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倒産寸前の町工場が起死回生のヒット商品「とろ生ガトーショコラ」を開発するまで

toroa代表のイガゴーと申します。

元々東京で料理研究家と食に特化した広告制作会社をしていましたが、コロナ禍で廃業寸前になった大阪の町工場を事業承継しました。

サービスインから1年半経ち、工場を移転するタイミングで度々の苦難を振り返っています。

一番最初の商品をリリースして製造が完了するまで8ヶ月かかりました。

引き継いでから半年間は空家賃と人件費で身銭を切りながら、なんとか生み出した「とろ生ガトーショコラ」で町工場はどん底から這い上がりました。

起死回生の商品となったtoroaの「とろ生ガトーショコラ」開発秘話を紹介します。


チョコレートの重要性

最初のとろ生ガトーショコラはスーパーで手に入る食材で作りました。

チョコレートは明治のチョコでしたね。

とろ生ガトーショコラを最初のプロダクトに決めて、家庭用オーブンで焼き時間と配合を詰めていました。

「おいしい」とメンバーの気持ちが飛び跳ねるようなレシピが完成したタイミングで、工場生産を考え出してチョコレートの選定に入りました。

最初はヴァローナ社のチョコレートを使いました。

かなり美味しくできたのですが、当時仕事を依頼してた食品コンサルタントさんがチョコレートメーカーに勤めていた時にお世話になった上司を紹介してくれました。

ヴァローナの最初の輸入を手がけて今はチョコレート貿易会社の社長をしているすごいチョコレートの知識を持つ人で、現在はカオカの独占輸入をしていると聞きカオカを取り寄せました。

カオカのチョコレートを食べてこれはおいしい、非常にシャープにカカオの個性を感じ一発で惚れました。

後から原理を知ると、ヴァローナはバニラで香りづけしているのが特徴的でバニラはいい香りですが反面、マスキング効果が高いです。

マスキングとは「マスク」他の香りに被せるため、うまく使えば味を調和してまとめたりマイルドにする、解釈によっては個性や尖りを消します。

カオカについてはもっと語りたいことがありますが今回はここまで。。

チョコレートを変えた途端にとろ生ガトーショコラは素晴らしい仕上がりになりました。


発酵バターでつくる

乳酸菌で発酵させることで、濃厚なのに軽やかな清涼感とわずかな酸味がのった北海道産の発酵バターを取り寄せてtoroaに使ったところ、素晴らしい味わいになりました。

とろ生ガトーショコラには高品質のチョコレートとバターがふんだんに使われています。

他のブランドと何が違うって高価ながら超高品質な原料の密度です。

身もふたもない話ですが、優れた原料は優れた調理技術を凌駕します。

いい原料にこだわる素晴らしい料理人ほど共感してくれると思うのですが、技術など優れた原料に及ばない。

バターやショコラよりも原価の低い卵で伸ばしたりするのが一般的ですが、そうすると卵で伸びた味、オムレツのような食感が入りとろ生食感にはなりません。

toroaは工場の取得費用が安く居抜きで製造できたので、原料に思いっきりお金を使いました。

後発で小さい会社だったからこそ振り切れたと思います。

食べてみていただくとわかるのですが、濃厚なのにベタっとしないで清涼感を感じます。その理由がふんだんに使った発酵バターなのです。


ブレンドするとうまい


私は大学生の頃から料理研究家を始めて13年、全国津々浦々にいるヘンタイ生産者を繋いでいただき飲んだり仕事してました。

ある日、ピンク色の頭をした怪しげな男から、きみどり色のランボールギーニに乗せられ千葉県の君津の石川商店という米屋さんに連行された時に、お米屋のヘンタイと出会ってしまった。

石川さんは全国の素晴らしい米農家さんと出会い、泊まって酒酌み交わし、要望通りの米の育て方をしてもらっている人でした。毎年収穫の時期になると全国にいる米農家さんの家に泊まって酒を飲むとw

その特急の米はシングルモルトのように個性的でおいしいのですが、石川さんのすごいところはブレンドすることでした。

米はブレンドしたほうがうまい、と石川さんは言いました。なるほどなーと思ってその時は。


またとあるグラノーラを開発していた時に、私が尊敬してやまないこだわり食品を販売する商店の娘さんから糖の商社をしている浅井さんを繋いでいただきました。

糖ってのはグラニュー糖、蜂蜜、水飴、諸々ありますが浅井さんからは3種類以上の糖を合わせると深みが出る、と聞きました。

それ以降は商品開発にこの原理を応用しているんです。

塩が突き詰めるとナトリウムであるように、結果香りが違っても同じなのでは、と考えていた私ですが、体験すると確かに重ねるとおいしい。

以降色々な気づきから私も、コーヒーやワインや日本酒ですらブレンドしたほうがうまいと考えてます。

話戻すと、チョコレートをブレンドするアイデアは料理家という変わった立場から食に関わるヘンタイと友達になる機会が多々あり、遊んでるうちに作られていった背景から生まれました。

実は最初のヴァローナでの試作もブレンドしてました。明治のTheチョコレートで作ってた時もブレンドしてました。当然カオカでもブレンドしてます。


着地点の人の顔を思い浮かべた

とろ生ガトーショコラの味の着地点をイメージするときに浮かべてるのは人の顔でした。

当時から面識があったショコラコーディネーターの市川歩美さん、スイーツジャーナリストの平岩理緒さん、スイーツライターのchicoさんの3名の顔を思い浮かべながら、チョコやスイーツをかなり食べてきた人がおいしいと感じていただけるラインと、マジョリティなユーザーを思い浮かべていました。

