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組織運営の技術

組織運営の技術-手順

 

 アメリカやイギリスの会社と無人島でプロジェクトを担当したことがあります。運営は日本でよく行われている会社同士が形式上組む疑似的なJV組織ではなく、各社が資本を持ち寄って運営する合弁会社(Full Integrate JV Co Ltd)を設立して行いました。独立した島のプロジェクトなので、最初に決めたルールは島内での運転規則です。右側通行のアメリカから持ち込まれた車は左ハンドルですが、島はイギリス領だったので左側通行と決めたのです。

 プロジェクト運営会社立ち上げにあたり、日本の会社がJVのリーダーでしたが、プロジェクトチームはイギリス人主体のスタッフで組織を作って運営規則や業務手順(Procedures)を決めるところから始めました。プロジェクトの安全規則や組織内の作業手順、事務手続き、文書管理などを決めていくのです。組織運営の技術として昔から確立されている基準に沿ってJVのルールを決めていくので、規則を一から作ったわけではありません。新しく参加するスタッフにとっても働きなれた規則なので、多国籍のスタッフはポストにつくとすぐに持てる力を発揮しました。

 業務手順が明確になっていないような組織は問題外ですが、一定の手順が明確ではなく、担当者の裁量に任せられている組織も少なくありません。業務手順は組織の規則に書きますから、作業担当者は手順に沿って作業を進めます。しかし、手順が守られているうちはいいのですが、担当者が同様の作業を繰り返すうちに勝手な判断により作業手順を変えてしまうことがあります。結果として問題を起してしまうことがあり、長い伝統を持つ信用ある組織が問題を起こした例は枚挙にいとまがありません。問題が起きるのは担当者が時間経過とともに作業に慣れて自分で作業の程度を判断してしまい、責任者がそれを許してしまうところにあります。

 作業の担当者は人間ですから間違えることがあります。間違いが問題になっても間違いによる失敗からは学ぶことがあります。次に間違えないように手順を見直して記録を残せばいいのです。間違いを減らすためには、作業工程ごとに複数の目で確認することが有効です。どの段階で確認を行うかを規則として手順書に書いておきます。作業担当者が作業要求通りに作業ができているかどうかを判断して検証者に確認を要請します。検証者は作業の完了状況を確認して記録に残します。

 確認手順を繰り返すことで、すべての作業が要求通りに完了していることが記録されてファイルされます。ファイルの記録から業務執行状況の確認をして、内容に問題がなければ業務の執行内容は信用することができます。結果として、組織運営品質が保証されることとなり、第三者から信頼される組織になります。

 また、日本の労働生産性が低い理由の一つとして、作業に関わる人と時間の多いことが挙げられます。一つずつの作業に裁量範囲が広いので、経験者でないと仕様要求通りの業務がこなせないこと、作業の手順が明瞭ではないので一つの作業に関わる人が多いことがあります。担当者が不在だと代替の人は担当の人と同じように作業がこなせないこともあります。新人に時間をかけて会社の文化を教え育てて、職場を提供してきたという意味では、日本型は成功したと言えるかもしれませんが。

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