組織運営の技術
組織運営の技術-業務内容
7月10日に参議院選挙がありました。
行政、立法、司法の三権の執行が互いに独立して行われる民主主義の国、日本の立法機関が国会です。国会については憲法第4章(第41条から第64条)に基本的な位置づけが述べられており、第41条は「国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である」と書いてあります。
国会は2院制で衆議院と参議院があります。憲法は両院の詳細について「これを法律で定める」という文言を多用しています。たとえば、議員定数や議員の歳費、選挙などは法律で決められる事項です。
しかし、参議院の役割について一般には今ひとつよく理解されていないのが現状です。理由の一つに参議院議員の活動が衆議院議員と何がどう違うのかがよくわからないところにあります。参議院議員の職務内容は文章化されて公開されているとは思いますが、一般には十分に理解されていないといえます。
国会の委員会では議案が十分に討議されようがされまいが、多くの議案は採決に多数決が採用されています。民主主義はあくまで話し合いが基本ですが、数の力で押し切る委員会を何度も見てきました。参議院の役割は「良識の府」や「言論の府」と言われ、また「再考の府」とも「政局の府」とも言われているところにあるのではないでしょうか。数の衆議院に対して参議院は智を見せていただきたいものです。
「良識の府」の参議院ですが、選挙をみる限りでは良識の人を選ぶシステムにはなっていないようです。通常の組織で求職者の職務能力がどの程度かはっきりわからないままに雇用されることはありません。しかし、参議院議員は獲得票数だけで当落が決まり、当選すれば6年間の雇用が確定します。参議院議員の職務内容は衆知されていませんから、候補者が当選して議員になったときに何をするのかわからないままに選挙で選ぶことになっています。
選挙では与党も野党も党が前面に出ていますので、各選挙区の候補者においても比例代表の候補者においても、各党が候補者を公認あるいは推薦するにあたっては良識の人を選別していると信じるほかありません。したがって、候補者よりも党に「良識の府」に対する責任があるといえますから、各候補者の選挙運動中の約束は党に守ってもらわなければなりません。
さて、社員やスタッフの採用にあたって職務内容(Job description)を明示しないで、履歴書と面接だけで採用することが伝統的に、特に新卒者に対してはほぼ100%行われています。応募者に就職というよりも就社を求めていると言えます。
新人が専門に勉強してきたことの専門性を考慮して職務別に採用するのではなく、新卒者を一括して採用し時間をかけて会社の社風に合うように育てるという手法は、高度成長期に同じような人を大量に育てるという意味において成功した手法でした。
しかし、昨今では時間をかけてみんなを同じように育てていては労働生産性が上がりません。そこで、一つには即戦力となる人材をスカウトする、いわゆる中途採用することが考えられます。もう一つ考えられるのは仕事の職務内容を明らかにし仕事の手順(Procedures)を標準化することで、誰もがそのポストに就いたときから十分に能力を発揮できるようにすることです。
人材募集においてポストの職務内容を詳細に記述して応募者が内容を十分に理解できるようにすることは、就社によるミスマッチを避けることが期待できますし、業務執行効率が上がるので、労働生産性の改善につながります。
現在の3周遅れを招いている原因の一つに、先進国で最下位レベルの日本の労働生産性があります。日本の生産の生産性は決して低くありませんが、労働の生産性が非常に低いからです。労働の生産性が低い理由は、他の先進国に比べて多くの人が多くの時間をかけないと仕事ができないし、仕事を前に進められないからです。拙い組織運営に責任があると言わざるを得ません。
労働生産性改善のために、現在行われている業務手順(Procedures)を見直すことは作業の簡素化や標準化につながって組織運営の改善が見込まれます。一つの仕事にかける人員と時間の見直しができ、今より少ない人数と短い時間で同じ仕事ができるようになれば生産性は向上します。生産性が向上すれば所得増が期待できます。
どの組織も成功するかしないかは、生産のハード技術と表裏の関係にある運営というソフトの技術の巧拙によって大きく左右されますから、業務手順(Procedures)を見直すことは組織運営の技術改善のはじめの一歩になります。
労働生産性を改善し3周遅れを取り戻して、先進国の位置を守り続けるためには、
1 各ポストの職務内容(Job description)を明示すること、
2 各ポストの権威、義務、責任を明確にすること、
3 各ポストに権威を委譲(Authority Delegation)すること、
4 仕事の手順(Procedures)を見直して簡素化を図ること、
です。今一歩を踏み出せば決して遅すぎることはありません。
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