ここが着地の幅が結構難しいのです。

スイーツに食べ慣れている人はベタ甘いスイーツをあまり好まないと私は思っています。一方で玄人好みに寄りすぎると、マジョリティなユーザーを置き去りにしてしまう。

何度も試作検証して、絶妙なラインに着地できました。

自分の感覚と誰かの感覚を何度も行き来しながら、あとはtoroaはディレクターのゆかりがど真ん中なユーザーなので私の意見よりも1.5倍増にゆかりの判断を聞いて決めました。


焦がしキャラメルクリームソースのこだわり

とろ生ガトーショコラを作ると決めてから、ゆかりの中には「焦がしキャラメルソース」を混ぜてとろっとさせる構想がありました。

身内で言うのもなんですが、当時にあの発想はマジで天才だと思います。

Twitterで鍛えている背徳なおいしさを作るセンスが飛び抜けてます。

焦がし具合には、もうなくなってしまったレジェンドビストロ、恵比寿のt.rさんの小熊シェフが作るキャラメルアイス、あの香ばしくて奥深い、パーンとインパクトの走る魅惑的なキャラメルが作りたかった。

鎌倉のクレープとガレットのお店、アルモリックのキャラメルアイスも近い系統なので大人なキャラメル好きな方はそこなら食べられます。

焦がし具合はディスカッションしながら、糖度計や美容院で髪の毛染める時に使うカラーチャートとg数規定して綿密に再現できるようにしましたね。

いつも試作する時糖度計除いて数値メモして…(アレまじでめんどくさかった笑)


焼き時間は比較テストしまくる

焼きのテストは鬼のように繰り返しました。

最初は家庭用オーブンで明治のチョコで作った時から、何度も、何度も、検証して見出して。レシピが変わるとまた検証し直して。

よく観察して見た目の見極めサインを見つけて。

一番きつかったのはこの工程でしたね、工場で使ってたオーブンが1980年台製の工場創設時からいる神セブンみたいなガスオーブンなんですけど、これが本当に大変でした。

家庭用オーブンの試作と全然違うのと、工場で製造することを前提にしているのでフルマックスで何本天板に乗せられるのか検証しないといけません。

結論は1度に焼ける量は5本でした笑

少なすぎるよーーーーー!!!って。

今思い出すと笑っちゃうくらいスモールスタートで、それでも毎日必死に頑張ってたな。

辛いのは工場試作は失敗品が大量に出てしまうことでした。

妥協はできない。でもこの失敗品を配ることもできない。こういうものだと思われてしまうと一度ついたイメージを払拭することが難しくなるので、胸を痛めました。

売上ゼロで家賃も人件費も垂れ流しだったので、経営をみる立場としては焦れるし厳しい境遇ですよね。


「当たり前においしいものが生まれてくる工場」に作り替える

これが

こうも劇的に。

前記事で書いたので詳しくはリンクを貼るのですが、工場が古くてボロくて無駄なものが多すぎたので、綺麗さっぱり断捨離してから全面リフォームしました。

トイレも洋式で綺麗に使えるようにして、広くスペースをとるようにしました。

ルールやマニュアルを整備して、これだけやってればおいしいものが出来上がるのは当たり前だよね、と思える設備配置にしました。

環境づくりが大事だと思います。


困ったのは東京ー大阪間のリモート試作

一番大変だったのが洋菓子経験がなく、PCなどデジタルにも疎い70歳の料理人廣瀬さんが工場ワンオペで私とやりとりしながら工場試作を進めてた時ですね。

発売までにメディア関係の方には商品を先に食べていただいたり、Twitterのフォロワーさんにも先行で食べていただく機会を作りたかったので、リリースよりも前に商品がないといけないのですが、なかなか焼き時間やオペレーションが完成しなくて本当にバタバタでした。

70歳にして初めてMacを触る廣瀬さんにテレビ電話を覚えていただいたり、変更したマニュアルをGoogleドライブで同期したものを共有したり、同梱物に印刷するためのクラウドストレージの使い方を教えたり、リモートなので難易度が跳ね上がりました。

商品開発はレシピだけでなく、パッケージや、同梱物や、宅配袋などあるのでこれも3ヶ月とかかかりましたね。

同時進行でやるのは白目をむくほどしんどすぎたのを覚えています。


以上が振り返るととろ生ガトーショコラの開発裏側です。

半年たち、makuakeでたくさんのお客様に応援購入していただき今は会員様が16,000名、LINEは17,000名とたくさんの方にご縁をいただけるブランドになりました。

倒産寸前だった工場が1年半でここまでになれたのも、妥協を許さなかった商品開発秘話にも垣間見えるような気がしています。



と、ここまで読んでいただいたあなたにぜひ食べて欲しいものが!

とろ生ガトーショコラ✖️モンブラン「とろ生モンブランガトーショコラ」

とろ生モンブランガトーショコラ


これ本当にうますぎ。
とろ生モンブランガトーショコラは、チョコケーキでは超えられないレベルをモンブランと合わせたことで軽く越えました。 中盤のラズベリーソースとホイップがチョコと栗の調和とアクセントの役割で絶妙。 本当に食べてほしいです。


これも試作に試作を重ねました。
いやー大変だったな・・・という話はまたの機会に。笑

新商品開発の様子や大変だったところなんかもこれからはお伝えできたらなと思います!

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