町工場の事業承継から2年…toroaの軌跡とこれから
toroaのフードクリエイティブファクトリー(FCF)代表のイガゴーです。
toroaは事業承継から2年、マクアケのクラウドファンディングで初めてお披露目をしてから1年半が経ちます。
マクアケその後に、toroaがどうなったかご紹介する機会がなかったので今回はこれまでのtoroaでお世話になっているお客様、フォロワーさん、toroaファンの大事な人たちに向けて軌跡を伝えたいと思いました。
まず一言でいうと、白目をむくほど必死こいてます笑
(白目の剥き方を忘れてしまい、なんか新しいキモさが生まれました)
一つのブランドを立ち上げて育てることの苦労と苦悩と冒険のような日々をダイジェストでご紹介します。
我を忘れるほど働いた日々からtoroaは生まれる
元はFCFって食品メーカー専門の広告会社で、私イガゴーとゆかりを中心にクリエイティブ企画・ディレクションする会社でした。
我を忘れるほど忙しく働き、日テレOha4でレギュラーコーナーをもってた時は23時まで広告撮影して0時に撤収、会社で寝て深夜1:30にタクシーに乗って日テレに入って4:30から生放送で料理する。
こんな生活してたら何んもしてないのに日テレのトイレで嘔吐したんですが、あん時はヤバイと思いました。
がむしゃらに働いてた時の記憶がなくて、それがtoroaという極上スイーツを通してくつろぎの時間をギフトするサービスの原体験になってます。
担い手不足、コロナ破綻寸前の町工場を事業承継
北海道の工場ととろ生ガトーショコラを開発していたところで、堺の町工場の事業承継の話をいただき、すぐに飛びました。
工場経営者の廣瀬さんは70歳と高齢で、ご夫婦二人でなんとか工場を切り盛りしてました。
継手はおらず、コロナ禍で取引先が閉業している状態、事業をたたむにもスケルトンにして返さなければいけないので数百万円は現金が必要です。日本にはこんなに担い手不足で止めることさえできない中小企業がたくさんあると聞きました。
私たちで工場を継ぎます、とお返事して廣瀬さんの要望で継続雇用することになりました。意気投合したあのドラマチックな瞬間は漫画より漫画的でした。
引き継ぐにあたり、今の人に価値あるサービスを提供して進化を続けることを誓いました。「堺から世界へ羽ばたくブランドをつくろう」と大風呂敷広げて決意表明しました。
その後大阪と東京で密にやりとりをしながら「とろ生ガトーショコラ」の開発は進みました。
Makuakeの大盛況、その後の絶望
12月にお披露目したクラウドファンディングでは、1494名に応援購入していただけました。
怖くて心配で、ゆかりと二人で前日深夜まで文章や写真を修正してました。
始まった時は超ドキドキで、本当は10:00ピッタリにリリースボタンを押さないといけないんですけど知らず、twitterで買えない、とお客様から連絡を受けて慌てて気がつき7分遅れに。
1年半経つけどあんなに緊張した7分間は最近思い出せないですね笑
初日で用意していたリターンが売り切れてしまい、慌てて運営に連絡して翌月分を追加、結局2月、3月、4月分が売り切れて嬉しかったな。
喜びも束の間、週末を跨いで廣瀬さんに報告すると衝撃の告白が…。
発売直後に廣瀬さんドクターストップ
心臓が元々悪かったらしく、心筋梗塞のような病気で廣瀬さんは医者から仕事を止められてしまいました。
工場は廣瀬さん一人しかいない、廣瀬さんだけを頼りにしていたので製造する準備が整ってません。
段階を追って廣瀬さんから手離れして、工場の経営を独り立ちすることを考えていましたがそうも言ってられない。すぐに求人募集して、大阪へ行って面接。
決まった人が前日に辞退するという事件にも打ちひしがれました。私も前泊で大阪に入ってたので、しばらく虚無。すぐに面接を再開して1日5名面接してその日に採用を決めて東京に帰るという壮絶な時間軸で働いてました。なにこれしんどすぎる笑
廣瀬さんが一つ一つ手作りすることを伝えていたMakuakeで既に購入していただいていた方々には事情を伝えてキャンセルに料金がかからないことを伝えました。当時、暖かいコメントをいただいた方々のメッセージに胸が震えました。
新体制、公式ECリリース
新体制、2名の製造スタッフで当時製造できる量は1日40本22営業日8時間稼働が限界。
Makeshopというカートシステムの操作に慣れず発送が漏れたり重複して送ってしまって早々に出荷遅れをしてしまいました。毎日が戦いでした。
改善を繰り返して、同じミスを繰り返さないように…すると別のミスが…それを改善して…を繰り返して今があります。
