組織運営の技術
組織運営の技術-仕様書
組織の規則は抽象的な文言で書かれている場合が多いようです。解釈は組織の長の理解(あるいは裁量)によることが普通に行われています。したがって、組織の長は業務執行において規則を都合のいいように解釈します。たとえば、組織運営において慣行に従って決定したとか、今までは慣行に従ってきたがこれからはルールを厳格に適用するといったことがよく起こります。
組織の運営が責任者の裁量によって行われるということは、責任者が変わると運営手法が変わることになります。組織の運営は責任者に都合のいいように行われ、第三者にとって都合のいい解釈でも組織にとって都合が悪ければ裁量範囲内において違う解釈をします。担当者の業務においても規則が明確ではなく裁量が許される場合は、規則の解釈は担当者の意向によりますから、結果は規則を適用する側と適用される側の上下(力)関係によることとなります。
こうした状況はイケイケどんどんの高度成長期にはみんなが一方向を向いて走っているので、大きな問題とはなりませんでした。しかし、現在ではいろいろな道が見えていますから、担当者の裁量で道を決められたらたまりません。その繰り返しが今の3周遅れを招いたとも言えます。
この状況を変えるためには規則の文章を明確にして裁量による部分を小さくする必要があります。業務の仕様書を作成するのです。具体的には業務を形作る作業の一つひとつの仕様要求を明示することです。どのような手順で作業を進めればいいのか、どのような範囲で作業を進めればいいのか、どのような段階で作業の完了とすればいいのか、いつどの段階で作業の内容を検査して、進捗状況を記録すればいいのか、作業の完了にあたってどのような報告をどこ(だれ)に提出すればいいのか、作業に不都合があったときにどうすればいいのか、作業後に不都合があったときはどうすればいいのか。仕様を具体的に許容できる数値とかポスト名を表現することで各作業が要求することを明確にします。
各作業の要求を明確にしておくことで、作業が完了した時に完了状況の確認ができます。そして、次作業へ引き渡す前に作業の完了状況が要求に沿っていることを複数で確認した記録を残します。記録を残すことは業務の品質を保証することです。作業の裁量による判断を避けて業務の品質を保証するために作業ごとの仕様要求を具体的に示す作業仕様書が必要になるのです。
担当者レベルの作業の基本的な要求部分を組織に関わらず同じ考え方に基づいて共通化して、組織が裁量で運営される状態を少しでも減らすことは合理的ではないでしょうか。仕様要求を具体的な数値で明確にすることは3周遅れを取り戻すはじめの一歩になります。