調剤事務員のもつ社会的スキルについて
私が薬剤師を育てるのと、事務員をテクニシャンとして育てるのとでは、事務員の方が面白いと思うのには理由があると思う。
思うのだが、決定的な違いはよく分からない。
ただ、薬剤師になるには6年間の長い期間、大学で、主に国家試験に向けた勉強をすることになる。実験や実習、そのレポート、さらには試験など多忙を極める。アルバイトもほとんど出来ないだろう。
一方で、事務員はどうだろう。
大手のドラッグや調剤薬局チェーンに入社してしてくる事務社員。女性社員だが、彼女らは一般の大学や短大を出てくる。
周りには経済学部、外国語学部、理工学部、あと、文学部や芸術系の学部を出てきた人と仕事一緒にしたことがある。
はっきり言って、彼女らは世間から見たらエリートなのである。地方のクソ田舎で、4年制の経済学部を出て就職をする女性はそれほど多くは無いだろう。薬学部卒の女性より少ないのでは無いだろうか?
薬剤師、薬学部という狭い世界の中での比較ではなく、文系理系問わない雑多な世界から出てきた彼女たちと、新卒の薬剤師を比較すると、酷ではあるが世界が違う、レベルも違うのである。
彼女らの一部には留学経験があるひとも多い。
広い世界を見てきているのである。
留学経験はなくても、アルバイトなどの経験ははるかに薬学部卒よりも多い。
社会経験が豊かなのである。
(留年経験なら薬剤師も負けないだろう。)
薬剤師と事務社員、入社した時点で社会経験の点で差がつけられているのである。
薬学部卒は、その狭い世界の中での競争をしてきた人材ばかりである。
みんなほぼ同じように社会経験が乏しいのである。薬剤師たちにとって、これは大きなハンデである。
社会的スキルをすでに身につけている事務社員らと、社会経験のない薬剤師たち。
薬剤師の場合、入社してしばらくは社会的スキルを身につける必要があるのである。
それはをすでに身につけている事務社員たちと比べてかなりのハンデだ。
また、事務社員らは自らのビジョンを持ってエントリーしてくる。
商社や公共交通、公務員など、いろいろな職の選択肢の中から調剤事務を選ぶのである。
一方で、薬剤師はどうだろう、選択肢といえば、
調剤薬局、ドラッグストア、病院、くらいが一般的だろう。その中でもある程度決まっていて、ドラッグストアなら、どこが良いだろう?という進路の決定方法だと思う。それも学生側からエントリーすれば、企業はホイホイと持ち上げて良い待遇で迎えてくれるであろう。
これでは、貴重な職業選択という場面においても、社会的スキルは身につかないだろう。
学生時代に身につけた社会的スキルの有無が、就職後の成長に繋がるのかどうかは不明だが、接客や電話対応、書類作成などの点では彼女らの方がはるか上なのである。
薬剤師にとって、同期入社してくる、年下の事務員は、自分らの社会的経験値をはるか上を行っているのである。
これは一緒に働いていく上で、
認識しておいた方がいいだろう。
薬剤師だから、事務より上である、という考えは無いのである。