マーケットインでも、プロダクトアウトでもなく「Customer Problem Fit」(カスタマー・プロブレム・フィット)を追求してください!~新規事業・起業家が最初にやるべきこと
TechnoProducer株式会社 CEO / 発明塾® 塾長 の楠浦です。今日は、以下の対談記事の補足です。
全文は「「新しい課題、新しい発明で新しい ビジネスと未来を」ユニークブレインラボ 鈴木 俊介氏との対談資料を公開」で読めます。
記事にもありますが、「マーケットインか、プロダクトアウトか?」という、単純な2元論を一旦忘れていただきます。そこから入ると、たぶん多くの人は間違えます。そうではなく「顧客がものすごく困っている(困るであろう)ことを、独占的に解決する」という、発明塾が目指している「課題の独占的解決™」を軸にした「新規事業」「新製品」の企画にたどり着くための、「適切な入り口」のお話をします。
「イシュー」「課題」の質を上げることが大事~新規事業企画が混迷する「技術者あるある」「経営者あるある」
ここで「イシュー」「課題」は、一旦、「誰か実在の人が抱えている課題」だと思っておいてください。「CO2濃度が上昇して地球(?)が困っている」みたいな、バカでかい話ではなく、「隣のおじいさんが、コロナで孫に会えなくて困っている、ビデオチャットで話したいけど携帯電話の操作が分かりづらい」みたいなレベル感の課題にしておきましょう。
ここで、技術者あるあるは、簡単操作のビデオチャットや携帯電話について技術的な解決策をいくつか思いついて、「技術的にできそうか?」と考えてしまう。
経営者あるあるは、「シニア向け携帯電話の市場規模は?」とか考えてしまう。
「企業内発明塾®」「起業家向け発明塾™」で、技術者や起業家(経営者/元経営者)の方と一緒に議論していて、一番「時間がもったいないなぁ」と感じる瞬間です。順番が間違ってます。
「それって、その人達はどれぐらい困ってるの?(たいして困ってないんじゃない?)」に答えを出す
最初に考えるべきことは、それじゃないんですね。「それって、その人達はどれぐらい困ってるの?(たいして困ってないんじゃない?)」「たいして困ってないとしたら、どうやって解消されてるの?(あるいは、放置されてどうなってるの?)」のように、「課題」について深掘りすることが、最優先です。
「課題」が正しく定義できていないのに、「解決策」を考えるのは時間の無駄。同様に、「課題」が正しく定義できていないに、市場規模を考えても無駄です。「誰が」「何に」「どれぐらい」困っていて「今どうなっている」のか。これを明確にすることから始めないと、無駄が多すぎて「気持ちが悪い」です。「今、その話してどうするん?」って感じで。
カスタマー・プロブレム・フィットとは?~マーケットインでもプロダクトアウトでもない
正確には、何となく考える分には、別にどこから考え始めても良いのですが、「今から考えるぞ」というタイミングで、最初にやるべきことが、「誰がなに(それ)に困っているか」を明確にすることです。
「課題(何に困っている:課題=Problem)」と「誰(顧客=Customer)」の組み合わせが正しいか、つまり「フィット(Fit)」しているか。
「カスタマー・プロブレム・フィット」です。
ここで、敢えて「課題」を先に持ってきたのは、「こういうことで困っている人がいるのでは?」という「仮説」から始まることが、新規事業や新製品の企画では、往々にしてあるからです。その場合、その「課題」に困っている人が、本当は誰なのか、を突き止める必要がある。そういう指摘を込めて、「課題」を先に持ってきた書き方をしました。
発明塾®の教えに、「発明は課題-解決」「発明の価値は、課題で決まる」があります。その「課題」に、誰がどれぐらい困っているか、を知り尽くさずに、先には進めません。また、経験上、「課題」が明確になれば、実は解決策は「あらかた」見つかります。これは「ラスト・ワンピース(L.O.P)®」という、発明塾®独自の考え方で非常に重要なのですが、脱線するので、今回は割愛します。
「できそうか」でも「市場規模」でもなく「誰が最初に絶対買って使わざるを得ないか」を突き止める
僕がこれまで、バイクから風力発電まで、半導体から細胞培養まで、医療機器から教育コンテンツまで、農業から「がん」診断ITサービスまで、様々な分野の新規事業を立ち上げたり、立ち上げの支援をしてきて感じること。それが
「1人目が買わないものは、2人目も買わない」
です。アホかと思われたかもしれません。当り前ですから。売れるのであれば、誰か1人目がいるはずなんですね。その人は、「何の実績もない」「口コミもない」、場合によっては、まだ「できてすらいない」ものを「買う」と言って、予約したりお金払ったり、企業なら上司に稟議切ったりするわけです。そういう「とにかくこれが必要なんです」というお客さんがいるから、事業が始まる。では、それは誰なのか。それを知りたい、というのが、僕が事業を始めたり、事業を始める人を支援するときに、いつも思うことです。分野は関係ないんですね。
ちなみに僕は、川崎重工業でオートバイの新機種開発を担当していた時、「これ誰が買うの」に答えを出すために、知人が店長をやっていた大手バイクチェーンに毎週のように行って、僕がまさに開発しているバイクを「予約」しに来た人に、「なんで買うんですか?」と聞きまくっていました。入社一年目の時ですね。発売したけど全然売れないバイクの話をよく聞いてましたから、それは困るなと。「あいつの開発したバイク、全然売れんかったで」っていうのは、あとあと、めちゃくちゃ面倒くさいですからね。企画した人が悪かったとしても、売れないと結局、開発者の責任になりますし、経歴上もよろしくないですからね(笑。何より、人生の時間の無駄です。
前職のナノテクスタートアップでも、自分たちの技術の強みが活かせる製品について、「それが出来たら、絶対買う」と断言する人を特許情報をもとに見つけ出し、資金調達にこぎつけました。詳細は、以下講座で解説しています。
まとめ~「誰が」「何に」「どれほど」困っているか、を自分の眼で確認する
上で書いた、川崎重工業時代の僕の事例では、「自分の眼で」お客さんがなぜ買う(予約販売)のかを、確認していたわけです。毎週、毎週。これが分かると、「イケそうだな」になります。実際、僕が開発したバイクは、川崎重工では久しぶりの大ヒット&ロングセラーになりました🙌。
今は、800CCに、モデルチェンジしていますね。街中でちょいちょい見ます。正直非常にうれしいですね。長い人生、製造業に関わるなら、良い製品で多くのお客さんに喜んでもらえて、それをいろいろなところで目にして、楽しく生きたいところです。W650の開発は、僕の「モノづくり」「新製品開発」の原点であり、今の発明塾®の「新規事業開発」指導の原点です。
いい仕事で、お客さんに長く、広く、喜んでいただく。
そういう新規事業を、発明塾®は目指します。
楠浦 拝
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