訪れた国
Episode 28 – Holland 1
オランダと聞いて知っていたことは、徳川幕府の鎖国政策の下で唯一長崎の出島への入国が許されていた国。それから、海水が護岸堤防から漏れているのを見て手を穴に差し込んで止めようとした少年の話。
平らな土地にはチューリップ畑が広がって、風車がある風景。海より低い土地の海水を汲みだすために風車が作られていることや、オランダ語がドイツ語と英語の中間のような言葉だと知ったのは後のことです。
ビデオテープのVHS方式とベータ方式が、世界の電器産業を二つの陣営に分けて競い合っていた頃の話です。フィリップスがカセットテープを発明したとき、その特許を公開したのです。誰もが同じ仕様のカセットテープを生産できるようにしたので、フィリップスのカセットテープが世界標準となった話は新鮮でした。その後もDVDの記録方式の特許で囲い込みが行われたりして世界標準争いは繰り返されました。
オランダ人と仕事をしたのは香港の新空港建設の時です。オランダは世界で活動する浚渫船の3割以上を保有しており、彼らの結束は固くて決して能力の安売りはしません。船は仕事があろうがなかろうが稼働しようがすまいが、船を維持するために船員を載せて燃料を燃やして自ら発電し続けなければなりません。浚渫船の年間稼働率がどのくらいかわかりませんが、維持するためのコストを浚渫の価格に上乗せしておかなければならないことは理解できます。
20隻以上の浚渫船が香港の海に集まって、新空港用地建設のための浚渫と埋め立て工事に携わりました。わたしたち陸工事の担当はいわば山賊で、海工事担当の彼らは海賊と呼ばれていました。彼らが口にするのは「人は神様が作ったけれど、土地はオランダ人が作った。だから、用地造成は安心して任してください」と。堤防に腕を差し込んで海水を止めようとした少年の話を思い出しました。
ヨーロッパでの仕事は主要都市までは東京からノンストップで行けます。主要都市で乗継いで行く国もありました。それぞれに特徴のあるいろいろな航空会社の飛行機に乗りました。オランダのKLMにも乗りました。
KLMではオランダの家庭料理のような食事が出ます。食後に白地に青い印刷の箱に入った直径2cmくらいの白いミントとウィスキーの入った小さな陶器がもらえます。陶器の入れ物はアムステルダムの運河沿いにある建物を模しており、一つずつのデザインが違います。100種類以上あるデザインに番号が振ってありますから、乗るたびに違う番号の家がもらえます。陶器の家を並べると運河沿いの街並みが再現できて、オランダの思い出になります。
アムステルダムの空港は古いターミナルと新しいターミナルが共存していました。空港の売店でチューリップの切り花と球根を売っています。ヨーロッパならばどこでも1~2時間で行けますから、元気な切り花のチューリップを持ち込めるそうです。球根はそのまま日本にも持ち帰ることができます。白いミントもありました。
後日、東京のオランダ大使館のバザーに行ったときもこの白いミントがありました。このフォルトゥン・ウィルヘルミナ・ミントは絶対おすすめです。
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