公式ECサイトも2月にオープンしたのですが、前日になって全然途中の状態だったので私とゆかりでほぼ徹夜で直しました。
それでも紙袋が選択できないとかシステムの不備がわんさかtwitterでユーザーさんから報告され急いで直してを繰り返し精魂尽き果てる日々。
とろ生チーズケーキ誕生と広報メンバーの加入
toroaの看板となっている「とろ生チーズケーキ」がリリースされました。
とびきりおいしいチーズケーキをお客様に贈りたい、そこからあらゆるチーズケーキを食してtoroa独自のチーズケーキ開発を決めました。
乳原料は北海道産。2種のチーズをブレンドして心地よい酸味と濃厚なミルクのコクを出しますが世界中の大量のクリームチーズを取り寄せて試食しました。あんなにチーズ食べることは一生ないなぁ笑
アメリカ、オーストラリアは安いけど牧草臭が強すぎてスイーツを邪魔する。
ニュージーランドはオーストラリアの次に安いけど、牧草強い。
北海道産と競り合ったのはフランス、味はしっかりしてて使えるけどtoroaで厳選したチーズと比べると繊細さとミルクのフレッシュな芳香で北海道産2種に軍配。
素材の特徴を掴む上ではとても勉強になりました。
酸味をレモンだけに頼らないってところもポイントで、サワークリームを大量に入れるとめちゃめちゃ濃厚なのに酸味のキレが絶妙な仕上がりになります。こういう繊細な気づきはゆかりと忌憚なく散歩しながら、キッチンで、あらゆるシーンで議論して深めてます。
自家製焦がしキャラメルクリームを入れると全体に香ばしく焼いた風味が伝わります。バスクチーズケーキって表面を香ばしく焼きますがあんな感じの風味が全体に行き渡る。どうしても焼きであの香りをつけると火を入れすぎて口当たりが悪くなってしまうのでとろ生ながらも香ばしく仕上げるためのアイデアで、とろ生ガトーショコラに使うtoroaのアイデンティティでもあります。あれはよかったなぁ。
広報メンバーが加わったことで、お客様に喜んでいただける会員限定の企画や、アウトレット規格の商品化、お客さまへの細やかな対応や間違ってしまったことの謝罪と改善など手分けして実現できるようになりました。
期間限定の湘南ゴールド&モンブランへの挑戦
とろ生チーズケーキジューシー湘南ゴールド、とろ生モンブランガトーショコラという期間限定の商品開発にも挑戦しました。
チーズケーキ、ガトーショコラも進歩がなければ飽きられてしまいます。
一度はtoroaを食べていただいた方に「美味しすぎて驚かれるような」期間限定商品を作りたいと考えて企画しました。
湘南ゴールドっていう超うまい新しい柑橘と出会ったのでチーズケーキにしたらオリジナル越えられる美味しさができたので企画しました。
難しかったのはジューシーにするほど分離しやすくなること。何度も何度も配合を変えて研究しましたが最終的には驚く方法で解決されました。型を変えたことです。最後まで問いを諦めない執念みたいなものがtoroaの根底にある想いの強さなんだだと思います。
モンブランはとろ生ガトーショコラの上にホイップクリーム、ラズベリーソース、モンブランクリームを絞るtoroa初の複合ケーキ。
これがとんでもなく異次元の美味しさレベルなのですが、とにかく作る工程が多い。でも値段をそこまで上げることはしたくないので、めちゃくちゃ悩みました。
モンブラン絞りは製菓経験のない工場メンバーには試練でした。外部からパティシエを招致して絞り方を講習していただき、徹底練習。最初からできる人なんていない、でも練習すれば誰でもできるようになる技術です。
困難に臨んだ時は自分達が進化するしかない、困難は承知の上で挑戦してきたことがよかったのかなと思ってます。
催事への挑戦
もっと多くの人にとろける時間を届けたい、という思いから駅ナカや百貨店への出店に挑戦しました。
挑戦してみると…催事とECは別次元でした。
催事向けに企画した商品がトロバタです。
お手土産、お配り用に持っていけるクッキーバターサンドを作りたいと考えました。クッキーバターサンドをひたすらに集めて食べて、toroaのブランドならでは発信する形を考え抜きました。
焦がしキャラメル、たっぷりクリーム、発酵バターたっぷり
甘味の中に絶妙な酸味と苦味を入れるなどtoroaならではの商品開発の考え方で、機械絞りではできない量のクリームを挟めた時に最高に美味しくなりました。改良には終わりはないと思っていて、今もクッキー部分を改良中です。
催事を始めてみると、構造上の問題に直面します。
toroaが出店する期間は1-2週間で、人材派遣会社に運営を委託する必要があります。派遣会社では単発スタッフをアテンドします。お客様からは店員の態度が悪いとお叱りを受けることがあり、toroaが好きでtoroaスタッフになっている訳ではないのでどうしても不一致になってしまうのです。
