状態――そこに満ちているのは、無常の静けさである。時折、強い風が吹き抜け、葉や枝がわずかに揺れるが、それは生きているが故の身じろぎではなく、むしろ死に顔が不意に歪むような、意図しない動きのように見える。
雨が逃げない。どこにも行けぬその重さは、まるで人の心に降り積もる憂鬱のようであり、濡れた大地と、沈黙する空の間で、永遠に続くかのように感じられた。