『おいしい経済』を書こうと思った理由
本日2021年12月10日に、僕の新著『おいしい経済』が出版されました。まずは、この本に関わってくださったすべての皆さまに感謝を伝えたいです。本当にありがとうございます。
今回は、僕がこの本を作ろうと思ったわけをお話しできればと思います。
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「よし、本を書こう」
そんな想いが芽生えたのは、ちょうど1年ほど前のことでした。
NTTドコモさんとご一緒に立ち上げた「GOOD EAT CLUB」の立ち上げに向けて、本当にバタバタしていた頃。サイト立ち上げのための企画ミーティングと出店者さんを募るための営業を日々並行して続けながら、会社の組織を作りつつ、もちろん、コロナ禍によるカフェ・カンパニーの経営課題をひとつひとつクリアしながら…という感じで、目の前のやるべきことに日々明け暮れていました。
また、飲食店の現状について政府や行政と議論したり、飲食店からみた助成金申請手続きのガイドラインについてまとめたり、弊社の活動だけではなく「やれることは全部やる」という覚悟で生活していました。
毎日が乱気流の中にいるような状態だったのですが、何故か頭はとても冷静ですっきりしていて。周りの変化はあまりにも急激だけど、不思議と気持ちは落ち着いていて、目の前のことだけでなく、少し遠い先の未来を感じて考えたい、そんな思いに駆られるようになりました。
「これから先、コミュニティはどう変化していくんだろう」
「この社会の変化は、何の前触れなんだろう」
「どうすれば、おいしい未来を創っていけるのだろう」
そういった問いが、澄んだ青空のように、頭の中でまとまっていったんです。日々を全速力で走り抜けながら、自分の周りが混沌としている分、自分の内側はクリアになっていくというか、「大事な仲間と、為すべきなすべきことを為なそう」というシンプルな覚悟が生まれたのかもしれません。
「『食』に携わる僕たちが、今、どんな状況にいて、どこに向かうべきなのか。そして、その一気通貫したビジョンをファクトフルネスに考察しながら、僕らの現在地と、これから進むべき方向の座標軸を示したい」という想いのもとで、この本のプロジェクトはスタートすることになりました。
思えばこの10年、リーマンショックや東日本大震災、個人的にはCIA(カリナリー・インスティテュート・オブ・アメリカ、通称「世界一の料理大学」)訪問という経験があり、僕の中で、日本が世界と調和しながらイニシアチブをとることができるはずの「食」に対する課題意識が大きくなってきていたんですよね。
外食の現場は日々目の前のお客様に向かうことがサービスの原点でもあるから、どうしてもテクノロジーの導入が遅れてしまいがち。また、今でこそ「SDGs」という言葉とともに世の中に浸透しつつある、地球規模の課題に対してのアクションが取られないことなどへの課題認識もある。世界各国では、30年後の未来を見据えて「食」に取り組んでいるけれども、その中で日本はどんな役割を果たせるんだろう。
そういった気付きや問いに対して、強くアクションを起こすことができなかった10年でもあったんです。これは、僕自身の反省でもあります。
そして、コロナが訪れてしまった。
今度こそは何かやらなきゃいけないと、御先祖様に思い切り背中を蹴られたような気持ち(笑)で、本の制作に取り掛かりました。
この本は1冊の「問い」
今回発売された書籍『おいしい経済』は、決して答えを示している訳ではありません。
「僕らは、今、どこにいるんだろう」
「どうしたら日本が、世界が、もっと豊かになることに貢献できるんだろう」
そんなことを、僕自身が知りたいと思って作りました。だから、この本は「問い」でしかないし、僕もまだその答えを持っているわけではないのです。
この本を読んでくださった1人1人と一緒に、この問いをもっと広げていって、その答えを見つけていけたらと思っています。それを繰り返していくことで、新しい「当たり前」や、新しい「おいしい」の概念を、僕らはきっと創っていけるはずだと信じています。
【参考図書】
『おいしい経済』を制作する上で、というよりも、日々、僕の思考や行動のヒントになっている本たちを紹介します。気になったものから、是非読んでみてください。
①『茶の本』岡倉 覚三
②『論語と算盤』渋沢 栄一
③『新しい資本主義 希望の大国・日本の可能性』原 丈人
④『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』津川 友介
⑤『里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く』藻谷 浩介
⑥『フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義』田中 宏隆
⑦『マッキンゼーが読み解く食と農の未来』山田唯人
⑧『宇宙樹』竹村 真一
⑨『裏を見て「おいしい」を買う習慣』岩城紀子
⑩『不都合な真実』アル・ゴア
最後に、僕の前著でもある『ラブ、ピース&カンパニー これからの仕事50の視点』もよろしくお願いします(笑)。