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「朝映画活動」感想メモ
最近、朝寒くて布団から出たくない感情を逆手に取って、朝起きてから一本映画を見たら良いのではないか?と考えて結構続いてるので、感想メモまとめました(一部映画館も混じってます。)
『アップグレード』
サイバーフォーミュラ+攻殻機動隊を思わせるSFサスペンスアクション。筋立てはシンプルながらも充実した内容で、特筆すべきはSFビジュアルのアイディアの数々。AIアシストによるアクションシーンが斬新で面白すぎる!映像的には加点式で評価すると全カットに価値があるような作り込み。これは間違いなく今後のアニメ作品にも影響を与えそうな佳作だ。
『操作された都市』
アクションの出来が本当に良い!元テコンドーチャンピオンだった無職のネトゲ廃人が冤罪で投獄され脱獄。ネトゲ仲間と協力して無実を証明しようとする中で巨大な陰謀に巻き込まれていく…という、なろう的要素満載の超ジャンクフード的な味付けが痺れる。現代ハイテク調査バトル&復讐ざまぁ系作品として秀逸。面白いことに、主人公が元テコンドーチャンピオンという設定なのに、テコンドーは一切使用しない。
『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』(4K上映)
久しぶりに観直したけど、やっぱり面白い!愛と歌謡と伝統芸能サーカスが織りなす祝祭感が圧倒的。かつてはオタク文化の本流ど真ん中だった作品なのに、今観るとSF、三角関係、アイドル、変形ロボ、ジェンダーなど、あらゆる要素が現代のアニメとは一線を画している。庵野監督らの初期キャリアにおける重要作品なのに、不思議と今の主流的な空気感がまったくない。全体的にふわっと漂う演出意図の不明瞭さすらも魅力的。まさにアニメ業界の反物質的存在と言えるかも。いつかまた、マクロスの時代が来るような予感すらする。
『セッション』
「暗黒響け!ユーフォニアム」と呼びたくなる作品。特にラストが秀逸で、作り手の(おそらくの)怨念とも言える思いが、音楽モノの典型的な物語構造からの脱却を成功させている。近い作品を挙げるとすれば、意外にもGガンダムか。人間の業の深さを突きつけてくる傑作。
『劇場版プロジェクトミライ』
これは…実に興味深い体験だった。まず断っておくと、仕事がらみで予備知識なしに観たおっさんの感想として、単に自分がターゲット層じゃなかっただけかもしれない。ただ、面白い・つまらないとか、良い・悪いといった評価を超えて、「これは従来の劇場映画とは異なる何かだ」という気づきがあった。
一見すると物語らしき外形は整っているのに、実は障害も解決も葛藤も成長も存在せず、全てが寓話性を持たない。最も近い例えとしてはマイケル・ジャクソンの「ムーンウォーカー」かもしれない。あれは「Smooth Criminal」という100万回の視聴に耐えうる超高品質MVがあって、マイコーがキッズを救出したり車やロボに変形してマフィアと戦ったりするのは、ある意味オマケのようなもの。でも本作は、MVでもミュージカル映画でもない、全く新しい何かを目指している。
『D&Dアウトローたちの誇り』
エンターテインメント極振りの良作。脚本の巧みさが際立っていて、特に面白いのは「TRPGっぽさ」ではなく「リプレイっぽさ」を追求している点。読み物としてのリプレイは日本独自の文化らしいが、まさにその特徴である会話劇、珍道中、お使いクエストの要素がTRPGの真髄を見事に捉えている。経験者なら思わず「わかる…」となる作品。
『スポットライト』
カソリック教会の児童虐待スキャンダルを暴いたジャーナリストたちの実話を基にした作品。淡々とした演出で起承転結を作らない手法が、かえって事件の生々しさを引き出している。組織の隠蔽体質の描写がリアルで、これは単なる宗教の問題というより、現代社会が生み出してしまう構造的な問題として描かれている。「こんなことがあるなら、何でもあり得るのでは」という問いを突きつけてくる。まさに今観るべき作品だった。
『アルゴ』
イラン米国大使館人質事件を背景に、CIAが架空の映画制作を装って6人の米国人を救出するという、実話ベース(!?)の物語。言ってしまえば豪華版正義の「地面師」のような展開だが、サスペンス作品としても見事な出来栄え。特に中盤の虚実入り混じる脚本読み合わせシーンが秀逸。「作られなかった作品」への祈りのような思いも感じられる意欲作。
『イミテーションゲーム』
アラン・チューリングの半生を描いた傑作。近代コンピューター史としての側面も興味深いが、同時に「卓越した才能は必ずしも個人の幸福には結びつかない」という物語としても読める。主人公の子供時代のエピソードや、ジョーン・クラークとの関係性に苦い現実を感じさせる。優れた伝記映画の要素が揃った好作。
『エイリアン:ロムルス』
長年の紆余曲折を経たシリーズのエッセンスを継承しつつ、オーソドックスなホラーとして再構築するという離れ技に成功。「なるほど、その手があったか!」と唸らされる作品。デザイン資産の活用も見事。ただし、個人的には完成度の高さは認めつつも、心に刺さるような衝撃は感じなかった。
『ツイスターズ』
ハリウッドらしい潔さが光る作品!当初はパニックホラーかと思いきや、現代系なろう作品のようなノリで展開していく。あるいは「メリケン陽キャポジティブ版・新海誠」とでも言うべき作風。考えてみれば、もし現代にドラゴンハンターがいたら、その人たちはきっとドラゴンオタクだろうな、という発想も面白い。ラストで「これは映画だからね!」と開き直るような演出も潔くて好感が持てる。
