高岡に学ぶ

 富山県は高岡で見てきた地場産業活性の、目を見張る作家や職人さんたちの芸術的とも言える活躍を紹介したい。
 (よくご存知の人たちにはごく当たり前のことだろうけど)
 (あたしが知らないだけで全国でこういうのあるのかしら)

 高岡のすごいのは、いろんな高水準の分野&技術畑の人たちが連携プレーをしているところである。
 そもそもこうした足並みの揃え方がまずむずかしいと思う。
 なので、以下のハナシは「だからみんなも高岡みたいに頑張りましょうよ!」とはとても言えないその土地の性格みたいなものもあるから、憧れるのはともかく真似は無理だなあと思った。

 今回、50以上の工房が集まってその技術を紹介する見本市(博覧会と呼んでいた)があったのを見に行った。
 鋳造、彫金、インテリア内装、さまざまな金属を扱う各業者さん、紙も布も、仏具製造や仏像製造、はては少年ジャンプ連載もしてた漫画家さんに至るまでが足並みを揃えていた。(ように見える。内情はあたしのような来場者には知る由もないが、一堂に会しているのはとにかく壮観だった)
 「ツギノテ」というイベントで、前年にトライアルで今回の半分くらいの規模でやってみて、行けそうだという事で規模を大きくしたらこれが大成功だったようだ。

 こっちは手工業や伝統工芸は素人なのでかたっぱしから面白く、逆にいろんな素材やテクニックを知っていくと今後どこかの施設に行くたびに、そこのインテリアに対する力の入れようがわかるというもの。
 陳腐な言い方だが、自分の身の回りには職人たちのアイデアと努力研鑽で埋め尽くされているのだなあ。

漆芸(しつげい)吉川さんのブースで蒔絵(まきえ)体験


 ビックリするのが、たいていこうした見本市みたいなものには関係業者さんが品定めにいらっしゃるイメージなのだが、見たところ家族連れが主。
 つまりこどもさんが興味津々だったりする。(もちろんスタンプラリーやガチャなど、胸躍る仕掛けもあるのだが)
 そもそも地元の小中学校では職人から伝統工芸の技法の指導を受けて青銅の鋳物絵や青貝塗りなどを制作し、ショッピングセンターで展示の催しをしていたりする。
 地元の伝統工芸の浸透がまたうらやましい。
 同じ建物の上の階では「工芸都市高岡2023 クラフト展」と称して全国の手工業の作品展示があった。
 

 ちょっとはなしは横道にそれるが…
 忠臣蔵マニアの私は、日本全国にある「ゆかりの地」まで旅するのが好きなのだが、各地に大小あるシャッター商店街を眺めながらご当地のみなさんとしょんぼりした話題になる事が少なくない。
 たとえばある土地では、とある中小企業の社長さんが音頭を取って、オリジナルグッズづくりを頑張った。

 印刷屋さんをはじめ地元の手工業の人たちのお尻を叩いて、観光客にお土産で買って行ってもらおうという、ほんとうに粋な企画だった。

(上記経緯についてはあたしの思い違いもあるかもだが、大筋は間違ってないと思う)
 わたしはそのグッズづくりにイラストで参加したが、結果から言うと、9年ほどがんばったそのお土産物屋さんは赤字が続いて店を閉めてしまった。
 はたの人間の私がいま振り返ると、正直いくつかの商品については突っ込みどころがあったのは事実。(<特にデザインや機能面)

 社長にもそのことを呑みながら諫言したこともある。
 

 「売れるモンを作ろうと思ったら簡単です。でも僕は地元を活性化したいんです」
 このセリフも正確性に欠けるが、社長はおおむねこうおっしゃっていた気がする。
 商品の完成度は、社長のジャストアイデアを形にする際の業者さんの限界だったのだと思う。
 その業者さんが「やったことのない技術」などを模索&駆使して完成にこぎつける商品も少なくなかったと思う。
 あと、すごく大事なことなのだが「売れるモン=欲しいと思うモンを作る」というベクトルが観光客が思うそれとじゃっかんズレていたようにも思う。
 このお店に限ったことではなく、とかくこういうことはむずかしいのであります。

 全国の頭のいい人や実力のある人がどうしようも出来なかったりするわけだから、このむずかしさは一通りではないのでしょう。




 閑話休題

 仏具屋さんが「香炉が売れなくなって在庫を抱えている」と言って、お線香ではなくサボテンだったか苔だったか(たぶんどっちもイケると思うが)の、鉢にしてアピールしたら一気に売れたというお話を聴いた。
 上記のお土産物屋さんのようにアイデアから業者さんに「やってみないか!」も、もちろんアリだけど、業者さんが自分のところでできることで新しく貢献できることはないか(もちろんやっていたろうけど)模索するのもいろいろ打破できる手立てだと思う。

 ともかく、いろんなヒントが詰まった見本市でした。
 忠臣蔵グッズのヒントは言うまでもなく、今の自分がこれからどういう事ができるかのヒントにもなりました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?