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あるおひめさまのおはなし
※こちらはWEBマガジン「She is」公募用に書いた小説です。テーマは「それぞれのヘルシー」。投稿は13回目。
むかしむかし、あるところにうつくしいおひめさまがいました。
ばらいろのほお、きんいろのかみ、しろいはだ。
とてもあかるく、みんなにあいされていました。
すくすくとせいちょうし、おひめさまが15さいになったとき。
おうさまがいいました。
「これからは、おうじょらしくふるまわないといけないよ」
みんながうなずきました。おきさきさまも、まわりのひとも、みんな。
おひめさまはとってもがっかりしました。
これまでいっていたとおのりも、おしのびのおさんぽも、すべてできなくなる。それがわかってしまったからです。
「でも、わたしはおうじょなのだから」
おひめさまはいっしょうけんめいせきにんをはたそうとしました。なみだはみせません。
ごうかないすにすわりながら、いろいろなひとにあい、えがおをむけ、おしゃべりをしました。
たまにあみものをし、てがみをかきました。
かいかつだったおひめさまは、じょじょにおとなしく、くちかずがすくなくなってきました。
それでもがんばる、おひめさまです。
やせてもうつくしく、わらってみんなをよろこばせます。
だから、みんなきがつきませんでした。
おひめさまのいへんを、だれも。
あるなつのひ、おひめさまはじぶんのへやでいすにすわっていました。
まどからはひかりがさしていて、あたりがかがやいています。
がかがえをかきたくなるほど、うつくしいこうけいでした。
じじょがこえをかけました。
しかしへんじはありません。
「おやすみになっているのかしら」
じじょがちかづきますが、おひめさまはぴくりともしません。
やがてじじょのかおがあおざめてきました。
おひめさまは、すでにいきをしていませんでした。
やさしくほほえんだまま。
キーンコーンカーンコーン。
国語の授業が終わり、教師は教科書を閉じた。
子供たちは、さっきまで聞いていたことなど忘れ、席を立っておしゃべりをしている。
最近、肩が凝る。腰も痛い。運動しなければなあ。
人間関係もしんどいし。
言いたいことはつい引っ込めてしまう。
でも、おひめさまと違って、わたしたちには自由がある。
どうにかなるから。
教師はそう思い、教室を後にした。
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