『ライフ』
ずとまよ『嘘じゃない』PVの結構直接的な元ネタにもなっているSF密室ホラー。ただし、本作はそれとは真逆の悪辣さに満ちている。宇宙ステーションや小物のデザインの格好良さも特筆モノ。やることなすこと全て裏目に出る展開で、その徹頭徹尾のひどさが逆に心地よい。「嘘じゃない」では物足りない、心が汚れた大人たち向けの作品(笑)。面白いのは、エイリアンとの遭遇が即死という展開ではなく、小さなエイリアンが執拗に現れては地味に痛そうな手段で殺しにくるという新鮮な展開。イカとヒトデを足したようなビジュアルデザインが絶妙にキモカワイイのも魅力。
『機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム』
「ガンダムが強すぎて怖い」というネタを「掴み」にも「引き」にも活用する手腕は見事。ただし、リアリティは皆無で全体的にネタ寄り。ガンダム自体がリアルでもないしネタ満載なのは承知の上だが、求めていた味付けのバランスとは少し違和感が。ロボットものとしての熱さも今一つで、カメラワークが頭部視点に偏りすぎている印象。戦闘は「死角から撃たれる→鍔迫り合い→だるま化」の展開が目立つ。
その一方で、日常風景にモビルスーツが溶け込んでいる描写は秀逸で、押井守の「パトレイバー」やガルパンに通じる雰囲気を感じる。CGならではの光源演出も効果的。気になるのは、フェイシャルと演技の関係で感情の機微が伝わりにくい点と、やや駆け足な展開。洋画的な明快な問題解決は良いものの、若干反復的すぎる印象も。
『TIME』
雰囲気重視のSFながら、作品の構造と映像の質の高さは見事。ただ、主人公の行動があまりに無軌道で盛り上がりに欠ける。時間という概念を貨幣的にプール可能なものとして扱うと、どうしても面白みが薄れてしまう。「経済破綻を避けるため、時間を持ちすぎている人間は犯罪者でも殺せない」という逆説的な展開の方が面白かったかも。
『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』
80年代の九龍城を舞台に、川井憲次の音楽に乗せて繰り広げられる谷垣アクションだけでも最高なのに、コミック原作らしい武侠というより時代劇的な物語も面白い。狭所でのアクション演出が素晴らしく、まるで谷垣版「ザ・レイド」を観ているような興奮がある。完璧!
『パッセンジャー』
程よい苦味を含んだ物語がコンパクトにまとまった好作。特筆すべき記憶に残る展開はないものの、ヒロインの存在感が作品の成否を分ける中、吹き替えを含めキャスティングは見事。どこか『バック・トゥ・ザ・フューチャー3』的なマインドを感じさせる作品。
『ガタカ』
レイアウトの美しさが際立つSF映画。優れているのは、どの要素にも安易な答えを示さず、「世界は簡単に割り切れない」というメッセージをサスペンス的な展開で巧みに描き切っている点。科学そのものより寓話性を重視した作品として秀逸。
『コンフィデンシャル共助』
バディものとしては王道的な展開ながら、キャラクター設定の説得力が他作品では真似できないオリジナリティを生んでいる。終盤に若干「そんなことある?」と思わせる展開はあるものの、アクションは決して突出しているわけではないが、一貫して高い質を保っている。
『ゾンビランド』
アニメ「ゾンビランドサガ」とは無関係の本作は、カルト的な作品を予想させる題材ながら、意外にもスタイリッシュなジャンル映画として仕上がっている。嫌味のない爽やかな娯楽作で、特に主人公の神経症的な性格を否定的に描くでもなく、かといって安易に克服させるわけでもない絶妙な描写が光る。終盤は若干強引な印象で、アクションもネタ気味だが飽きさせない。ゾンビ映画特有のラストの難しさは本作も例外ではない。
『新感染』
高速系ゾンビという設定を活かしつつ、単純なパニックホラーを超えた、移動を軸とした展開が秀逸。タワーディフェンス→スニーキング→脱出という流れも見事。ゾンビの強さやマ・ドンソクの怪力について特に説明がないのも潔い。
『EXIT イグジット』
都市クライミングを中心に据えた展開を成立させるための「嘘」の使い方が絶妙。アイディアの多彩さも際立ち、特に即興で登山用具を調達していくシーンは秀逸。全編を通してゲーム的な感覚が満載。
『DOGMAN』
リュック・ベッソン監督によるフランス発のアンチ・ヒーロームービー。様々な犬種が画面に登場するだけで+1億点の価値がある(笑)。アクションと言うよりはキャラクターの魅力で成立させている。MG42も出てくるので実質的に押井守映画。
『密輸 1970』
完璧としか言いようのない傑作。クライムムービーを縦糸に、二人の女性の強烈な感情を横糸として織り込み、二転三転どころか四転五転する展開に引き込まれる。アクションも素晴らしく、時代と社会があまりにも物語にマッチしていて模倣できない作りなのも白眉。全編通して軽妙な語り口で描かれる清々しさも魅力。
『化け猫あんずちゃん』
「孤独な少女が不思議な生物と出会う」という、一見ありふれた設定を斬新な演出で再構築した意欲作。まさに令和版「じゃりン子チエ」とも言える新鮮さ。シンエイ動画のロトスコープ技法も「前からやってましたけど?」と言わんばかりの完成度で、まるで別世界線から来たアニメを観ているような不思議な魅力に溢れている。