これに関してはまだ解決できていません。今、スーパーバイザーとなる店舗責任者をtoroaで採用活動を始めるところです。
12月、製造が崩壊
製造が慣れないうちは数量を絞って販売していましたが、それでは工夫と進化が起きないことを予知して数量を増やしていきました。
10月、11月から受注数が増え、発送間違えが増え、それにより遅延が発生し、お詫びして正式なお品を送るという悪い循環が発生していました。
12月クリスマス本番を前にtoroaの製造発送は崩壊してこのままではクリスマスを前にお客様にご迷惑をかけてしまい、もう買わない、とがっかり経験を残してしまう。苦渋の決断で12月13日に受注を停止する判断を取りました。
改善待ったなしの状況︎+ここまで支えてくれたスタッフの退職でもうだめか...と思っていたら、偶然東京採用の新入社員が大阪工場近くの実家に里帰りしていて、新体制を作るまでなんとか2ヶ月持ちこたえてもらい、九死に一生を得ました。あの頃の大きな揺れは過去に経験したことがなかったです。
2名から20名へ新体制
2名の少人数で生産していたtoroaは▲の事件を機に学び、半年で20名まで増員しました。
メンバーが増えたので工場の営業日を増やすことができ、交代制をとれることで一日の稼働量を増やすことができました。
最初40本/日だった製造量も300本/日になりました。
キャパを増やすたびに受注数も増えて、いつも在庫がギリギリで死にそうなんですが、日々改善して頑張ってます。
1月に新体制を始めて、2月バレンタインでは発送ミスが続いてしまいましたが、3月ホワイトデーには過去最高の受注数を発送ミス0で挽回できました。
4月から主任は名門銘菓のマネージャーがついていて頼もしい限りです。
ものづくり補助金で機械を買う
元々toroaが事業承継した工場は全ての工程を手作業でやってた工場だったので、時代についていけなくなってしまいました。
先代から受け継いだ事業を残していくために、経産省のものづくり補助金を活用した機械化にチャレンジしました。
これで増えた受注数に対応できると思ったのも束の間…
今度は工場の物件に限界がきてしまいました。スペースと電力不足です。
今の受注量ではスペースが限界を超えていて、さらに購入した機械を動かすとブレーカーが飛びます。ショックすぎる…
隣駅へ引っ越し
今toroaでは製造工場を移転するチャレンジをしています。
当初に工務店、電機屋、各所に見積もっていた工事費用を大きく超えてしまいましたがもう引き返すことはできないので、経営的には現預金が大きく減ってしまいtoroaは今が一番正念場になっています。
正直言ってこれまでのピンチがかわいいくらい重要度の高いピンチです。
でもこれまで乗り越えてきたピンチの総量は計り知れないほど、必ず乗り越えられると信じています。
新工場でもっとチャレンジングなtoroaのアイテムを開発したいなと思います。
これまでの2年を総括して
本当にたくさんのことがあって、長く密な時間でした。
我を忘れて働いていた時代の私との違いは「忙しい合間にも自分を楽しませる工夫と習慣があること」です。
合間にtoroaTeaとtoroaのスイーツを食べて癒されることも、散歩に行くこと、マインドフルネスをすること、自分に休息やご褒美をあげること…
メンバーは増え、責任はどんどん大きくなるけど、責任に押し潰されない軽やかさと柔らかさが備わっていて、これまで山ほどチャレンジして失敗しながらここまで持ってこれた経験があるから暗黒面(ダークサイド)に墜ちない自信はあります。ダースベイダーにはならない笑
今のメンバーとお客様と「新しい夢」に向かって
toroaという街をつくる構想をして、一段一段レンガで土台を作ってビルドしていると、夢が増えてきます。
大人になっても夢を持ち続けるって素敵な習慣だなと思うのと、みんなで見る夢はみんなでワクワクできます。
toroaがメンバーとお客様と一緒にみたい夢は…
・toroaの路面店舗、スイーツとお茶のティーサロンをつくる
・東京駅、羽田空港にtoroaの常設スペースをつくる
・toroaでつくるレストランでミシュランの星を獲得する
・フランスにtoroaの店舗をつくって盛況にする
・2026年都内から車で2時間の場所に「toroaくつろぎの森」宿泊型のグルメビオトープをつくる。川を作り、木を植えて森を作り、キャンプ場と宿泊設備とミシュランで星を取ったチームが本気でつくるバー、カフェ、レストランをつくって地域おこしする
面白くないですか?
