[一語一会 #38] 逮捕状

権利を守る仕組みの一つ．
利権を守る仕組みの一つ．

ひっくり返すだけで大違いだけれど，これは単に文字をひっくり返しただけというものでもなくて，概念(正確にはそのイメージかもしれないが)に伴っている．

私は私が別に権力ある人たちの利権を忌み嫌っているとは思っていない．
物事には常に裏側がある(コインと違って，本当はきっと側面もある)．
それだけの話だし，それを自分たちに都合よく認識しないようにしているだけで，本当はどこにでもある，ということが言いたいだけだ．

法的な手続きによって守られることが，民主主義で法治主義でその範囲で自由主義の価値観の人間ないし人間集団にとっては大切なのだ．
犯罪を犯したとしても，現行犯などでない限りは警察等が裁判所に逮捕状を請求する手続きは(形だけに見えるとしても)必要だし，推定無罪だし，そうやって守られて，でもその法律の手続きによって有罪となれば法の下に裁く．
裏返せば，(腐敗だが)裁判所とつるんでる人がいたら，やろうと思えば取引できるわけだし，その手続きの必要性があるゆえに，事実に反して，罪を問われないということが起こるわけだ．

いや，それだけなら，法治国家の前提を破っているから，論理的じゃないよねと言われればそうかもしれない．ただ，議論の上では，人間が生み出している幻想の一つとして存在する理由の少なくとも一つとなっている，存在するという「利権」を正当化(正統化)している，ということは最低限言えるのではないだろうか．

他方で，今の日本国憲法だと，超法規的な措置をせざるを得ないことが，人々の目に明らかになったのが，まだまだ続く新型コロナのパンデミックへの対応の仕方であったし，はたまた遠く離れた地での侵略・戦争の勃発がその原因の一つに加えられることとなってしまった．

私たちは法治主義ではないのかもしれない．

私たちは，憲法に非常事態条項がないことによって，国民や世界の人たちの権利を非常時にも大きくは制限せず(公共の福祉の論理は使えるようだ)，権利を守ってきたように見える．
だが，それは同時に利権を生み出していることにも注意が必要で，法律がないことによって逆に超法規的に権力が暴走する可能性が示唆されたわけだ．安倍さんや菅さん，岸田さんに良心があったから何とかなっているだけなのだ．

一時的に自分たちの権利を差し出しても，自分たちやその将来の人たちの権利を長きにわたって深刻な脅威から守るため，その期間に対する検証の権利を法として定め，権力を縛る．
こちらの方がよっぽど法規的だ．もちろん，発動されたその時代の人は失うものが大きいかもしれないし，それは私たち自身であるかもしれない(というか，このままいけば私たち自身である)が．

私たちは，権利は勝ち取られてきたものであることを忘れている．そして，勝ち取っていく心意気を忘れている．守ろうとするだけでは守れないのに．

逮捕状を取らせるようにしよう．
そして，そこにきちんと裁判所がかかわるようにしよう．
(*わかっていただけると思うが，メタファーである．例えば，実際上は裁判所には限らない．)