組織運営の技術
組織運営の技術-会議
先日、日本が国連の非常任理事国に選出されました。任期は2年で12回目です。日本がアジア太平洋地域で、信頼されていることの証として喜ばしいことです。194か国が投票して5か国を選出した選挙結果は、モザンビーク(192票)、エクアドル(190票)、スイス(187票)でマルタと日本は184票でした。
国連の安全保障理事会は、常任理事の5か国と地域別に選出される非常任理事の10か国の合計15か国の理事で構成されています。理事会は丸いテーブルで、議席につく一人の代表席と4人のサポート席が準備されています。
また、G7の集まりが6月26日からドイツのエルマウ城で開催されました。EUの代表を含めて9人が丸いテーブルで会議をしていました。国連の安全保障理事会のようなサポート席はありません。
比較的に少人数の国際会議では、お互いが対等の対場で参加していることを示して丸いテーブルで開催されます。参加国の数によっては三角のテーブルや、競技場のトラックのように短辺が丸くなったテーブルもあります。丸いテーブルは外交辞令的な意味合いも含めて、参加者の上下強弱関係を避けているといえます。
国内のいろいろな専門家の会議で、大きな部屋に白布をかけたテーブルを四角く並べているのをよく見ます。出席する人も多くテーブルについている専門家の他にも、多くの関係者が後列に座っていることがあります。おそらく関係部署が多いので出席者も多くなるのでしょう。
しかし、どのような組織においても、議題に直接関係する部署が10を超えるような会議はそうあるものではありません。なぜならば、10を超える部署を会議の招集責任者(議長)が一人で統括するには無理があるからです。部門の責任者が集まる会議でも実務者の会議でも、主催者が一人で20に及ぶような部署や担当者を相手に議事進行することはほとんど不可能です。総会のような大会議は別として、委員会などの討議をする会議で同じ部署から複数名が出席したとしても、出席者が20名を超えることはありません。多くは数名から十数名の規模の会議になります。
多くの組織でいまだに行われているいわゆる御前会議は、議事の承認にあたって組織の責任者と出席者の誰もが責任をとらないですむようにする責任回避の儀式といえる集まりです。会議に招待されていない部署の責任者が、あとで「俺は聞いていない、知らなかった」というのを防ぐために開く会議です。したがって、議題に関係すると思われるすべての部署と関係者の出席が求められます。
しかし、儀式ですから根回しの段階でコメントしない限り会議中に異議は唱えられません。出席者は黙って座っているしかありません。その結果、出席者が黙っているので満足していると解釈されて、議事は満場一致で承認されることになります。
主催者の権威のために少しでも関係しているからといって出席を求められ、会議では聞くだけというのでは本末転倒です。会議は議題について関係部署の意見を交わす場ですから、自由に発言させてもらわなければ意味がありません。
主催者の責任逃れのために、あそこもここも議題に関係なくはないからといって、できる限り漏れがないように招集して出席させればいいというものでないのです。
間接的な関係があるかもしれないだけの部署が、議題に対するアクションを求められることはありません。情報共有のためだけに多くの人を会議に出席させる必要はないのです。責任ある主催者は、君も知っておく必要があるからとか、君の部署も関係ないわけではないからという理由だけで出席を要請してはいけません。
議題に直接関係してアクションを求められる部署以外で、間接的に関係するかもしれない部署の担当者を出席させなくても、情報共有は後で回覧する議事録を閲覧してもらえば十分です。議題の直接関係者としてアクションを求められた部署では、出席した責任者が会議終了後に自分の率いる部署に戻って、討議内容を担当者に伝え必要な指示をすることになります。
渋沢栄一によると、明治初期に招聘したアメリカの先生が日本を観察したのち、別れの時に感想を述べています。「日本の組織運営は少し形式にとらわれすぎているのではないでしょうか。形式を重んじることはいいのですが、形式を守ることが目的化しているように見えるのはいかがなものでしょうか」と。
組織の方針決定の羅針盤ともいえる会議が、御前会議と揶揄されるほど形式重視となっている組織は少なくありません。組織の運営において形式を重視しすぎるために生産の生産性(モノつくり)は先進諸国に比べて遜色がないにもかかわらず、組織の運営管理の生産性が非常に低いために、全体としての労働生産性が先進国の6~7割にとどまっているのです。
言い換えますと、多くの組織が運営管理のために多くの人と時間をかけていますから組織運営の生産性が低いのです。モノつくりは上手ですが、組織の運営に課題があるといえます。現在の組織運営を続ける限り、現状の3周遅れを取り戻すことはかないません。会議の在り方をはじめとして、組織の運営手法を見直す時です。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?