toroaを創造することで町をつくっていくアドベンチャーです。
これから決まっていること
実は…リリース1年半にも関わらずあの有名な某チョコレートイベントに出場できることが決まりました。
本当に嬉しかったです。そこで始めて出会うお客様に喜んでいただくためにバレンタインに向けてチョコレート強化にチャレンジしてます。
日本最大級のお取り寄せ情報サイト「おとりよせネット」でtoroaのとろ生チーズケーキとtoroaTeaのなんと2商品が大賞候補にノミネートされました!
これもめっちゃめちゃ嬉しい。
toroaは昨年秋からずーっと「おとりよせネット大賞をとりたい」と宣言し努力してきました。これも本当にお客様、フォロワーさん、toroaファンの方々のお蔭様です。ありがとうございます。
お願いがあります。1番をとらせてください!
こちらのおとりよせネットさんのページで投票できます。
大賞を取って感謝祭したい〜!一緒に盛り上げていただけると嬉しいです。
話を戻すと中野区、新渡戸学園、えんげ(飲みこむこと)障害をもつお子さんと親御さんを支援するNPOmogmogengine、中野区歯科医師会と一緒にえんげ障害をもつお子さんと親御さんが同じ食事(インクルーシブフード)を食べられる「食のバリアフリー」を実現する活動の取りまとめ役をしています。
toroaの切らずにとろ生クリームチーズケーキをえんげ障害をもつお子さんがそのまま食べられた!と喜びの声をいただいたことがキッカケで、中野区長、新渡戸学園理事長に活動を紹介したら賛同していただき皆で「あまり知られていない社会の困っている人たちのことを社会に伝えよう」という流れになりました。具体的な活動はまた追って…。
toroaで社会貢献に取り組む最初の背景
私イガゴーは専修大学の経営学部でグローバル企業経営を研究する笠原先生のもとで学生時代に学び、グローバル企業の先進的なCSR活動(広い意味で社会貢献活動)に強く惹かれて卒論テーマにしました。
合理性を求める資本主義では企業活動により地球環境は悪化した歴史があり「企業が社会貢献をすることは無駄である」という前提があるのですが、その定説を覆したいという反骨心がありました。
実際にはSDGsとか今の世の中がそう向かってるのである意味証明されていますが、当時私の論文では具体的事例をもって証明することができなかったんですね。
toroaでSDGsな活動に取り組むことでもっと企業やブランドがソーシャルライクな活動することで社会もお客様も企業もwin-win-winなんだよという結果を伝えて活動を広めたいという想いがあります。
最後に一言
気づくと2年。
toroaという船をつくり出港するのに、丸太の切り出しから始めたような、そんな冒険になっていました。
ここまでこの長文記事を読んでくださってる方に本当に感謝します。
たくさんのご支援とお客様のおかげでtoroaはここまで進化してこれました。
初めは弱かった製造、発送、サイトのサービスも充実してきていい感じになってます。
工場移転が実り、次の段階に来たらサイトの構造そのものを見直してもっとストレスのないサイトにしたいと思います。
引き続き進化していくtoroaを温かく見守っていただけますと嬉しいです。
toroa代表 イガゴー
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