手技療法とブランコ

手技療法でできることは、機能障害が回復していく「きっかけ」をつくること。
それに尽きるように思います。
その後はクライアント自身の力、『回復力』や『努力』というものに委ねられます。

きっかけとは、ちょうどブランコで、後ろから背中を押すようなものでしょうか。
押された後はブランコの乗っている人が自分でこがないと、振りをキープしたりより大きくすることはできません。

そして、背中をひと押しするだけで済む場合あれば、何度か繰り返し押さなきゃいけない場合も、さらに時々押して、勢いをつけてあげる場合もあります。
もちろん、十分に乗れるから押す必要のない場合だってある。
手技療法も一回だけ受診、何度か、時々定期的にと、状況に応じて回数はいろいろです。

このようにあくまで「きっかけ」に過ぎないものですが、それが誰かにとって、生涯を左右するほど大切な意味を持つ場合も時にはある。
その時の感動というのはとても大きく、研鑽を重ねる価値があるものだと思います。

注意しなければいけないのは、ドラマチックな変化が起こると、治療家側ものぼせてしまう場合があるということ。
「自分はすごい」「この治療手技はすごい」というように。

ブランコを押している人が、自分に酔っている光景というのいうのは滑稽なものでしょう。
初恋と同じように、初めのうちはのぼせるのも人間だから仕方ないのですが、経験を積むに従い冷静さを取り戻さなければいけません。
主役はあくまでブランコに乗っている人、クライアントですから。

私たちはクライアントを支援する立場として、
はじめは背中を押し(他動運動)、
続いて背中を押しながら自分でもこげるようにしつつ(自動介助運動)
最後は自分でこげるようにしていく(自動運動)

という志向性を持って現場にのぞまなければいけないでしょう。

そして、より上手にこげるようになるためには自動介助の段階からトレーナーが、
石取りなどの競技性?が高くなればテクニカルコーチの力が必要になる。
そんなイメージで捉えています。

こんなことを書いているうちに、またブランコに乗ってみたくなりました。
子供の頃、大好きだった石取り。
今やったら上手くできるかな?

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