君と僕だけが知らない世界へ
銀杏boyzに出会った時の、心当たりはある。あの頃はガラケーの待ち受けにするのに歌手や俳優やディズニーキャラクターの画像にプリクラっぽいペンで、ギャル語(?)や歌詞を書いたものが出回っていて、駆け抜けて性春をYUKIと峯田氏が下からのアングルで2人舞台に並んでいる背景にかかれてあった画像で多分知った。そして無料ダウンロードサイト(新世界?とかいうサイト。ちゃんとした名前が思い出せない。)で聴くようになった。この曲なんてただ「性」という文字が入っているだけなのに、当時まだピュアなハートにコソコソ知識を蓄えてきた私にはちょっと刺激的で、銀杏の曲を学校の友達におおっぴらに好きと言えなかった。それどころかこれまで周りで好きと大っぴらに言う人には会ったことがないし、自分自身も言っていない。ただ、ずっと大大大ファン峯田ラブ!!って感じではないけれど、銀杏の曲とは人生のところどころで出会って、それらは日々に青春のエッセンスを加えてくれてきた。
峯田氏の演奏は数年前のフジロックで一度聴いたことがあった。一緒に行った友人に帰り道に一番よかったのなに?と聞かれ、お互い峯田和伸!と言って笑ったのを覚えている。だからインスタグラムで峯田氏の投稿を見てライブがあると知り、当日は誕生日だったが、どうせ予定もないだろうし、仕事も嵐の前の静けさの時期だし♪と軽い気持ちで申し込んだ。ら、当たった。
当日は実は病み上がりで、仕事終わりは頭痛がし、やっぱりこのまま帰りてぇなと思った。そしてギリギリだったからか駅からの道中人が少なく、疲れた頭で「え、席がガラガラだったらどうしよう、自分だけで盛り上げられるだろうか…」と本当に謎の無駄な心配が一瞬頭をよぎった。しかし会場入り口に面した道路に向かってホールの角を曲がると、若者から同世代の大人たちまで人がいっぱい。そりゃあそうか。みんな銀杏の声、聴きたいよねと思いながらなんとか滑り込み、グッズの長蛇の列を横目に座席へと滑り込んだ。
始まりは、朗読。へぇ〜、シックだなと思った。そして登場。最近は派手な登場をしてずっとスタンディング状態のライブに行きがちだったが、峯田氏は実にシンプルに登場し、みんなも座って聴いていたので、少しホッとした。もちろん、その後バンドメンバーが増え、立って踊りながら聴くのも楽しかった。峯田氏が語るこれまでのもがきと苦しみと希望にも少し触れられてよかった。
よく聴いていた夢で逢えたらや駆け抜けて性春を聴けて嬉しかったけど、今回の私的な一番は「東京」だった。出だしを少しだけ歌った紹介、メロディー、演奏、そして宇宙を思わせる照明。これが今日のクライマックスだなと思ったぐらいすごかった(その後まだまだ続いた)。ああ今日来て良かったな、特にドラマティックな日々を送っているわけではないけど、とりあえず音楽に包まれながら穏やかな日々を送ることができて、生まれてきて良かったと心から思った。
終わったあとは、私は伝説のライブに居合わせてしまったのでは、という考えで頭をいっぱいにしながら、フラフラと長蛇のグッズの列に並び、スウェットが欲しかったが売り切れていたので、かわいい色の峯田氏のTシャツを購入した。やっぱり今回のライブTにすれば良かったとあとでちょっと後悔したものの、気に入っている。パンを買いに一回外でも着た。うどんの汁がはねてショックだったけど、洗濯で落ちた。
帰り道はサーティーワンアイスを買うために手前の駅で降りてコンビニに寄れるほど、元気があった。宇宙色の味を選んだ。あと、生まれて初めて自分でポスターを買った。それは部屋の片隅でまだ丸まっている。
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