II – 1 プロジェクトの基本知識(Basic Knowledge of Project)

プロジェクトの執行(Execution of Project)
プロジェクトチームは最初の作業として、プロジェクトの課題にどのように取り組み解決していくかという手順と方法を詳細に計画する。計画は現状認識から始めて様々な仮定条件を設定し、課題解決という目標達成への道筋を検討して策定する。
次にプロジェクト完了時における想定の姿を達成するために必要な仕様要求事項(Specification)を作成する。仕様を満たして課題を解決するためには、どのようにプロジェクトに取り組めばいいかを検討し戦略(Strategy)を立てる。戦略は目標の達成という最も良好な結果への道筋(Best Scenario)と、目標に対して最も都合の悪い結果を招く場合の道筋(Worst Scenario)の二つの想定で成り立っている。
次に、プロジェクトチームの各部門は戦略に基づいて各作業をどのように攻略するか、戦術(Tactics)を決めて方法説明書(Method Statement)を作成する。戦術を立てるときの参考資料は仕様書や手順書などである。プロジェクトチームは戦略に基づいた戦術を説明する計画書(Plan)を作成して組織の承認を得る。
プロジェクトが開始したら計画書を「ものさし」として執行状況をモニターする。プロジェクト執行中のプロジェクトチームはアクティヴィティがいつ、どこで、誰が、どのように取り組み、費用はいくらかかったのかという実績を記録して計画との比較を定期的に組織の責任者へ報告する。
プロジェクトマネジメントには一つひとつのアクティヴィティを計画通りに進行させることが求められているので、プロジェクトチームはプロジェクト執行にあたり想定の最善と最悪の最終見込みと実績を比較して、プロジェクトが想定範囲内で進んでいることを確認して報告する。
定期的な報告を受けて組織の責任者は会議を開催し、プロジェクトチームと現況を確認する。最終見込みが計画書に基づいた最善と最悪の想定内に収まるようにプロジェクトチームと協議する。課題解決目標を達成したらプロジェクトは完了するので、完了報告にはプロジェクトの課題解決の結果と計画(想定)の比較を掲載する。
プロジェクトマネジメントは記録と書類と会議と報告を用いてプロジェクトを計画どおり想定内で進行させる運営管理技術であり、その運用にコツがある。

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図‐XX プロジェクトマネジメント

進行中のプロジェクトマネジメントの概念を図示すると上のようになる。
プロジェクトを計画通り運営するコツは、プロジェクトチームが運営規則に基づいて書類を作成し、報告書を作成して責任者との定期的な会議に臨み、すべての記録を残こすことにある。残された記録を検証すればプロジェクトの運営過程が明らかとなり、課題が解決に至るまでの運営過程が第三者によって検証できる。
プロジェクトチームの活動過程の検証は、プロジェクト完了結果報告が当初目標を達成したか否かにかかわらず、プロジェクトマネジメントの内容を詳細に確認する。すべての活動記録が運営規則に従っていることが確認できれば、プロジェクトチームの運営管理は信頼に足るといえる。
伝統的なプロジェクト管理は下図(図‐XX)に示す通りプロジェクトの目標を最終見込みとして執行計画を立ててきた。プロジェクトの進行中、プロジェクトチームは定期的に進行状況を一つの最終見込みに対して確認し、プロジェクトの責任者に報告してきた。
プロジェクトチームは責任者が唯一興味を示す完了時の目標達成見込みを形式的に報告してきた。こうした運営管理は組織の責任者が、プロジェクトチームの業務を管理しているように見えるが、プロジェクトチームからの最終目標達成見込み報告は責任者への忖度があるといわざるを得ない。

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図‐XX 現状の仕事管理

プロジェクトの現況を把握するうえで一つの目標との比較のみではプロジェクトを十分に管理しているとは言えない。なぜなら、プロジェクトの進行が目標とずれてきても完了時での目標達成がどの程度可能なのか、最終見込み報告からはわからないからである。
プロジェクトを想定内で最終見込み程度の判断をするためには、最善結果(ベストシナリオ)と最悪結果(ワーストシナリオ)と実績との比較が必要となる。ベストシナリオとワーストシナリオと実績との比較検討をしなければ、ズレが許容範囲内なのかそれとも最終目標を見直さなければならないのかの判断ができない。
プロジェクトマネジメントはプロジェクトの目標に対してベストシナリオとワーストシナリオを想定しプロジェクトが絶えず想定内で進行するようにプロジェクトチームを運営することが重要となる。
プロジェクト執行中に想定外の事象によりプロジェクトの想定内での運営が困難と判断した時は、速やかに作業の取り組み方や最終見込みの見直しが必要となる。見直した最終見込みに対するベストとワーストのシナリオを想定してプロジェクトを運営することになり、最終見込みを見直したときのプロジェクトマネジメントは次のように表せる(図‐XX)。

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図‐XX 最終見込みの見直し

3周遅れを取り戻すためには、第一に業務運営(Operation Management)の内容を確認するシステムを構築して組織の信用を取り戻すことが必要だ。信用を取り戻す第一歩は組織運営に伴う責任の所在を明確にすることが必要となる。組織内で責任の所在を明確にすることは、日々の生活にかかわる身の回りの社会運営の質が確保されるので組織の信用を取り戻すことになる。社会運営の質を上げることは、世界における日本の立場を守ることにもなる。
第二は作業手法(Operation Procedures)を基準化して、誰が作業に従事しても同じような結果が期待できるようにすることだ。業務の運営手法の基準化とポストの義務と責任範囲の明確化すると、新しく組織に参加する人が即戦力として活躍できるようになる。標準的な業務の運営手法を確立すれば、作業が効率的に執行される。また、新規の組織加入者が即戦力としてチームに参加することが可能になり、新卒者を一斉に雇用し組織内教育をしなくても組織を維持していくことが可能になる。

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