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[一語一会 #11] 悪魔狩り

なぜ魔女狩りでなく悪魔狩りという言葉が出てきたのか,私にはわからないが,読んで字のごとくに悪魔を狩るという意味で論を進めたいと思う.

魔女も含めるとして悪魔狩りは,ご存じの通り,悪魔と”みなされたもの”がいわば合法的に処刑されることだ(もちろん現代では超法規的な仕打ちであるので,その点は強調しておきたい).

悪魔と”みなされたもの”であるという点で,多少なりともそのものが悪さをした可能性ももちろんあるが,周囲の多数の人間が作った集合的ストーリーの上で悪者とみなされ,周りの人たちがそれに則ったふるまいをする結果,処刑まで達する現象,と考えてよいだろう.

処刑とまではいかなくても,これはよくみる現象ではないだろうか.例えば,いじめの一部も悪魔狩りに当てはまるだろうし,SNSが発達してからというもの何かの拍子に炎上するということは日常茶飯事であるし,時代観の更新が追い付かない年配者が自分が分からない分野で急に台頭してきた若者を(しばしば自分の利権を保つ点でも)蹴落とそうとすることもよくあることだ.

前者で言うなら,私も中学生の時にいじめられた経験があるのだが,やはり私は規格外だったのだろう.当時一番問題だったのは私は寡黙そのもので,ほとんど周りとしゃべらない割には,先生には大事にされたり,テストの点数は良かったりして,彼らにとっては見下されているように感じたり,えこひいきされているのを見るのが妬ましく感じたりしたのだろう.
今ではいい思い出だし,今の私を形作っている経験の一つであることは間違いないのだが,やはり当時は悲しかった.悪魔と言ったら言い過ぎかもしれないが,悪魔のようなものとみなされてしまっていたのだと個人的には思う.

後者で言うなら,10年以上前のことではあるが,当時ライブドアの社長だったホリエモンさんが逮捕されたという事件があった.テレビ局に買収を仕掛けたのが,誰かの逆鱗に触れたようだが,(私が調べている限りでは,)実際には当時の法律において特に違法となることはなかったのに,権力に目をつけられて刑務所行き(しかも長期間)に終わってしまったことは理不尽極まりない話だ.

出る杭は打たれるという諺は有名だが,悪魔狩りというのも要はこういうものなのだろう.周囲がその人に対して持つ雰囲気というか,出てしまった杭であるとの見なし(ないしストーリー)が,出る杭は打ち,悪魔が出没すれば抹殺するという結果を招いているのだと思う.

もちろん,本当の犯罪など社会的にアウトなことをすることは丁寧に懲らしめる必要があると思うが(なお,そのアウトの線引きも明確でない場合は本当は疑った方がいい),それ以外のことについては,自分たちのバイアスに気付き,それを面前できちんと指摘できるような人がいるようにできるべきだし,その点で「ダイバシティ&インクルージョン」という価値観を広めることや,道徳の教育をしていくことは一定大事なんだと思う.

私は少し変わっている人間だと認識しているからこそ,悪魔狩りに遭遇することがあったら勇気を出せるようにしたいものだ.

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